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ただ一つ、それだけを君に願おう  作者: 白月 シュン
四歩目――エルフと獣人の抗争。神の代行者の調べ。
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これが君の償いだ

白月です。

本日も読みに来てくださって、本当にありがとうございます。


後書きにちょっとしたお知らせがあるので、そちらにも目を通していただければ幸いです。


それでは、本編をどうぞ。

 私が協力者だと露呈して周囲がざわつき、リィシェとの問答を経て一応の落ち着きを見せた頃。

 周囲が再び私の言葉を聞く姿勢になったのを確認し、私は言葉を紡ぎます。


 「続きの答え合わせといきましょう。何の手がかりも得られず大樹内での探索を終えた後、私はその報告をエルーミャに行いました。そうですね?」

 「そうだニャ。それが、どうかしたかニャ」

 「その時点で、私はそもそもルイスはここにいないのではないかという可能性に思い至りました。あくまで可能性でしたが、時系列を考えると、その可能性が段々と現実味を帯びて来たことも含めて」

 「何の、話だニャ」


 その瞳に徐々に懐疑的な色を載せ始めるエルーミャ。

 私はその変化を感じ取りながら、反応することなく、ただ説明を続けていきます。


 「あなたの犯行は今回が初犯のはずです。そして犯行理由はエルフに攫われたルイスを取り返すため。ですが、エルフは今回のエルーミャの犯行よりも前に、同じようにエルフが攫われているはずです」

 「は?」

 「そうですよね? 神隠しという言葉が生まれているくらいなのですから」


 私はリィシェとエルランド、この場にいるエルフへとそう問いかけました。

 エルーミャの犯行時、その神隠しというワードをエルランドが発していたのを覚えています。そして、エルーミャの目的を聞いた時から、違和感を感じていました。それは探索を終えてから特に主張を強くし、今現在、確信と呼べるほどになっています。

 私の問いかけに、リィシェが頷きながら答えました。


 「アイ君の言う通りだ。昨夜アイ君のいなかった間に会議でも言ったが、私たちエルフから三名、いまだに行方知れずの者がいる。もう、四日前のことだ」

 「エルーミャ。弟であるルイスがいなくなったのはいつのことですか?」

 「……二日前、だニャ。で、でも、そんなこと……! ミャーは、信じないのニャ!」

 「ですが、事実です。この時系列から鑑みるに、あなたの犯行はただの勘違いによるものと言えるでしょう」


 情報から照らし合わせるにエルーミャが犯行に移ったのは、弟が拐われた翌日。それだけ急いでいたのか、エルフに拐われたと確信を持ってしまう何かがあったのかは定かではありませんが、それほどの想いがあったということでしょう。

 昨晩から今に至るまで、エルーミャと接してきて感じ取れた感情はどれも、強いと言えるほどのものでした。エルフに対する殺意や憎悪の分だけ、エルーミャがルイスに抱いている感情と言えるのでしょうか。だとすれば、それほどの想いを個人に向けるということに何の意味があり、何がそうさせるのか。それは結局、協力者という立場を得ても、理解には至れませんでした。


 それでも、収穫はありました。

 エルーミャという実例を得られたのはいい経験と言えます。そして何より、先ほど協力者と明かした際のフールの反応。ただのいつも通りの発作とも思えましたが、それにしては強い感情が乗っているようにも感じます。寂しさ、困惑、憂慮、戸惑いなど、それ以上の感情がその声に、瞳に現れていたように思えます。

 その原因は定かではないですが、それでもフールをそうさせる何かがあること、フールにそんな反応ができることを知れたのは、この先の旅においても有用な情報と言えるでしょう。


 そして今。目の前の牢の中で、エルーミャが膝を地面へと落としました。

 私の言葉に対して、小さく否定の言葉を繰り返し続けています。それから、堰を切ったように叫び始めるエルーミャ。

 その様は、何かへの慟哭そのもののようでした。


 「ミャーの、勘違い……? そんな、そんなはずはないのニャ! だって! じゃあ、なんで……! ルイスはいないのニャ? ここに、いるはずなんだニャ。なあ、リィシェとか言ったニャ? ミャーのことはどうでもいいから! ルイスだけは解放してくれニャ!」

 「貴様! 何度言えば分かるのだ!」

 「エルランド君。構わないよ」

 「……失礼した」


 錯乱。そう言って差し支えない様子のエルーミャ。

 それに激昂したエルランドを、一言でリィシェが諌めました。

 そして、リィシェが正面から、エルーミャへと語ります。


 「エルーミャ君。君にとって残酷な事実を、もう一度だけ告げよう」

 「いや! 嫌だニャ!」

 「エルーミャ……」


 そのあまりの様子に、フールが声を漏らす中、リィシェはエルーミャにただ事実を突きつけました。


 「このオアシスに、ルイスという獣人は存在していない」

 「……ぁ」


 エルーミャの灰色の髪が地面へと垂れ、掠れたような声だけがその場に残りました。

 感情、もしくは生気すらどこかへ落としてしまったようなその表情が、ただ虚空を見つめています。


 答え合わせと言いつつも、現状分かっていることの大半は話し終わりましたね。

 後は、この先どう行動するか、ですね。行方不明者の所在すらわかっていないという、ある意味で状況がリセットされた状態ですし。

 何故行方不明になったのか、エルフと獣人の両方から被害が出ている以上、何者かの作為が見られます。

 この不透明な状況の中、敵対していたエルフと獣人の関係性も未知数といえます。


 相変わらず、崩折れ、項垂れ、大樹の根に水滴を落とし続けるエルーミャ。

 解決したというのに、誰も喜ぶどころか、喋ることすらしない、不思議な空気感がこの場に満ちていました。

 不思議なことに、失敗したエルーミャはともかく、他の面々まで物憂げな様子を見せています。

 そんな中、リィシェが膝をつき、牢の中にいるエルーミャへと視線向けました。


 「エルーミャ君」


 どこか柔らかさを帯びた、そんな声でした。

 その呼びかけにエルーミャがゆっくりと、ただ視線を合わせます。


 「君のしたことを、私が許すことは無いだろう。私の同胞を、傷つけようとしたのだからね。許すつもりはない」

 「……別に。もう好きにすれば良いニャ」


 言葉の内容に対して、どんどんと柔らかさ、暖かさのようなものが、その声色に積み重なっていくように聞こえてきました。

 それに対して、そんな事かと言うように、視線を逸らすエルーミャ。


 「ああ、だから君には償ってもらうとしよう」


 そんなエルーミャの様子を気にする事なく、語り続けるリィシェ。

 その口元には、先ほどまでの静寂には似つかわしくない笑みが浮かんでいました。


 「行方不明のエルフたち、そして、ルイスという獣人の捜索に協力してもらう。これが君の償いだ」

 「――え?」


 エルーミャの瞳に、微かに、それでも確かに、光が宿りました。

 その様子に、してやったりというように笑みを深めるリィシェ。


 「――私たちエルフの、協力者になってもらおう」


 なるほど、そう来ましたか。

 どうやらこの騒動、まだまだ学べることがありそうです。



 *



 エルーミャへの尋問が一通り済み、私たちは地上へと戻ってきました。

 そこには何故か焼け野原となった広場の一部と、巨大と言って差し支えのない程の花が咲いていました。


 そして、私は今。

 その花の下で正座というものを体験していました。

 今朝、フールとフランからお説教というものを体験したときに一度経験したので、要領はつかめています。関節の可動域にも問題はありませんし、何時間であろうと問題なく実行できるでしょう。


 「つまり、君はエルーミャ君に誘われて面白そうだったから協力者になったと」

 「はい。協力者という立場の経験を得ることが、主な目的でした。後はエルーミャの目的にも興味がありましたので」

 「……あの、リィシェ。アイは悪いけど、悪気は無かったんだ。だから、その……」

 「大丈夫だ、フール君。今情報を咀嚼している段階でね。端的に言うと困惑している。怒りなどの感情は今私の中に芽生えていないよ」

 「それは安心するところなのかしら?」


 因みに、私の頭にはリーダーが乗っており、背後からフランが抱きついています。

 どういう状況でしょうか?

 エルランドは、キャシィの所へ向かい、エルーミャはまだ牢にいますので、今ここにいるメンバーはこれで全員ですね。


 「それはそれとしてアイ?」

 「何でしょうか、フール」

 「流石に、今回の一件は僕も怒ってるからね」


 ほう。それは中々に興味深いですね。

 フールが私に対して、怒るといった状況は初めてと言えるでしょう。今朝のお説教も怒っているうちに入るのであれば二回目ですが。

 今日は収穫の多い日ですね。


 「何で君は一人で行動するのさ?」

 「ふむ、一人で問題なかったので」

 「あのね! さっきの尋問の間、僕がどれだけ……ああ、いや。これは良いか。ともかく! これからは出来るだけ一緒に行動すること! それか一人で動く時はせめて一言先に言っておくこと! これを守ってほしい」

 「何故でしょうか?」

 「僕が君と旅を続けたいから」

 「なるほど、分かりました」


 正直、何故怒られているのかは結局謎でしたが、旅を続ける為に必要なことならば仕方ありませんね。

 私の答えに納得したのか、フールはそれ以上何も言いませんでした。

 代わりに、何故かフランからの拘束が強まりました。何故?


 「フールばっかりずるいわ! アイ、あたしにもその条件守りなさいよ? それに加えて毎晩一緒に寝ること! 良いわね?」

 「必要なのであれば」

 「必要よ」

 「分かりました」


 そんなやり取りを経て、ふと思い出します。

 そういえば、フランに聞きたいことがありました。

 私は顔をあげ、後ろにいるフランの方へと視線を向けます。フランも視線を合わせる為に覗き込んできたので、自然と見上げる形になりました。

 しかし、落ちそうになったリーダーが私の顔に移動したので、一瞬の出来事でしたが。

 仕方がないので、一度姿勢を戻してから問いかけました。


 「尋問前に一度聞いたことなのですが、その時は途中で終わってしまいましたので、もう一度聞いても良いですか?」

 「ん? なんか話してたかしら? まあ、アイの聞きたいことなら何でも答えるわよ?」

 「地上での爆発に関して何ですが」

 「え゛」


 そう、ずっと疑問に思っていた、「何故か」起きてしまった爆発に関してです。

 私が置いた爆裂球が爆発した原因。それだけはずっと謎のままでした。だからこそ、爆発の現場にいたというフランに、話を聞いておきたかったのですが……何でしょうか、この反応は?

 喉が潰れたかのような声を発したかと思えば、固まってしまいました。最初に話題に出した時も、何故か動揺しているかのように振る舞っていましたし、変なフランですね。いつもとは違う方向性のおかしさなのが、より一層変です。


 「フラン? どうかしましたか?」

 「ぇあ、い、いやぁ? な、何でもないわよ?」

 「そうですか、それではもう一度聞きますね。地上での爆発の原因を知りたいのですが、何か知っていますか?」

 「そ、それに答える前に一度聞いておきたいのだけど。あの爆発って、もしかして尋問に何か影響あったりしたのかしら? いや、多分ないとは思ってるのよ? だって、たかが一回の爆発で、人的被害も出てないんだもの」


 やはり目に見えて動揺していますね。後ろにいるので見えてはいませんが。

 この様子をからして、何かを知っているのは確実と言って良さそうです。

 それにしても、地上の爆発による尋問への影響、ですか。結果的に見れば、エルーミャの目的という大元から食い違っていたわけですから、無いともいうことはできるでしょう。ですが。

 そこで、フランの疑問に答える、というよりは苦労話のようにフールが話し始めました。


 「それがさぁ、思ったよりも影響大きかったんだよね」

 「え゛」

 「あの爆発のせいで、エルーミャの発言に信憑性が出て、エルランドがリィシェに伝えに行ったぐらいだったからね。結果的に何とか収まってたけど、最悪何が怒ってもおかしく無いって覚悟したよ、あの時は。何より、タイミングがものすごく悪かったね」

 「っすー……へ、へぇー。大変だったのね?」

 「実際には、私が仕掛けた爆裂球が広場で実際に爆発したものだけだったので、オアシスが焼け野原になることはあり得ませんでした。ただ、私としても目立つ場所に置いておくことで、危機感を煽るだけの計画でしたので、実際に爆発する予定のないものが爆発した事実に疑問を覚えているんです」

 「うん、僕も気になるかな。というか今サラッと自分が仕掛けたって言ったよね、アイ? いやもう今更だから良いけどさ……」


 そういえば話してませんでしたね。

 私という協力者がいなければ、エルーミャの作戦は作戦と呼ぶにもお粗末なものでしたからね。そもそも、爆発物すら持ち込んでいませんでしたし。結果から言って、私がエルーミャの作戦を補強したのが良かったのかは分かりませんが、この結末にはならなかったことでしょう。


 「えーっと、爆発の原因よね? うん、知ってるんだけどね? ちょっとだけ待ってくれる? その、心の準備が必要なの」

 「端的に言ってフラン君が暴投した結果だな」

 「ちょっとリィシェ!? な、あ、なんで言うのよ!」

 「なるほど、フランが投げた結果でしたか」

 「アイも納得しないでちょうだい!? 違うのよ、あれはリーダーが遊びたいのかなって思って、それで……」

 「ンナーウ!」


 私へと抱きついていた手が肩に置かれ、揺さぶられることによって視界が不安定となりました。私の上に乗っているリーダーが爪を立てて踏ん張っているのが感じ取れます。

 私をぐわんぐわんと揺さぶりながら、フランが弁明を行いますが、いよいよ踏ん張れなくなり落ちたリーダーがは不満の声を上げました。

 どちらに対しての不満でしょうか?


 「まあ、フランだしなぁ……。仕方ないかぁ」

 「あんたはあたしの何を知ってるのよ!」

 「何で僕が怒られるのさ?」


 ふむ。とりあえず疑問は解決しましたね。

 エルーミャとエルフが協力関係になった以上、このオアシスでこれ以上の騒動はしばらく起こらないでしょう。

 ただ、それであっても、何も解決していません。今は振り出しに戻っただけといえます。これから、時間が経過していくごとに、状況が悪化するであろうことも明白です。最初の神隠しから、既に四日経っているのですから。


 エルフでも獣人でもない、何者かの介入。

 これについても、後々考えていかなければならなくなるのでしょうね。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


この度、X(旧Twitter)のアカウントを作成しました。

今後、更新する際にはそちらで告知することとなると思います。

更新情報はこちら

https://x.com/shun_shiratuki



また、それに伴い作者名を『白月』→『白月 シュン』に変更させていただきます。


どうぞこれからも、「ただ一つ、それだけを君に願おう」をよろしくお願いします!



投稿は引き続き、出来上がり次第当日22時頃を予定しています。


感想やブックマークなどで応援いただけると、とても励みになります。


それでは、また次の旅路でお会いしましょう。

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