第二章 待ち望んだ日常 2
【バゼル・ロワール】
今日も心地良い風が吹いている。昼寝をするにあたってはこれほどの好条件はほとんどないだろう。
ゆっくりと目を閉じる。
不意に人の気配を感じて目を開ける。
「……んぅ……」
「おはよう、今日もよく寝ていたね。」
私は飛び起きた。
「バゼル!?いつからそこに?」
「さあ?結構前からいた気がするけど……」
彼の名前は『バゼル・ロワール』、龍種創世計画の被験者の一人だ。
「ふ、ふん、来ていたなら起こせばいいのに……」
うろたえる私に笑いかけながら、彼はいつものようにこう言った。
「いや、起こすのは悪いと思ったし、寝顔を見れなくなるのも残念だし……」
勘弁してほしい。そんなにも素直に応えられると何も言えなくなるじゃないか……
「ま、起きてしまったならしょうがないね。さ、お茶の時間だよ?」
「……もう少しだけ」
あと五分だけとはよく言ったものだ。起こした体を再び寝かせながらバゼルを見た。彼は微笑んだまま、しょうがないねと言って私の横に寝転がる。悪い気はしない。これがストラーだったら消し炭にしているだろうが、バゼルなら構わない。きっと私は彼のことを好きなんだろう。だからといって何をするでもない。こうしてお茶の時間の前にささやかな幸せを噛み締められれば良いのだ。
嫌だな、顔が熱い気がする。赤くなったりしてないだろうな?困ったな。
私がもう一度眠りに落ちようとしたとき、バゼルが勢いよく立ち上がった。少し驚いて目を開ければ差し伸べられる手。
「そろそろ行こうか?みんなが待ってる。」
本当に些細な日常の繰り返しであっても、私にとっては充分過ぎた。そして、いつまでも続くと信じていた。