第二章 待ち望んだ日常 1
幼い頃の私には得難いものだった仲間とのふれあいがそこにはあった。
楽しかった。
今までのどんな経験よりも楽しかった。
だから、いつまでも続いて欲しいと願った。
第二章 待ち望んだ日常
「またここにいたのか。」
中庭の小高い丘の草の上で一眠りしていた私に聞き慣れた声がかけられる。
「ふん、ストラーか……。何の用だ?」
声の主の名は『ストラー・ガンマルド』、若いながらも研究の代表者を務めている。
「目くらい開けたらどうだ?」
とさり、と隣に腰を下ろす音が聞こえた。仕方がないので反対を向いてやった。
「まだ睡眠の時間だ。邪魔をするな。」
ストラーは呆れて溜め息をつく。いつものことだ。
「お茶の時間だとよ。皆アトスを待ってる。」
『アトス・クレバンテーラ』……私の本名であるが、はっきり言って大嫌いである。
「ふん、仕方がないな。起きるとしよう。」
だるさを全面的にアピールしながら体を起こす。
「ストラー、私は背伸びをしようと思う。」
「すればいい。」
「……」
こいつの前では絶対に背伸びはしたくない。何故ならば、私の体の変化を調べるという名目で舐めるように見てくるからだ。
「ふん、研究一筋と見せかけて、結局は男というわけだ。」
「仕方ないだろう?お前のプロポーションは完璧と言っても過言じゃないんだ。その全てを知りたいと願うのは研究者の性というものさ。」
今度は私が溜め息をつく番のようだ。大きく息を吸い込んで、思い切り吐き出してやった。
「まったく、妻と子供が聞いたら泣くぞ?」
こう言えば黙る。いつものことだ。
さて、ストラーが家族をとるか知的好奇心を満たすかで悩んでいる間に、私は皆の所へ急ぐことにした。私が一番楽しみにしている時間の始まりだ。
「いつか必ず……!」
不意に寒気が走った。しかし、足を止めることはしなかった。いつもはこんな事なんて無かったから、気のせいにしたかったのだ。