エピローグ
エピローグ
衝撃が収まり、アルセィア、バゼル、ハシュトマ、バーゼッタの四人が北天の地を訪れたときには、龍の落ちた穴が残るのみだった。そこにいたはずの二人の姿はなく、二人を探す手がかりすらも残ってはいなかった。
エーテルウィルスは央天に散らばる程度で済んだ。ハシュトマが事前に装置のいくつかを破壊できていたからだ。それでも央天にいた全ての人がウィルスに侵され、力を手にした者もいれば、死んだ者もいた。力を手にした者は、その重大さを実感していた。何よりもストラーの下で、たとえ騙されていたとしても世界平和を願って働いていた者達がほとんどだったことが幸いだったのかもしれない。
レイは、一足先に東天に帰っていたユエルのもとへと帰った。もう二度と目覚めることはないが、ユエルの身に宿っていた新しい命に全てを託すとの言葉を残して……
バゼルは南天へと向かった。そこが自分の故郷だったから。ミューを千里眼で見つけることは出来なかった。だが、生きていると信じて彼は待つことにしたのだろう。いつか必ず戻って来ると信じて……
ハシュトマとバーゼッタは央天の復興に力を注いだ。彼女は、たとえクローンであっても自分のした事と言っては皆に頭を下げた。誰も攻めはしなかった。彼女も被害者であったし、何よりも考え方という点において彼女とストラーは正反対だったから誰も攻めようなんて思いもしなかった。
央天の地下区画にいた被験者たちは、西天へと向かう途中にある森の中へと姿を消した。
アルセィアの行方はそれ以降誰も知らない。
程なくして星々を守護する旅をしているという大きな龍と、地に落ちた龍を追ってきたという小さな星に乗った少女が訪れた。龍は人々の話を聞き、守護龍としてこの島……この星を護るために留まることにした。少女は、衛生の守護者といい、地に落ちた龍『星啜り』を監視するために、遥か上空、月という名の彼女が乗ってきた衛星の中に留まることにした。
それからどれだけの歳月が流れただろうか?人々の記憶からこの事が消え去り御伽噺として語り継がれるようになった頃、一つの大きな悪意が動き出した。それは瞬く間に世界を呑み込み広がった。
そして、その悪意の中心にストラーという名前があった……