第一章 炎が裂いた絆、炎が呼んだ絆 2
家族や一族の者達との仲は良かったと記憶している。いや、正確には仲が良さそうに振る舞っていたと言うべきか。
彼らの中には、私の力を使って一族の威厳を取り戻したいと考える者も少なからずいたようだから、あまり深く付き合うのは危険に思えたのだ。
だからといって皆が嫌いだったわけではない。一人一人の良いところは一通り把握していたつもりだ。まあ、それを活かす場は来ることなく、残念ではある。
あれは成人の儀の日のこと。
一族に伝わる儀式は『炎石の髪飾り』を身に付けて一夜を明かすこと。その過程で髪飾りに埋め込まれた宝石が真紅に染まれば、晴れて成人となる。年齢は関係なく、時機を見て必要となれば執り行われた。
私が何歳の時であったか定かではないが、他の誰よりも早く成人させられたのはよく覚えている。そして、誰にもその結果を伝えることが出来なかったことも……。
何故ならば、その日が村の最期の日と重なったからだ。
私が目覚めたときには、もう既に村一面が火の海だった。私は、髪飾りの効果なのか、それとも私自身の持つ力なのかは分からなかったが、熱さを感じはしたものの、火傷を負うことはなかった。今の私はそれが両者がもたらした結果だと知っているが、当時の私にとってはこの上無く不快なことであった。
燃え盛る村は、炎の音以外は静かなもので、とてつもなく不気味。それは何よりも、逃げ惑う人々が見当たらなかったことが原因だろう。そして、助けを求める声すらあがらない。
ようやく鎮火した後には、もう笑うしかないくらい何も残ってはいなかった。残ったのは私と髪飾りだけ。
もしかしたら避難できた人がいて、ここに戻って来るかもしれない。その期待は焼け焦げた遺体の数を数え終わったときに捨てた。
こうして私の生まれた村は消えた。