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エターナル  作者: かさは
植物少女編
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第四十話 大群

「おいおい、そりゃないぜ〜!?」

学園の、とある教室で窓際に寄りかかりながら友達と談笑している男子生徒は、そう身を乗り出した。



「んなこと言ってももう変えられねぇよ。」

男子生徒の友達がニヤニヤと笑みを浮かべる。



「取り消し、取り消しだ!」

焦りを見せ、懇願するように縋り付く。



「残念〜!もうできねぇよ〜!」

その言葉に、男子生徒は頭をガクン下げた。



「………マ、マジかよ。」

トホホ、と項垂れた男子生徒を横目に、友達は外を見る。



「ま、気にする………な………。」

外の景色を見た友達は呆気にとられ、開いた口がふさがらない。



「?どうしたん………だ。」

男子生徒は友達の言葉が来なくなったことを不思議に思い、立って同じ方向を見た。



「あれ……人……なのか?」

友達がそう言う。少し遠くでは小さな粒が蔓延っていた。



「いやいや、あれだけの数が人な訳………。」

そこでよーく目を凝らして見る。



「おい、おいおいおい……!」

その瞬間、男子生徒の顔は強ばった。



「あれって………。」

友達も見えたのか、さっきまでの訝しげな顔ではなく、焦りを見せた顔だった。



「………せ、先生に、先生に言わなきゃ!」

友達は直ぐに体を後ろに捻り、走って教室を飛び出た。



「お、置いてくなよ!」

男子生徒もそれに連なり、友達の背中を追いかける。



二人が見たのは、住宅街の屋根を越えて、ありえない数でこちら側に向かってくる、悪魔の大群だった。





「ちと、まずい状況になってんなぁ………。」

学園長室でソファに遠慮なく腰掛けている仁は額に汗を浮かべていた。



「……………。」

対に座るようにして、学園長は思考を巡らせている。



「……数さえ分かりゃな。」

はぁ、と仁は溜め息をつく。



「……相手の数、頭、何もかもが分からないとなると、手の打ちようが……。」

学園長は顔を顰めて再び思考の海に潜る。



「……とはいえ、やるしかねぇだろ。」

覚悟を決めるようにそう言う。



「全員動員しますか……?」

恐る恐る訊く。



「馬鹿、んなことしたらこっちが襲われた時、どうすんだよ?」

仁は呆れるように声を出す。



「す、すいません。」



「まぁ、とはいえ、数人残す程度でいいだろう。そんだけあれば、万が一ここが襲われたとしても逃がすことが可能だ。」

判断を直ぐに済ませ、次の問題へと目を向ける。



「……あの悪魔どもは、三番丁に居る。」

一度息を吐いて落ち着く仁。



「……………。」

学園長はそれを黙って聞いている。



「その先、少し開けた場所がある。……分かるな?」

ちらっと学園長に目配せをした。



「えぇ、五番丁、ふれあい広場。」

確かめるように言った。



「そうだ。あそこで迎え撃つ。」

仁は決意を固める。



「……それに、だ。幸い三番丁から五番丁ふれあい広場まではそれなりに距離がある。計算したところ、悪魔どもは精々1時間はかかるだろうな。」

窓の外を見る。



「だが、俺らは歩いても三十分程度あれば問題ない。」

その言葉を聞いた学園長は何かを決心したのか、立ち上がった。



「……通達してきます。」

そう一言だけ言ってその場を去った。



「……弾をどれだけ使うん、だろうなぁ。」

仁の独白は、部屋を少しだけ反響し、消えていった。





走って放送室まで向かう学園長。



「はぁ、はぁ、はぁ。」

それなりの年なのにも関わらず、体の悲鳴を無視して走る。

暫く走っていると放送室の看板が見え、ドアノブを捻って部屋にはいった。


すると、すぐさまマイクに音を入れて、ああ、と声を出す。音が出ることを確認したら一息吸ってマイクに向かって話しかけた。



「全ての人に報告します。先ほど、五キロ先に悪魔の大群と思われる集団がこちらに向かってきている事が確認されました。」

ガコン、コポンと一度間が入り、続ける。



「戦闘に参加出来る者たちは、ただちに校庭へ、それ以外の人々は移動の準備をしていてください。」

ジー、と音が鳴り、放送が切れた。





「…………。」

トワは太郎とユキと共に小物運びをしている最中、その放送を無言で聞いていた。暫く考え、結論をつけた。



「ダメだよ。トワ君。」

しかし、ユキがトワの服の袖を掴む。



「…………。」

校庭へと動こうとしていた体が硬直する。ユキの理解と自身のやりたいことへの、二つの感情がトワの顔を襲った。



「……君は、君は、ただでさえ怪我をしてるんだよ?」

声が若干震える。



「……私、トワ君が怪我してる所なんて、見たくないよ…………。」

掴んでいた手は弱々しく力が抜けていくのを感じる。



「……………。」

太郎は心配そうにそれを見ていた。



「ユキ…………。」

トワはユキから顔を背け、申し訳なさそうにする。



「だから、お願い…………。」

顔を俯かせ、声に覇気が乗らなくなった。

トワは無意識に拳を強く握っていた。



「…………ごめん。」

トワは目線を地面へ向け、その手を優しく振りほどいた。



「あっ…………。」

ユキはトワを追いかけるようにして、右手を少し前に伸ばす。

手を掴む動作と離す動作を交互にして、ゆっくりと腕を下ろした。



一層顔を俯かせ、目元は影で隠れる。

太郎はユキとトワを交互に、心配そうな目で見る。



ユキの耳には、去っていくトワの足音だけが鮮明に聞こえていた。




「……………。」

トワは何も言わずに廊下を歩く。

気づけば、下駄箱前まで来ていた。上履きを脱ぎ、靴へと履き替える。



玄関外の黒いコンクリートを踏みながら、校庭への道のりを歩む。すると、目の前に階段が見えたので、カタカタカタと階段を下りた。



どうやら既に祖月輪そがわ)組の組員は全員来てたようで、黒いスーツが目につく。



階段を下り終わり、ザッ、と砂が擦れる。その音に数名がちらっとトワを見る。

それを気にせず人がいる場所まで歩き、着いた。



着いてから、トワはちらっとあたりを見回した。黒いスーツの男たちが無言で立っている。

そこにトワは後ろから声をかけられた。



「ト、トワ……なのか?」

その声で顔をそちらに向ける。



「……傘都。」

声の主は傘都だった。そこには傘都だけでなく、ヒカルとサキも同行していた。



「お前、怪我してたよな?」

傘都は目を細める。



「……まぁ、もう治りかけだ。」

トワは一瞬目線を傘都から外すが直ぐに戻す。



「…………。」

信じられないようで、更に目を細める。

しかし、トワの言っている事は本当だ。もう胸の傷は塞がっており、傷の接合部がほんの少しだけ痛むだけである。



「………分かった、信じる。」

トワに目を合わせ、動じないことを確認した傘都ははぁ、と溜め息を付いた。



「おい、本当に大丈夫なのかよ……?」

それでも心配そうにヒカルは見ている。それは、サキも同様だった。



「本当に大丈夫だ。マジで治りかけだから。痛みはない。」

トワは安心させるように声色を優しくする。



「……そんなに心配しなくても問題ないですよ、ヒカル。」

そうサキが言葉を挟んだ。まさかの人物にヒカルは驚いた顔を浮かべる。



「なんで、そんな事が言えるんだよ。」

それは純粋な疑問だった。



「次そんな状況を作らないように、私たちが抑えればいいんですよ。」

サキはトワをちらっと見て、ヒカルと目を合わせる。



「それ、手綱を握るってことじゃないか……?」

トワはそう言った。



「まぁ、そういう捉え方もできますね。」

口角を上げる。

その言葉に納得できたのか、傘都とヒカルは互いに目を合わせ、頷く。



「「賛成!」」



「俺の自由は?!」

驚いた声を出したトワ。



「ねぇ。」

傘都はそう断言した。



「ない。」

ヒカルも傘都と同様だった。



「ないですね。」

トワをジト目で見る。



「マ、マジかよ………。」

ガクッと項垂れた。



「何してんだ、お前ら。」

すると、四人はいきなり声をかけられた。その声の方向に全員振り返る。



「菅野さん………?」

トワの目が気づかれない程度に見開かれる。



「お前、怪我してたんじゃねぇのか?」

菅野はトワを見た。



「それ、ヒカルにも言われました。でも大丈夫です。もうほぼ治りかけですから。痛くありません。」



「………そうか。」

菅野はヒカルと傘都、サキの順番に見て、何かを感じ取ったのか、何も言わなかった。



それから直ぐに号令がかかり、空気が一斉に動いた。

波のように人の群れが前へと進みだした。


ちょっと◆が多くなってしまいした。次から気を付けたいと思います。

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