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エターナル  作者: かさは
植物少女編
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第三十七話 治先生

ガラガラガラ、と扉が開く。そこから、トワとユキが二段重ねになり、保健室をのぞいた。



「いた、治先生だよ。」

下段のユキがトワを上目遣いで見る。



「そうだな。でも、まだ寝てるぞ?」

時計の針は午前9時頃を指していた。



「起こすのも気が引けるよね………。」

ちらっと治を見れば、椅子の背もたれに寄りかかりながら目の隈が濃く見える。



「そういえば、トワはどこで寝てたの?」

続けてユキは訊く。



「俺は、あそこのカーテンがかかってる場所だ。先生の近くの。」

二つカーテンがある中、トワは目線をナオ)がいる近くのベッドがある場所に目を向けた。



「じゃあ、もう片方には誰がいるの?」



「それは…………。」

トワはゴニョゴニョと口ごもる。



「何か、言えないことが?」

ユキは純粋にトワを心配した。



「そういうわけじゃないんだけど…………。」

うーんうーんと口を波にしながら頭を悩ませる。



「トワが連れて帰った女の子がいんだよ。」

後ろから誰かが二人に声をかけた。



「えっ、菅野さん?!」

勢いよく後ろを振り返り、目を点にする。



「………ねぇ、トワ。どういう事?」

ユキは、ひどく冷たい目を向けた。



「い、いや〜〜。」

目を泳がせてテンパるトワ。



「おい、痴話喧嘩ならあとにしな。」

菅野がユキを制止し、中に割り込む。



「………痴話喧嘩じゃないもん。」

ユキは誰にも聞こえない声量で呟く。



「ていうか、なんで菅野さんがここに?」

トワは菅野を見て訊いた。



「お前、同じクラスの奴に会っただろ。」

菅野は言う。



「………えぇ、そうですね。」

教室での傘都やユキの出来事を頭に浮かべる。



「あれで騒ぎになったんだ。そんで、探してみたらここにいた訳だ。」

菅野はトワが起きたことに驚き、珍しく慌てて探していた事を隠す。



「そんでだ。お前ら、ここで何してんだ?」



「俺の胸の傷があるんですけど、それが何でこんな塞がってるのか気になって。」

トワは若干傷口が痛むが、我慢する。



「それを保健室の先生に聞きに来た、と?」

菅野は近くの壁に寄り掛かった。



「そうです。」

刺された箇所を服の上から触る。



「俺は知ってるが、聞きたいか?」

遠目で治の容体を軽く見て、すぐにトワへ顔を向き直す。



「良いんですか?」

トワは少し驚いた表情をした。



「構わねぇさ。」

手を顔の近くで左右に振る。



「なら、お願いします。」

興味を菅野へと向けた。



「あの日、お前を急いで連れ帰った時だった。」


それは、二日前に遡る。


―クッソ!マズイ!

地面に血溜まりを作り、ハイライトの消えた目をしたトワを見る菅野。



「………縄でも何でもいい!縛れるものを探すぞ!」

一瞬考え、トワの体の近くで慌てている三人に、命令を下した。



菅野のその言葉に、我を取り戻した。

傘都は探したいが、遠くにいけば行くほど戻るまで時間がかかることを考え、板挟みになっている。



そこで菅野は思いつく。


―そうだ、これがあった!

菅野は自分の上着を勢いよく腕を動かし、ビリビリにした。その破いた上着をトワの両脇下をくぐらせ、力強く締める。



そして、そのまま固結びをしてトワを担ぎ、車へと乗せる。三人も急いで乗り、法定速度を無視して最高速度で車を動かした。



そうして、学園へと辿り着き、専門医がいそうな体育館の医療場所へと走って向かった。



「?」

外から聞こえる大きな足音に、治はハテナを浮かべる。その瞬間、簡易テントのテントポールが浮かび上がり、風が少し入ってきた。



「すまん!こいつを治せるか!」

菅野は周りを急いで確認し、直せそうな人を探す。



治は、足を怪我した怪我人を"不思議な力"で治療し、ふと目を菅野に向ける。

そこには、死んだ目をしたトワが担がれてあった。



―私に、あの子を治せる?

治は自身の不思議な力について見つめ、トワの異変に気づく。



「ごめん、その子、見してもらえる?」

ひどく真面目な顔をして、治は言う。菅野もそれに従い、近くの台にトワを置いた。



治は、トワを見て絶望的な事実に気が付いた。



―この子、心臓部に………!

すると、菅野が治に訊いてくる。



「トワを、治せるか?」

その声には、焦りや不安が乗っていた。



「………分からない。でも、希望はある。」

治は言い終わった後、すぐに"不思議な力"を使用しようとする。



「何をするつもりだ?」

菅野は何の道具も持たずに佇む治を見た。



「今はそんな事を教えてる時間はない……!」

トワの心臓の鼓動は、段々と小さくなっていく。



―衛生状況もクソもないけど、やるしかない!やらなきゃこの子が死ぬ!

医療専門の服すら着ずに引きちぎるように手袋をして、トワの心臓部を触る。



―出血量が……!

治はこれまで通り不思議な力を腕を巡り、掌からトワの心臓へ流し込む。



―駄目だ、この量じゃ足りない!

今までとは違い、更に多くを流し込む。しかし、それでも足りない。



―どうなるか分からないけど、やるしかない……!

意を決して、治は必死な顔をして自分が出せる最大出力で、力をトワへ送る。周りには、緑色の粒子が渦巻くように舞う。



―なんだ、これは?

菅野はその光景に、目を奪われていた。すると、次第に収束し、美しい緑の光はなくなった。



「………ふぅ、何とかなった。」

額の汗を袖で拭い、近くの椅子にどしりと座る。



「…ありがとうございます。」

菅野は治に頭を下げる。



「……それで、その力は一体?」

我慢できず、恐る恐る訊いた。

治は気だるそうな様子を周りに撒く。



「ごめん、今は、無理。」

声に覇気をなくし、ゆっくりと椅子から立ち上がる。



「この子は保健室に連れてくから、その後なら………。」

治はちらっとトワを見る。



「いや、やっぱり今日は無理。明日、もしくは明後日訪ねて。」

菅野の方に手をシッシッとして、トワを持ってテントポールを出た。


そして、今へ至る。



「………とまぁ、こんな感じだ。」

菅野は所々思い出しながら話す。



「そんな事が………。」

トワは申し訳なさを声に乗せ、治へ目を向けた。先程と変わらない景色のはずが、どうしてか少し重く思えた。



「……………。」

再びトワは治の目元のクマを見る。そして、菅野へ振り返る。



「そういえば、治先生は二日前の時から起きてないんですか?」

トワは菅野に訊く。



「治したその日は動いていたようだが、それからは動きもなかったような気がするな。」

菅野は手を顎に当てた。



「先生…………。」

ユキは両手の指を絡ませ、強く握る。



「………尚更起こせないですよ。」

くるりと身を翻し、行く当てもないが歩き出す。



「トワ?どこに行くの?」

トワの背へと向けて問いを投げる。



「いや、分からない………。」

戸惑った様子を見せた。



「トワ、まだ完治してないんでしょ?」

菅野に聞こえる声量でユキは言う。その言葉に菅野は反応を見せた。



「…………トワ、寝ろ。」

冷静に、でも命令を強くした。



「……はい。」

再び保健室へと体の向きを変え、トボトボとトワはベッドへ戻るのだった。


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