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エターナル  作者: かさは
植物少女編
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第三十三話 補充

化学室の一角、そこには二人の男がいた。


「まずいです組長、残弾が十を切ってます。」


もう一人の男に向かって菅野は言う。


「……お前だけか?」


一度考え、菅野に訊く。


「いえ、組員全員です。」

目を見て堂々と宣言した。


「………成る程、そりゃまずいわけだ。ドスは?」

組長こと仁は近くの背もたれのない椅子に座って足を組む。



「俺は大丈夫ですが、他がどうかと。」

菅野は仁のことを目線で追う。


「そりゃあ、随分甘めぇとは思うが、流石に残弾十を切ってると心もとねぇな。」

左腕を黒い机に置いて斜め上を見上げる。


「……他の組員にはドスの稽古をさせておきます。」


「あぁ、頼んだ。しっかし、弾を補給できるとしたらサツのいる場所しかないぞ。」


仁は顔をしかめ、見上げていた目線を床に落とす。


「それにだ、もし生きてたとしたら、サツ共が俺らに協力してくれるかも分からん。」

懸念点を口にして、ため息をつく。



「まぁ、そこは賭けでしょう。」


「賭け、ねぇ。まぁ、それしかねぇか。」

仕方がなさそうに重い腰を上げる。


「何処へ?」

科学室の扉へ向かって歩く仁に顔を向ける。


「学園長んとこ。」

振り返りもせず、ガラガラと音を立てて開け、外に出て閉める。それを確認した菅野は懐から短刀を取り出し、鞘から抜く。


刃文がゆらゆらと靡いている刀身を眺める。

そこには、悪魔を斬ったときの汚れがついていた。


―油でも拭くか。

するともう一度懐を漁り、目釘抜き、丁子油(ちょうじゆ)と拭紙、打粉と紙を机の上に取り出す。

短刀の目釘を目釘抜きで抜く。



目釘を布の上に置き、持ち手と刀身を抜く為、何度か手の甲を叩いて揺らす。持ち手を置き、目釘もそこに置く。


すると、抜けたので(はばき)を刀身からスライドして外し、持ち手部分の粟田口吉光(あわたぐち よしみつ)と銘を切られているのがよく見える。


菅野は刀身に対し、下拭いを施し、古い油を取る。

それをしたあと、菅野は刀身を斜め下から眺めた。


確認したあと、打粉を用意し、刀身にポンポンと打つ。



それが終わり、違う紙で上拭いを施す。暫く菅野は刀身を鑑賞し、満足したのか丁子油(ちょうじゆ)を塗布する。


塗布し終わり、手に付いた油を持ち手にこすり、(はばき)を元に戻し、柄頭を叩いて持ち手をはめる。


最後に目釘を持って、目釘を装着して、刀身を固定する。



―こんなもんか。

自身の手入れの技術に惚れ惚れしながら再び刀身を眺める。


―俺は、やっぱこいつだな。唯一無二の相棒だ。


そう思案し、短刀を鞘に戻して懐に仕舞う。

その時、スマホが鳴る。気になったのか開いて見た。


少しの沈黙のあと、菅野は何処かへ向かうようにして化学室を出た。





「………と、言うわけだ。ここから一番近い警察署に行かせてくれ。」



場所は移り学園長室。そこでは仁と学園長がソファに座りながら話していた。



「……分かりました。ですが、あそこには悪魔を束ねる者もいると思いますけど、どうするんですか?」

学園長は仁の目を見て素直に疑問を口にする。



「………銃で倒れてくれたらいいが、そう上手くは行かねぇだろうな。」


ここから一番近い西港警察署の方角を見る。



「既に銃での対処は確かめて?」


「雑魚相手なら一発だ。二発必要な時もあるがな。」


仁は一度間を置く。


「とはいえ、それ以上の奴らには試したことがねぇ。」


「では、どうすると?」

学園長は少し前に出る。


「………トワの奴を連れて行く。これしかねぇだろ。」

仁の言うことに目を大きく開ける。


「それはなんでも!」

ソファから勢いよく立ち上がる。


「………あいつはもう大丈夫だ。それによ、お前はちと、過保護すぎやしねぇか?」

仁は学園長の目を真剣に見る。



「………………。」

顔に悔しさを浮かべながらも腰を落として座る。



「少しは頭ぁ冷やせ。」

仁はそう言って腰を上げて学園長室を出る。

仁が出た後の、ひとりぼっちの部屋の中でボソリと呟いた。



「私が、守らないといけないんだ…………。」





ガヤガヤガヤ教室から話し声が聞こえてくる。

仁は廊下を歩き、とある教室の扉の前で止まる。

周りの目を気にすることなく勢いよく扉を開けた。



「おい!トワの野郎はいるか!」

仁がそう大声を出すと、途端にクラスメイト達は静かになり、傘都達と駄弁っていたトワは仁に目線を向け、立ち上がる。


「どうかしましたか?」

トワは仁の方に寄る。



「おう、お前に手伝ってほしいことがあってな。それと、お前の友達も連れてこい。」

何が何だか分からないが、とりあえず仁の言うことに従う。



「お前らも来いってさ。」

後ろを振り向き、傘都達へと言う。


「私も?」

ユキは自分を指差す。トワは仁に無言で訊いて、首を横に振った。



「ユキは大丈夫だ。」

それだけ言うと、傘都やヒカル、サキも立ち上がる。


「じゃ、ついてこい。」

近寄ってきたのを確認し、教室を出て会議室へと歩く。


「そういえば、何の用なんですか?」

トワは先頭を歩く仁に向かって訊く。



「簡潔に説明すると、銃弾が少ないから警察署まで取りに行くのに手伝ってくれってことだ。」

後ろを振り返らない。


「それだけで………。」

トワはそこまで言って気が付いた。


「そうだ、トワは戦ったことがあるかもしれないが、ボスがいるかもしれん。お前らはそのためだ。」



「でも、この人数で良いんですか?」


「これでいいんだ。ボスを倒したら雑魚も消えるだろ?」



「………狙うならてっぺんってことですか……。」


「そういうことだ。」



「じゃあ、俺らは?」

今度は傘都が訊いた。



「雑魚の足止め、もとい雑魚殺しだ。お前らはかなり強い部類にはいるからな。そこら辺の有象無象とはわけが違う。」



「そういえば、仁さん。前に子供を戦場に行かせることを懸念してましたよね?」

トワは、ふと思い出した。



「まぁ、あんときはお前らが仕方なく来させられてただけだと勘違いしてただけだ。」

そこで仁はちらっとトワを見る。


「だが、自分の意思で行ってる事が分かったからな。それなら俺が口出しするのは可笑しいって話だ。」


仁は鼻で笑う。トワ達には見えない角度で真剣な表情を浮かべる。


「それと、だ。これからもお前らを頼ることになる。」

その声にトワ達も真面目な顔をした。



「そんな、馬鹿みたいな大人を許してくれ。」



「…………。」



「そんなこと、気にしなくていいですよ。」

トワの声は、ひどく優しかった。


「そうですよ!互いに苦しい状況なんですから、手を合わせないと。それが大人だろうと子供だろうと。」

傘都もそれに便乗して、いつもの笑みを向けた。


「…………そりゃ、ありがたい。」

仁は心の奥底で安堵感を感じる。すると、気がつけば会議室の扉の前までついていた。

そのまま止まらず歩きながらドアノブに手をかけ、開ける。

そこには、菅野がいた。


「待ったか?」


「いえ、大丈夫です。」

そう言う菅野はぴしっと立っていた。

菅野が居るのには理由があり、手入れのあと菅野のラインに仁から会議室で待ってろと言われたからである。

仁は近くの椅子に座る。


「じゃ、作戦会議といこうか。」



「まぁ、作戦会議とは言ってもそんなのガワだけだけどな。」


「と、言うと?」

トワが訊く。



「すでに決まっている。」



「……詳しくお願いします。」

トワは仁の目を見る。


「まずは下見をさせて、数を把握。その後、必要ならば数を増やし、ボスを殺す。それだけだ。」


できるだけ分かりやすいように簡潔に説明する。



「前と同じですね。」

トワは発電所の事を思い出す。


「基本戦略だからな。」



「……でも、その下見役はどうするんですか?」

トワは疑問をぶつけた。


「それはうちの組から行かせる。流石に、お前らにばかり任せるわけにゃいかねぇからな。」



「つうわけで、お前らはそれまで休んでろ。」

仁はそう言って、ラインを開き、メッセージを送る。

トワ達もその言葉に甘え、近くの椅子に座って話し始めた。


菅野は何故かは分からないが、目を瞑っている。

それから警察署の状況報告が来たのは二十分後のことであった。


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