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エターナル  作者: かさは
間章二
38/39

少女

避難所の事件からはや三日。かつては避難所にいた人々も体育館での生活に慣れてきた。そして、学園の一角の教室、1―Aには活気があった。


「だから、キノコに決まってんだろ?味のわかってねぇガキだな。」

トワは傘都に向けて煽るような顔をした。


「は?タケノコに決まってんだろ?お前は常識すらないのか?」

傘都も傘都でキレ気味である。


「別にどっちもおいしいでしょ。ていうかトワは甘い物苦手だったよね?」

宥めるようにユキは言う。


「確かにそうだ。だが、キノコは例外だ。」

堂々と宣言した。それにユキと近くにいるヒカルは困惑している。


「ぶっちゃけさ、キノコタケノコ論争とか、どうでもよくね?」

ヒカルはグミを一つ口のなかに入れる。ヒカルの隣にいるサキがジーと見てたのでグミの袋を見せたら、コクコクと頷いた。仕方がなく袋をサキの方に寄越すと、口角を上げて二つ取る。それにヒカルは驚いた様子を見せた。


「いいや堂々とでもよくない!これはな、日本人として、決着を決めないもいけない大問題だ!まずキノコの素晴らしさを挙げるぞ。ひとーつ!チョコがタケノコに比べてタップリ!」

トワは聞かれてもないのに、勝手に語り始める。


「チョコたっぷりだって?こっちにはサクサクのクッキーが味わえるんだぞ?そんなんで勝てると思ったのか?」

勝ちを確信したかのように煽りだす傘都。


「そもそも、キノコタケノコ論争に決着なんてつかないでしょうに。」

モキュモキュと硬いグミを噛むサキ。


「それでも!男には、やらなきゃいけないときがあるんだ!」

トワがサキに向かって言う。


「そうだそうだ!」

敵だった傘都もそれを便乗する。トワは一瞬戸惑ったが、非難を続けた。


「すごく下らないですね。」

呆れて素直に言葉が出る。


「「なんだと!」」

その声を聞き、とある人物が扉からひょこっと顔を出した。


「な、何をしてるの?」

とある人物とは、太郎だった。それを見た瞬間、ヒカルとトワ、傘都の顔が少し驚いたような感じがした。


「「「太郎!」」」

そう言われて、少し心に来たのか、顔を歪めた。


「そ、そんな大声で………。」


「太郎の何処が悪いんだよ?いい名前じゃないか?」

トワは言う


「そ、そう言われたら何も言えないけどあさぁ……。」

肩を落とす太郎。


「まぁ、それはいいとして、久しぶりに会った気がするな。太郎。」

太郎はそう言ってきたトワに、気を取り直して、表情を変える。


「そうだね。とは言っても、たかだか数日だよ?」


「色々濃かったんだよ。最近は。」

頭の中で発電所の事や、避難所の事を思い出す。


「悪魔が出てから、すべて濃かった様な気がするんだけど………?」


「まぁ、それはそうだが、気にするな。」


「えぇ?」

太郎は困惑した声が、教室に残った。





ふぁさり、電気の消えた教室から、そんな音がする。

隣で寝ている傘都やユキを起こさぬように静かに布団をどかす。そうして立ち上がり、教室を出る。明かり一つない廊下、町にも明かりがないせいか、星がいつもよりきれいに見える。


カツカツカツと音を立てて歩く。廊下を歩き、トワは屋上の扉を開けた。


「………涼しいな。」

春の夜風にあたるトワ。風が頬を撫で、去っていく。


―ちょっくら避難所にでも行ってくるかな。

トワはそう思案し、すぐに行動に移す。


―あの避難所、絶対に何かある。じゃなきゃあんなに悪魔が発生するわけがない。

歩きながら真面目な顔をする。再び教室に戻り、ナイフを持ち、服をいつもの制服に着替える。


―夜風にあたるのも、特別感があるよな。

下駄箱へと足を進めるトワ。保健室や職員室には明かりがあるが、それ以外はついていない。そうして下駄箱に辿り着き、上履きを脱いで靴を履く。


星が瞬く夜へと一歩踏み出し、裏口へと向かう。二メートルある裏口の門をひとっ跳びで乗り越えた。トワの足は避難所に向けて走り出していた。ビュンビュンと体で風を切り、ジャンプをして屋根に乗って走る。そうやって屋根伝いで移動していたら、すぐに避難所が見えてきた。


―遠目からでも分かるが、活気がないな。まぁ、人がいなくなったんだし、当然か。

トワはさらにスピードを上げる。そうして避難所に到着した。周りを軽く見るが、特に何も見つからない。


―明かり一つ無いな。明かりは、スマホでいいか。

トワはポケットからスマホを出し、ライトをつける。

いとも容易く壊された扉を潜り、避難所の中を歩いていく。トコトコトコと、トワの足音だけが周りに木霊する。


―こりゃひどいな。物が散らかりすぎてる。まぁ、非常事態だし、仕方がないけど。だけど、あまりにも歩きにくい。

トワは順に扉を空け、部屋へとはいる。


―しっかし、何もないな。じゃあ、本当にあの避難所の時の悪魔の軍勢は何だったんだ?

そう考えながら、最後に"所長室"と手書きで書かれた紙が上に貼ってある扉に手をかけ、開ける。しかし、何もなかった。トワは諦めて帰ろうとしたその時、もう一つ扉があることに気が付いた。


―あれは?

どうせ何もないと分かっていながら、興味本位で近づく。そうして、恐る恐るドアノブを握り、捻る。中は埃が少し舞っていた。そっとスマホのライトを部屋に当てる。


周りを見て、何もないと思いつつ、それでもライトで照らす。すると、ソファで何かがある事に気が付いた。夜だから恐怖もあり、心拍数が上がる。手の震えを抑えながらそちらにライトを向けた。そこには、眠っている少女の姿があった。


―この子は、誰だ?

そこでトワは迷う。どう考えても怪しい少女を学園に連れて行くか、それともここに置いていくか。


―どうする?………いや、連れて行こう。何か知ってるかもしれない。

そう決断し、少女のうえに被せてあった毛布を退ける。


―まんま女の子だな。人、なのか?

疑いながらも少女を軽く見た。


―ごめんよ。セクハラにならないよな?

手を少女とソファの隙間に入り込ませ、そのまま持ち上げ、お姫様抱っこ状態になる。するとトワはこれまで来た道を引き返し、歩く。少女は死んだように眠っている。


―本当にこの子は何者なんだ?何故避難所で眠っていた?何故傷一つない?………駄目だな。疑問がありすぎて解決できない。

トワは少女を見ながら顔を暗くした。しかし、出入り口の扉へ向かう足は止めない。そんなふうに考えていると、いつの間にか扉まで来ていて、数分ぶりの夜空を見上げた。


トワは学園の方向を見て、お姫様抱っこのまま、できるだけ縦揺れを起こさぬように段々と加速する。再び三メートルを超える大ジャンプをして、屋根に着地した。そうして再び走り出す。星空には、新月が浮かんでいた。





カツカツカツカツ、廊下には間隔の短い足音が響く。保健室でマイクラをしているナオは、特に気にもとめてなかったが、段々と足音が近づいてくる。それに一度メニューを開いて目線を扉へ向けた。その瞬間、ガラガラと扉が音を立てて開き、そこからトワとお姫様抱っこされている少女が入ってきた。


「すいません、ナオ先生。この人?を診てくれませんか?」

トワはナオに向かって言う。それに驚きながらもいつも通りの様子で答える。


「………分かったよ、だから、ひとまずその子をベッドに置きな。」

ナオは椅子から立ち上がり、軽くベッドのほうへ誘導する。トワもそれについていき、少女をベッドで寝かせる。それを確認したナオはベッドの周りをカーテンで覆った。ナオは再び椅子まで歩き、座る。


「それで?もう学生は寝てる時間じゃないのかい?」

座ったまま足を組み、気怠げに訊く。


「………い、いや〜〜。それは、まぁ置いときましょうよ。」

言葉に詰まり、冷や汗を出して何とか話を逸らそうとする。ナオは面倒くさかったのかそれ以上訊きはしなかった。


「それで?この子は誰?」

寝ている少女の方を軽く向き、トワの目を見る。


「それが、分かりません……。」

少し申し訳なさそうにした。


「分からないって、どういうこと?」

純粋に疑問を抱く。


「俺がとある事情で避難所に行った時、所長室という場所にいたんです。でも、なぜそこにいるのか、何故寝てるのか、すべてが分からないままなんですよ。」

若干事実と異なることを言いながら、説明する。


―事情なんてないでしょ。

心ではそう思っていたが、口には出さなかった。


「待って、君今避難所って言ったかい?」

トワの言葉が頭に反芻し、焦っていつものポーカーフェイスが崩れる。


「えぇ、言いました。」

トワは言う。


「………とんでもないものを持ってきたね、君。」

頭を抱え、項垂れる。


「分かってますよ。でも、ほっとくことができなくて………。」


「流石に人?だから捨ててきなさいなんて言えないけど、それでも絶対やばい秘密あるでしょ。あの子。」

ため息をついて、椅子の背もたれに寄りかかる。


「す、すいません………。」

トワは申し訳なさそうな顔をした。


「まぁいいよ。もう遅いだろうし。だから君は寝てきな。」

トワに向けていた椅子の正面をパソコンに戻し、メニュー画面からプレイ画面へ切り替える。


「い、いいんですか?」

恐る恐る訊く。


「別にいいよ。してしまったことは変えられないからね。次気をつけな。」

そう言いながらもトワの方へは向かず、画面に釘付けになっていた。


「ありがとうございます。」

少し安堵しながら緊張を解く。そのまま歩いて保健室を出て扉を閉める。そうして、トワは教室へと向かった。


後日起きたトワは、学園長含め、先生達からの説教を食らった。


これから、一度投稿したら一週間以内で次話が投稿できると思います。これまでもそうでしたけど。でも、夜の9時投稿は変わりません。

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