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エターナル  作者: かさは
ヤクザ編
33/39

第三十話 避難

「おい、早く逃げろ!死ぬぞ!」

避難所にいる男性が声を荒げる。それを聞いた避難者達は一斉に非常用出口へと一直線へ向かう。


今の避難所は阿鼻叫喚の地獄だった。小さい子どもは泣き叫び、大人たちはそんな子供を踏み台にしてでも出口へ向かう。


当然、非常用出口は大きく作られておらず小さいため、混乱が起こるのは必然だった。


「待って!美夢、美夢はどこ!」

一人の女性が子供の名前を叫ぶ。これまで来た所まで戻ろうとしたが、人の流れに押されて探せない。


「お母さーん!」

美夢と呼ばれた小学校中学年くらいの少女は必死になる。


しかし、その声はほかの人の声に紛れ、母親には届かない。ペタ、ペタと裸足でしか聞かない足音が聞こえてくる。


それが気になり、ふと女の子は後ろを振り返る。

すると、雑魚悪魔がすぐそこまで迫っていた。


「に、逃げなきゃ…………。」

美夢は恐怖でその場から去ろうとする。しかし、目の前に人が多くいるのと、何者かの落とし物のせいで転んでしまう。その拍子に美夢は膝を擦りむいてしまった。


「い、痛い………。」

美夢は体を起こそうとする。しかし、痛みと恐怖で身体が思うように動かない。


「う、動いて……。お願いだよ……。」

美夢は足を必死になって動かそうとする。だが、動かない。美夢の身体は恐怖により身体中の力が抜けてしまっていた。


振り返ってはいけないと分かっていても、振り返ってしまう美夢。すると、美夢と雑魚悪魔との距離は既に三メートルを切っていた。


ジワジワと距離が詰められていく。それによって、美夢の鼓動は段々と速くなっていく。それと同時に過呼吸にもなる。


―こ、怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

美夢の思考は一瞬にして恐怖で支配される。


悪魔との距離は一メートルまでに縮んでいた。そして、悪魔と美夢の距離は目と鼻の距離になる。


―あ。

美夢はそれだけを思う。目は閉じられない。雑魚悪魔が手を上げた。そして、その手が振り下ろされる。


一瞬の出来事だが、まるで永遠と感じられる様な感覚に陥った。目の前に手が迫っているが抵抗はできない。美夢が諦めたその時、目の前からいきなり雑魚悪魔がいなくなり、左からガシャンと音がなった。


「え?」

美夢は呆気ない声を出す。何が何だか分からない。

目の前には砂埃が舞っていた。


「ギリッギリだな……。」

美夢の目の前から男の人の声がした。次第に砂埃は消えていく。そして完全になくなった時に、その男の人の姿が見えた。男の人というより、少年と言うべきか。


「そこの君、大丈夫かい?」

少年は美夢へ振り返った。その少年はトワだった。

しかし、美夢はトワのことは当然知らない。


「あ、ありがとう………。」

美夢は頭が真っ白になりながらも言葉を絞り出す。


「気にしないでいいよ。それより、怪我はないかい?」

トワは美夢に対してそう語りかける。トワが少し美夢を見ると、膝に擦り傷ができている。


「しまったなぁ。絆創膏も何も持ってねぇ……。」

トワは自分の体を触って確かめるが、何もない。


「だ、大丈夫、です。」

美夢は立とうとする。


「大丈夫ではないだろうに。」

トワはそれを静止する。美夢はトワの後ろが視界にはいる。


「あ、悪魔が!」

美夢はトワのすぐ後ろまで六体の雑魚悪魔がいることを伝える。


「大丈夫だ。」

トワはひどく優しい声で美夢を安心させようとした。

一体目の雑魚悪魔がトワに攻撃を仕掛けようとする。


しかし、トワは目にも止まらない速さで雑魚悪魔の心臓を一突きする。それに続けて二体目から六体目までナイフを振って殺す。


「す、凄い……。」

美夢はその芸当に驚きが隠せない。トワはただ、悪魔を倒してるだけだが、美夢からしたら、それは御業にも見えた。


「少し周りに雑魚が多いな………。先に殺っとくか。」

トワは美夢に聞こえないくらいの声量で呟く。


「ねぇ君、ちょっとあそこの安全な場所に居といてくれないかい?」

トワは美夢を見ながら言う。


「は、はい。」

美夢は近くにある隠れれる場所に移動した。


「助かるよ。」

トワは美夢には見えないが、小さく微笑んだ。

そして、トワは周りにいる雑魚悪魔をひたすら狩る。五分経っただろうか、周りには前よりも雑魚悪魔の数が少なくなっていた。


しかし、何故かその数は少ししか変わらない。


―雑魚が、増えている?

そう憶測を立て、トワはすぐさま雑魚悪魔の殲滅ではなく、周りの避難誘導に思考を切り替えた。そうと決まれば行動に移す。トワはちらっと後ろを見て避難状況を確認する。幸いにも、数は少なくなっていた。


「君、悪いけど、出てきてくれるかい?」

トワは近づいてくる雑魚達を殺しながら少し申し訳なさそうに言う。


「わ、分かりました。」

美夢はそう言って顔を出す。しかし、周りには先ほどまでよりは少なくはなったが、それでも数がいる。


「…………。」

美夢はどうしてもトワの言葉が信じられず、出るのを躊躇う。


「信じられないとは思うけど、俺が守るから大丈夫だよ。」

トワは精一杯の優しい声で語りかける。


「………、!」

美夢はその言葉に戸惑いながらもその場所から出た。

すると、すぐさまトワが美夢の近くに寄る。それに少し安堵を感じる美夢。


「ありがとう。」

トワは周りの悪魔を蹴散らしながら言う。


「悪いけど、非常用出口まで案内してくれないかな?」

トワはちらっと美夢に振り返る。


「は、はい!」

美夢は返事をするとすぐに出口へ向かう。トワも雑魚悪魔を倒しながらついていく。出口自体は近くにあったので、すぐに着いた。そこでトワは、あるものを見た。


「は?どうなってんだ、これ……。」

トワが見たものは、出口があるのにも関わらず、避難者達が出ようとしない現象だった。避難者達の顔は、不安と恐怖で歪んでいた。それを見た美夢も、何が起きているか分からず、立ち尽くしていた。そこでトワは気づいた。


―違う。出ないんじゃなくて、"出られない"んだ……!

トワは瞬時に思考し、今いる場所から軽く外を見る。そこには、中と比較にならないほどの悪魔がいた。


―そういうことか………。

トワがすぐに結論付けると、美夢に顔を向ける。

トワが言おうとしたその時、女性の声が避難所に響き渡った。


「美夢……!美夢!」

その声の人は、驚きのあまり語彙が消滅していた。


「お母、さん………?」

美夢は目を見開く。美夢が言い終わった後、美夢のお母さんらしき人は美夢に勢いよく抱きついた。


「ごめん……、本当に、ごめんなさい…!」

その女性は顔を歪めながら涙を流す。


「大丈夫だよ。お母さんのせいじゃないよ………!」

美夢は母親の涙に少しつられながらも母親を慰める。

トワはそれを少し離れた場所から見ている。数分経ち、美夢とその母親は互いに離れた。そこで、美夢の母親がトワを見る。


「それで、アナタは………?」

美夢の母は警戒の心を見せながら訊く。


「お母さん、この人が私を助けてくれたんだよ。」

美夢は感情を少し出しながら母親に弁明する。


「そうなの!すいません、ご無礼を………。」

美夢の母は焦った表情になり、すぐに頭を下げた。


「大丈夫ですよ。気にしないでください。」

トワは困り顔で言う。そんな事をしていると、雑魚悪魔達が壁をどんどんと叩いてきた。それに避難者達の顔が更に不安で歪む。外では五人の男達が雑種悪魔の攻撃を防ぐばかりで攻撃できずにいた。


―そうだ、こんな事をしている場合じゃない………!

やるべきことを思い出し、真剣な表情になる。それを、美夢は見ていた。


「ごめん、君。他の人に、ここに簡易的なバリケード作っておいてって言ってくれないかい?………お母さんも、お願いします。」

トワは言う。


「分かりました………!」

美夢の母も真剣な表情になる。


「わ、分かりました!」

美夢がそう言ったのを聞いたトワはすぐに来た道を急いで戻ろうとする。しかし、それを美夢が止めた。


「な、名前は何ですか!」

精一杯叫ぶようにトワに訊く。一瞬呆気に取られたが、すぐに返した。


「笠上トワだよ。君の名前は?」

微笑を浮かべ、訊き返す。


「わ、私は、中村美夢(なかむら みゆ)………!」

美夢は頬を赤らめる。


「いい名前だ。」

トワは美夢に背中を見せて言う。それに、美夢の顔は紅潮した。そのままトワは振り返らず、急いでその場を離れた。


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