第二十四話 解決策
「と、いうわけです。」
学園長室のソファに座っているトワがそう語る。
「成る程、自分達の戦力では足りないという訳ですか。ありがとう、トワ君、菅野さん。」
そう言うのは学園長。
「いや、問題ない。」
菅野がそう返す。
「ですが、どうしましょうか?戦力差がここまであると、流石に気合でどうにかなる問題でもありませんし…………。」
学園長は腕を組み、懸念点を口にする。
「…………一番に思いつくのは協力を仰ぐ事だが、それができる奴がここら辺には居ないからな。」
菅野も腕を組んで解決策を見つけるため、思案していた。
「しかし、自分たちとて電気を失うのはかなりの痛手ですよ。どうにかして解決方法を見つけなければ…………。」
学園長は頭を悩ませる。
「それで見つかりゃ困ってないんだけどな…………。
菅野はそう軽口を叩きながらも思考は解決策の提示で埋まっていた。トワも必死に考えていると学園長から言葉がとんできた。
「あぁ、トワ君はゆっくりしてていいよ。」
「な、どうして?」
まさかの言葉に一瞬時が止まるトワ。しかし、学園長は続けて言う。
「これまで君に頼りすぎた。だから休んでほしいんだ。」
学園長はトワに向けて優しい笑顔で語りかけた。
それに便乗して菅野も言う。
「そうだそうだ、ガキは休んどけ。大人に任せろ。」
「学園長、菅野さん……………………。」
トワは一瞬だけ考えて返答を口にする。
「…………分かりました、では。」
トワがそう言うと学園長室の扉まで近づいてドアノブに手をかける。そして捻り、引く。2人はトワが部屋を出たことを確認した。
「…………ガキは笑ってりゃ良いのにな。」
菅野は零す。
「…………本当に、そうですね。」
学園長もそれに反応する。
「まぁ、そうもいかねぇのが今だがな。」
菅野はつい先程の学園に至る道での出来事を思い出す。
「…………複雑なものですね。」
学園長は顔を少し沈め、続けて言う。
「我々大人が子供を頼ってしまっている。…………本来は、逆のはずなのに。」
拳を固くする。
「まぁ、またこんな事言ったらトワ君に鬱陶しがられてしまいますけどね。」
学園長は机にあるコーヒーカップを手にして飲む。
「確かに、あのガキはそういうの苦手そうだ。」
菅野もコーヒーを飲む。
「本当に、自分が情けなくなってくる…………。」
学園長は歯を食いしばってさらに下を向く。その言葉に思うことがあるのか、菅野が言う。
「別にそうでもねぇんじゃねぇか?」
「え?」
学園長はそれに驚く。
「だってよ、大半の連中が保身に走ってるのにアンタはちゃんとほかの奴のこと考えられてるんだぜ?」
菅野は思ったことを口にする。
「…………。」
その言葉に少しだけ自信が湧いてきた学園長。
「それに比べりゃアンタはすげぇよ。少しは自分を褒めろ。壊れるぞ。」
真面目なトーンでそんな事を言う菅野。その間無言が続き、気まずくなる二人。それに耐えかねて菅野が言う。
「ひとまず、解決策考えてみねぇか?」
「…………そう、ですね。」
そうして、そんな空気感の中話し始める。問題解決のため、必死に思案する。
―成る程、組長の言ってたことが分かった。こいつは、何かしら抱えてるタイプだな。
心の片隅でそんな事を思いながらも言葉には出さない。
◆
トワは教室へとたどり着くために、一人で廊下を歩いている。そこでふとトワは思った。
―傘都に、菅野さんにかなり救われたな。多分、助けてくれなければ、俺はもっと精神状態が危うかっただろうな。
思春期真っ只中なので恥ずかしさはありつつもとある事を決意する。
―傘都にありがとうを伝えるか。でも、あいつ茶化しそうなんだよな…………。
そんな事を考えていると自然と顔に笑みが戻る。
そうして廊下を進んでいくと気づいたら教室の前までついていた。
―考えすぎたか。
そう思いながらトワは扉を開ける。因みに、教室は悪魔が復活したときから既に寝室となっている。
―眠い。
トワはそう思い、自分の布団にダイブする。
―疲れたな。
だんだんと目蓋が重くなっていく。睡魔のせいで身体に力がはいらなくなり、余計な思考すらなくなる。
数秒して、トワからは、すぅすぅと寝息が聞こえてきた。
「なぁ、そうだよな。そんでよ、そんときトワのやつが…………。」
「え〜?そんなことが…………。」
トワが眠り、四時間が過ぎる。そこに現れたのは傘都とユキだった。傘都は、トワの姿が見えたとき、いたずらをしようと近づいた。
しかし、トワの疲れ切ったような顔を見る。
「…………。」
すると、傘都は黙ってトワに布団をかけた。
そして、傘都は自分の布団に座った。傘都の布団はトワの左隣である。
「トワくん……………。」
ユキは顔を下に俯かせ、悔しそうにしながらトワに近づく。トワの布団の右隣にある自分の布団との境目あたりで座り、右頬を触る。
「ごめん………私、何もできないから…………。」
「それなら俺だってそうだ。皆同じさ。」
傘都はユキの言った言葉に対して反論する。
「傘都くん…………。」
「私さ、役に立ちたいんだ。」
ユキは語り出す。
「…………。」
傘都は黙って聞いている。
「でも、それは理想論で…………。実際は、お荷物になってる…………。」
ユキはひと区切りといて言う。
「それでもって、何もできない。悔しいんだ、私。」
ユキはトワの右頬を触っている手を膝に戻して手を強く握る。
「ユキ…………。」
傘都は何も言うことができない。そんなふうに無言になっていると、近くからうぅん?と声がした。
「あ、お前ら、何でここに?」
そうしてトワは体を起こす。
「な、なんでってなぁ。ここ教室だろ…………。」
トワの気の抜けた言葉で傘都は困惑する。
「…………そうじゃん。」
寝ぼけていたのか数秒考え、目が覚める。
「…………ど、どうしたんだ?」
トワは恐る恐る疑問を口にする。
「何でもない。」
そう言ってユキは立ち上がろうとする
しかし、それをトワが止める。
「待てよ、ユキ。」
トワが何も考えずユキを制止する。
「……何?」
ユキはトワに顔を見せない。
「いや、もうそろそろ飯の時間だろ?一緒に食おうと思ってさ。」
トワは慌てて必死に理由を絞り出す。
「…………ありがと。」
トワの言いたいことを理解したユキは顔に微笑を浮かべて再び座る。
「い、いや、別に。」
ユキの言葉に驚くトワ。
「別にただ、離れてほしくなかっただけだ。」
本心が出てしまい、遅れて気づくトワ。それと同時にトワは視線をそらした。
「……い、いや、何でもない!」
数秒して気がついたのか慌てて手で顔を隠すトワ。ユキはまさかの言葉に頭がオーバーヒートする。
「え?えぁ、え?」
するとユキの顔がだんだんと赤くなっていく。
「い、今のは忘れてくれ!」
トワの顔も赤くなる。あまりにも急すぎたのか、ユキの頭から蒸気がわいていて、ボンッ!と爆破したような幻覚に襲われた。それの様子を無表情で眺める傘都。
―まただよ。またこいつらしてるよ……。
傘都は内心呆れていた。こんなことが前にも何度会ったせいか、こういうときは黙って見てるというお決まりのパターンさえ、できていた。
―だが、いつもと違うな。
傘都がこれまで見ていたものとは少し違うものだった。いつもは、トワが無自覚の発言をしてユキが照れるといったものだが、今回はふと零れてしまったような感じだった。
そんなふうにわちゃわちゃしていると退屈してくるもので、十分程度経過し、しびれを切らして傘都は言う。
「イチャイチャはそこまでにしろ。飯なんだろ?早く行かなきゃじゃねぇか。」
そこでトワとユキの二人は体が固まる。
「「イチャイチャしてない!!」」
二人は赤面しながら傘都に詰め寄る。
「分かったから落ち着けって。」
それを簡単にいなす傘都。これまでの経験で対処法は分かっているようだ。それによって頭を冷やした二人。それからしばらくしたときのことである。
トワはふと思い出す。
「なぁ、そういえばさ、傘都って避難所いたよな?」
「いきなり真面目な話題になるなぁ……。まぁ、そうだな。居たな。」
困惑しながらも傘都はそれを肯定する。
「その避難所ってどれくらい戦えるやつがいたんだ?」
トワは確認するかのように訊く。
「そうだな、割りかし多かった記憶があるから、多く見積もっても100人じゃないか?」
傘都の言葉に驚くトワ。
「あぁ、とは言っても俺達ほど戦えるわけではないけどな。でもまぁ、雑魚悪魔程度なら一人はやれるんじゃないか?」
「…………いや、それでいい。」
トワは小さく呟く。
「?、なんか言ったか?」
傘都は言う。
「いや?何でも?」
トワはそう言って立ち上がる。
「俺は用があるから先に行っといてくれ。」
トワはそう言いながら教室の扉へと向かう。
「分かった。早めに来いよ。」
傘都はトワの背中を見る。
「戻ってきてね。」
遅れてユキが言う。
「当然。」
そう言ってトワは教室を出る。傘都とユキには上履きの音が耳にはいる。そうしてトワは学園長室へと向かうのだった。
早めにかけました。やったね。




