春の歌
救助されてから9ヶ月。
雪も溶けて暖かくなってきた今日この頃。
この世界にもだいぶ慣れてきた。
今の現状を整理してみよう。
身体はまずここ3ヶ月はひたすら腕立て、スクワット、懸垂などの筋肉トレーニングをしてきたおかげで目に見えて筋肉が成長しているのを感じる。やり込めばやりこんだ分だけ筋肉痛になるし、ちょっと胸筋が発達してきたような…といってもまだまだ誤差程度なので身体はこれからかな。
ルーブに認めてもらうレベルの基礎体力や基礎筋力にはまだまだ届かないが、それはまだまだ成長の余地アリって事でポジティブに捉えよう。実際にどれくらい筋肉をつければ稽古をつけてもらえるのかの基準を教えてもらってないけど…
魔力総量は1.5倍から2倍くらい増えて魔力制御も上手くなってきたのか魔術発動の際に使用する魔力の量も少なく済んでいる。毎日魔力がすっからかんになるまで特訓してきたおかげで、少ない魔力で魔術を発動できて、魔力総量も約2倍まで増えて、体内の魔力を常に圧縮している事で魔術の出力も上がっているわけだ。
以前集落の帰り道にステューに絡んできた金髪長髪野郎と茶髪短髪野郎と戦った時は
魔力総量16くらいで
トリモチ圧縮弾1発:消費魔力10
閃光弾1発:消費魔力4
身体強化魔法1時間:消費魔力2(体の表面のみ)
現在は
魔力総量30くらい
トリモチ圧縮弾1発:消費魔力5
閃光弾1発:消費魔力2
身体強化魔法1時間:消費魔力2(骨、筋繊維、関節、皮膚など身体の中身から強化)
自分がどの程度成長しているのか分かりやすくする為に数値にして考えてみた。あくまでこの数値は自分の感覚として算出したものだから正確性には欠けるかもしれないけど、無いよりはまっしだろ。魔力総量はだいたい倍くらいに増えた。まぁ増えたといっても体内の魔力を圧縮した結果、濃い魔力が1.5倍くらい増えて魔力制御も上手くなってきて実質は元の2倍くらい魔力を使えるようになった、の方が正しいかもな。
トリモチ圧縮弾は1発の効果範囲が上がった上に消費魔力が半分くらいまで抑えることができる。多分体内の魔力を常に圧縮してるから、圧縮するのに慣れてきたのが原因だろう。
閃光弾もトリモチ圧縮弾と似たような理由で発動にかかる消費魔力が半分くらいで済んでる。
新しい魔術とかより身体強化魔法が1番実用的で優先度が高いと思ったから筋トレも兼ねて1番力入れて特訓したのが身体強化魔法。やっぱり基礎だな。
前にも説明した通り、身体強化魔法は体の表面だけじゃなく、筋繊維の1本1本から骨から関節、皮膚まで身体強化魔法をかけるやり方で、この魔法が戦闘面では必須のスキルやと思ったから優先してる。まだまだ上手いこと運用出来てないから改善の余地もまだまだある。
個人的に身体強化魔法と強化魔法の違い。
強化魔法 → 表面に魔力のオーラで包んで保護や強化。面での強化。消費魔力は小。武具にも可。
身体強化魔法 → 体の内部の組織をそれぞれ強化して相乗的に効果を上げる。立体での強化。消費魔力は大。身体以外は不可。
主によく使う魔術はこれくらい。他にもちょっと火を出したりお湯を生成させたりは出来るけど今は新しい魔術より身体強化魔法を駆使して肉体作りが最優先かなって感じかな!
そして次にこの世界の情報についてやけど、魔物がいて魔法が使えるこの世界は地球じゃない事くらいしか分かってない。だからステューとルーブが住んでいるここがなんて言う国なのか、教えてくれた事あったんだろうけど忘れちまった…それによく行く集落の名前も知らないレベル…
元の世界の情報は今のところ皆無だし、まだまだ知らない単語や言葉はあるし、発音もぎこちないけど特に不便なく会話は出来るレベルまでは上達した。日本にいた頃は7.8年も英語を勉強してきたのに一切喋れなかったのになぁ…
まぁ現状はこんな感じだ。
今日は朝から1人でジャングルに来ている。
ぶっちゃけ今使える魔術の中に攻撃に特化した魔法が無いので新しい魔術を考案しようと言うわけだ!
トリモチ圧縮弾も閃光弾も牽制用の魔術だし、身体強化魔法で殴る蹴るくらいしか出来ることがない。
色々考えた結果、
石礫を生成して飛ばして攻撃する。ストーンバレット見たいな感じ!消費魔力も少なくて済みそうだし威力もヤバそう!
あとは火魔法を圧縮して飛ばすとか?爆弾みたいになるんかな?試してみたいけど爆発してジャングルが山火事になったらヤバいしなぁ…
後は…右手を具現化できるようになって来たし、応用として武器とか具現化できないかな!?
ちょうどゴブリン3体を見つけたので試してみることにした。まずはストーンバレット。名前のまんま石を生成して弾丸を発射させる。
先端が尖っている氷柱をイメージを石で生成させる。そして魔力を圧縮する技術を応用して、生成させた石の後方から圧縮した魔力を前方向に飛ばしてその推進力のエネルギーで飛ばす感じ。
まだゴブリンはこちらに気付いてないな!しめしめ笑
先制攻撃は頂きますか!意気揚々とストーンバレットを放ったが生成させた石が砕け散ってしまった。
圧縮したエネルギーが強すぎたのか、それとも生成させた石の耐久値が弱すぎたのか、今は考えてる時ではない。
砕け散ってしまった生成させた石の破片がゴブリンに降り注いで大したダメージになっていない上に、こちらの存在に気が付かれてしまった。
相変わらずバカみたいに突っ込んでくる緑の醜い生き物ゴブリン。呼吸を整えてとりあえず閃光弾を生成させながら自分もゴブリンに突っ込んでいく。
先頭の特攻ゴブリンまで距離にして5.6メートルで閃光弾をゴブリンに飛ばして閃光弾炸裂の瞬間と共に目を瞑る。
目を瞑ると同時に剣をもった右手を具現化させて、閃光弾が炸裂したと同時に目を開けて、視界を奪われてのたうち回っているゴブリンの頭にホームランを打つかのようなフォームで振り抜いた。
スパッといくのかと思ったら「ゴンッ」って鈍い音がして全然切れてなかった。具現化する時に剣の切れ味まで意識できてなかったのが原因っぽい。
鈍器のような剣で残りの2匹の頭もかち割っておいた。
「ふぅーーー。」
とりあえず一息ついた。色々反省点はあるものの結果は上々。さらに技を洗練させれば可能性はさらに広がりそう。
まぁ反省会は後にして、ゴブリンは本当に臭いし血の匂いで他の魔物も寄ってくるからとりあえず帰ることにする。
帰ってきて早速物に強化魔法を付与する特訓をすることにした。ストーンバレットには可能性とロマンを感じてるので是非自分の技にしたい。ということで、先ほどゴブリンと戦った時は、押し出すエネルギーが強過ぎたのか、押し出すストーンが脆過ぎたのか、はたまた両方か。
とりあえず飛ばすストーンの強化魔法を付与するところから初めて見る。
木にダーツの的のような模様を書いて、10mほど下がって1発ずつ狙ってみる。
先が尖っている円錐形を自分の手と同じくらいの15cmほどに生成したストーンに強化魔法を付与して、後ろから圧縮した魔力を爆ぜさせて、そのエネルギーで前方に飛ばす。
今度は生成したストーンは砕ける事なく前方に飛んだのはいいのだが、的とは全然違う方向に縦に回転しながら飛んでいってしまった。
自分の想定では真っ直ぐ飛んで貫通するイメージだったのに、縦に回転してしまっては、円錐形の先端を尖らせてる意味が無くなってしまう。
弾丸のように真っ直ぐ貫くように飛ばすには、やはり圧縮させた魔力を爆ぜさせる時に飛ばしたい方向にだけ爆ぜたエネルギーが逃げれる構造にしなければならないようだ。
まぁ拳銃の構造がそれだもんなぁ…
ストーンバレットは”今は”まだ無理そうだ。
そろそろ日も落ちてきて薄暗くなってきた頃遠くでステューが呼ぶ声が聞こえた。
「葵〜!ご飯の準備手伝って欲しいの〜!」
「今行くー!」
そう大声で返答して今日の特訓は終わりにした。さすがステューちょうど魔力が切れる頃を見計らって声かけてくれたのかな??さすがステュー!
「最近は葵がよく狩ってきてくれるから今年の冬は豪華な献立だな。」
夕食もできてみんな席に着き、唐突にルーブが話し出した。
「冬のジャングルで狩るのは基礎体力が無いと出来ないからな、そろそろ体力もついてきたし稽古をつけてやろう!」
「え!やったー!ありがとうルーブ!期待に応えてみせるよ!」
「はっはっは!それは頼もしいな!ガンガンシゴクから覚悟しとけよ!」
「お手柔らかにお願いします…」
「ふふふ!夕食が冷めちゃうからそろそろ食べるの!」
「そうだな!ではみんな祈りを。命の糧と女神様に感謝を。」
「命の糧と女神様に感謝を。」
「命の糧と女神様に感謝を。」
ルーブに続きにステューと一緒に食前の挨拶を済ませる。
個人的にはいただきますの方が短くて性に合ってるけど、まぁ郷に入っては郷に従えって言うしな。
でもこんな日常に自分は今とても幸せを感じている。