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転禍為福  作者: 瘋癲
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命の恩人

痛い。痛すぎる。右手がとても鋭くそして焼けるような電気が走るような痛み。


あまりの激痛で目が覚めた気がする。あーしんどい辛い苦しい感覚が襲ってきた。だるいここどこだっけ…目を開けるのはどうするんだっけ…えーっと…とりあえず痛い。まずは呼吸か。深呼吸しろ深呼吸。あの時、切断された時の痛みは覚えている。文字通り切断面に激痛…なんて言葉では表せられないくらい熱く冷たい痛覚が切られた切断面にかけて感じた。しかし今は別の感じで痛む。無いはずの右手全体が痛む。

これが噂の幻肢痛か…

あーやべぇまだ右手はついてるかのように感覚は鋭いのにめちゃくちゃ痛い、全体的に鈍く痛む上に中指と親指に掌がピンポイントで鋭い痛みが続いてる。

どのくらい寝てたのか分からないけどおそらく半日から1日くらいだと思う。このギリギリ生きている状況で何日も下流に流されたとは考えずらいし…


身体中が痛くてだるい。息をするのがやっとの状態で辺りを目だけで見渡す。起き上がりたいが体が動かない。


部屋の中の木のシャッターって言うか扉みたいなの隙間からうっすら朝日が入ってくる。この家はカーテンすらねーのか?

うっすらとしか明るくなかったので日が明けたばかりの早朝らしい。外からチュンチュンと小鳥が鳴く声が微かに聞こえてくる。生きてるんだな。俺…


もはや体を起こすどころか首すら動かせないくらい身体が怠くてしんどい。


「水…み…ず…」


喉乾いたここがどこで誰かが治療してくれたっぽい事も何も考えられない…ただ辛い…痛い…キツい…苦しい…ああああ痛い痛い痛い痛い…

どうやらまた生き延びたらしい。というか死ぬに死ねない。

天井を見る感じ1番期待していた日本の病院ではないことは分かる。


木製と藁?の知らない天井。知らない簡素な作りの木造の家の簡素なベッドで寝かされているらしい、何回見ても日本の病院ではないことは分かる。こんな簡素な作りの住居日本じゃ見たことない。次に目が覚めた時は病院のベットの上で命ギリギリの所救助されて治療を受けて家に帰れると期待していただけにショックは大きいが叫んだりは出来ない…


まぁ命あるだけでよかったって思ったこう…


文句は言えまい。


これ以上は何も考えられえない。


気を失うように眠りにつく。


しばらくして傷の痛みで再び目が覚める。

かなり眠っていたようだ、いつの間にか窓は開けられていて、かなり日が差し込んでいて明るい。


窓から差し込む光の角度を見て大体の時刻を予想する。

昼過ぎくらいかな?


左手を動かせるくらいは出来るが、それでも体を起こしたり歩き回ったりできそうにない。


確か最後の記憶は川に身を委ねるまでなので、その辺りで意識を失っていたところを誰かが救助して手当てしてくれて自室に寝かせてくれているのか?


まぁ恩人であることに違いはないし…


あの時は他に方法が無かったしどうせ死ぬなら賭けるしかないと思っての消去法だったけど賭けに勝ってよかったよかった。


どうやら病院ではなさそうだが、下流で流れているところを救助して家で介抱してくれたらしい?来ていた服も全て脱がされ右腕には包帯が巻かれている。

包帯に血は滲んでいるものの出血は止まったらしい。よくみたら包帯そのものがくすんだ色をしていてどちらかというと雑巾の方が高い印象を受ける。その雑巾みたいな包帯は自分の血でドス黒く変色している。


腕がある感覚はするのに肘から先が無い。何回見ても短い腕だけ…どうやら夢じゃないようだ。昔、テレビで四肢欠損の人のドキュメンタリーとか見て自分がもしそうなったらって妄想してたっけなー…あの頃はゲームが出来なくなったらとか自転車に乗れなくなったりとかそんなことばっか考えてたっけ…


この不細工な右腕…


命助かったとはいえあまりに受け入れ難いこの事実。腕を失ったと嘆くのか、命に比べれば腕の一本ごときで助かって良かったと考えるかで人生は変わるんだろうな。自分はそんなに強くはなれないよ…


以前の自分なら泣き喚いて鼻水垂らしていただろうが、ここ数日で精神的にも成長したのかも知れない、はたまた泣き叫ぶ体力すら残っていなかっただけか…


日本に帰れても、もうゲームは出来ないかも…

P◯5のコントローラーは握れないわ…バイクにも乗って見たかったのになぁ…まぁ帰れたら帰れた時考えよう…現代の義手は凄いらしいしな。


それよりもベッドの横にろうそくが置いてある。下には木を貼り合わせたような作りのバケツ。

そういえば天井にライトが付いてないし窓にはカーテンではなく木の扉みたいだし見るからに文明のレベルが低いし、ゴブリンやらも加味するとここはやはり異世界なのか…


「ゴホッゴホッ…」

咳をするだけで全身がだるい。


そんなこんな考えていると咳に気付いてか、助けてくれた恩人らしき2人が部屋に入って来た。この家の家主かな?


一番最初に部屋に入ってきたこの家の家主らしき男。おっさんと言った方が良さそうな見た目をしている。

かなりガタイが良くて厚い胸板をしているのは服越しにでも確認できる。

坊主で彫りの深い整った顔立ちをしている。明らかに日本人ではなさそうだ。

「らまはまらたはあらたたらまはまや」

厳つい顔で何か喋りかけてくるが全く聞き取れない何言ってるか理解不能だ。


その次に部屋に入ってきたのは自分より年下の女の子だった。こちらも金髪で目がクッキリ二重のとびきりタイプの女の子!見た感じ中学生くらいかな?まだ幼さを残している。親子なのだろうか?


今ある全ての体力を使ってベットから体を起こそうとするも体に力が入らず仰向けの状態で2人を見つめる。


「あなたたちが助けてくれたんですか?」

そう話しかけようとしたが声を出さない。いや出ない。


そんな状況を2人は静かに黙って見ていた。

そして少し間を置いてからおっさんの方が口を開いた。


「ねvのゔぉvそおvのl」

喋りかけて来たがやっぱり何を言ってるか分からない。聞き取れないどう聞いても日本語じゃないし英語でもなさそう。こんな死にかけで最底辺にいるのに更に絶望するとは思わなかった…マジでどうしよう。


きっと今の自分の顔が希望から絶望へ叩き落とされた様な顔をしているかもしれない…

まぁ前々から薄々異世界じゃないかって思ってたし、外国の可能性も捨てきれないけどあのゴブリンも説明できないしなぁ。


どちらにせよ家には帰れそうに無い。


「ジョン路エアオンゔぉああおゔぉ」

聞いたことのない言語で2人が話しかけてくる。


言語が分からないとなんて言えば伝わるか分からないし、ジェスチャーも思いつかないので日本で話しかけてあなたたちとは言語が違うので話が通じない事をアピールでもすればなんとかなるだろ。


って言うかこの2人は今の自分に喋る体力すら無いのが理解できねーのか?

2人に向かって必死にコップで水を飲む動作をするのが今の精一杯だ。

なんとか理解してくれたっぽくてゆっくりとコップの水を口に注いでくれた。それでまた眠った。


その日の夜かな?目覚めた時は本当に命の危機を感じていたが少しずつ回復している実感はある。カスカスの声だが喋れるようになった。


「ゴホッゴボっ」

あからさまに咳をすると2人が部屋に入ってきた。


「助けてくれてありがとうございます」

とりあえず日本語で感謝を述べてみた。


まぁですよね。二人とも困った顔をしていたので言語が違うことは理解してくれたっぽい。かな?


とりあえず自分を指差して葵!葵!と発音して次におっさんの方を指差す。


ルーブと発音したのでルーブ!と連呼してありがたそうに握手を求めるように手を差し出した。この世界にも握手という概念があって良かった。まぁ今の自分には腕を上げるだけで精一杯で握る力なんか残ってないんだが。


おっさんの名前はルーブと言うらしい。


ルーブのその手を自分は右手を添えるようにして両手で握るように感謝の意を表した。和かな表情を見るとどうやら意図は伝わっているらしい…


同じように横にいた女の子にも指を刺して名前を求める。

女の子はステューというらしい。同じく左手で握手した。


名前くらいならジェスチャーで補えばなんとか会話は出来るけどこれ以上踏み込んだ会話はどうすればいいのか想像もつかない。とりあえず腹減った何か食わないと死ぬ。


次に水を飲む動作と食べる動作をして腹を抑えて飢餓状態である動作をするとすぐに理解してくれたのか、飲み水と粥のような食べ物を出してくれた。


美人な女の子のステューに手伝ってもらって体を起こし、木をくり抜いて作られたコップの水をすぐに飲み干し、同じく気をくり抜いたお皿の粥をゆっくり食べる。


元々自分は右利きだったので、今はぎこちない左手で持った木製のスプーンで口元に粥を運ぶ。


全然味はしないし食感は硬いし味は薄いし正直不味いけど、いつぶりのご飯だ?体に染みる。

不味いとは思ったがそれでもめちゃくちゃ美味い。矛盾しているようだが食べられる事に死ぬほど感謝した。


この日、自分は生まれて初めてご飯を食べれる事に心から感謝し泣いた。


しかし、心配事が更に増えた。目が覚めたのなら出ていけと言われたら詰む。

どうしてこんなに助けてくれるのだろうか。理由はどうあれ今は縋るしかない。


無償の善意も意図が分からないと怖い。タダほど高いものはないのだ。と言っても自分は現在無一文で払える対価も労働力も皆無なのだが…


右手の激痛と故郷を失いどこかも分からない土地で負のオーラを放っていたのが伝わったのか、自分が粥を食べ終わったのをみてステューが自分の右手を優しく両手で包んで何かを言い出した。


自分に何かを言っているわけではなく独り言のようにブツブツと言っている。っと思ったら少しして独り言を言い終わると右手が光で包まれた。

とても暖かく心地よく気分が和らいだ。気のせいか目が覚めた時から激痛を感じていた右手の痛みが完全にではないが治って全身の気怠さや頭痛も軽くなった。スゥッと痛みが引くような感じで。


「これって魔法!?」


「野ゔぉえねおごおえmv」

「年g林sんを」

ステューもルーブもニコニコしながら何かを言っているが相変わらず理解はできないが、表情や声色から察するにもう大丈夫だよ的なことを言っているみたい。確証はないが。


なぜここまでしてくれるのか心配になり、包帯や食事を指さして不思議そうな顔してみたり、何も持っていない風なジェスチャーをして伝えようと試みるが、ステューの苦笑いの反応を見ると伝わってなさそうだ。


ルーブは自分の肩に手を置いて小さく頷いていた。

自分は体全体で感謝を表すためベットから体を起こしベットに座っている状態だが、二人に頭を下げた。


やはりと言うかここは異世界なんだと改めて実感した。魔法という不可思議な現象を目の当たりにして、もしかしたら右手また生やす魔法もあるんじゃね?っと興奮している自分と、もう日本には帰れないのかも知れないという不安といつこの家から追い出されるか分からない不安がせめぎ合っていた。涙は出ない。だが、これからこの世界で生きていかなきゃならない、そう考えると不安で不安で眠れない。そして体が震える。本当にどうしようもなく辛くなったら自殺しよう。まだやれる事はあるしやってみたいこともある。死は救いだよ…


そーいえば瀕死の状態で川にどれくらい流されたのか、そして救助されてどれくらい経つのか分からないけど、体を起こせるくらいに回復してるのは、あの魔法みたいな暖かい光のおかげなのかな?


それから2週間ベッド安静にしながらステューに一つずつ指を刺して物の名前を聞いたり、回復魔法をかけてもらう合間に本を読み聞かせしてもらって必死に言葉を覚えた。生きる為に。この文明では本が貴重なのか書いてる内容が意味不明であまり言語習得の訳には立たなかったけど。なんかちらっと見せてもらったけど魔法陣らしきものが書かれていたように見えたから魔法の書なのかな?


ステューにも自分が必死で言語を習得しようとしているのが伝わり協力的に色々教えてくれるようになった。まだ説明の半分すら理解できていないのが現状だが…とりあえず今は何回も何回も反復して覚えるしかない…学校の勉強と容量は一緒だ。学校の勉強と違うところは習得しないと生きていけないので、学習意欲の本気度がまるで違う。


ゼロから始める異世界言語学習は、まずは必死で単語を覚えた。書くものがないので何回も口に出し復唱して頭に叩き込んだり、地面に枝で書いたり、そうやって単語が覚えてきたら単語を繋げて文を作っていく。水、喉、乾く。トイレ、漏れる。お腹、減る。のように。

まだ未来過去の表現は教えてもらってないが時間の問題だろう。


あとはルーブやステューの会話を聞いて文法も習得していく。


しかし、文法の解説すら理解できないのでひたすら聞いて間違えて修正しての繰り返しでかなり根気がいる。ただ言語の習得具合はどんどん上達して言ってる為か誰かと会話できたからか、不安は少しずつ解消されて言った。意思が伝わるって素晴らしいな。言語って素晴らしい美しい。


そんな感じで2週間安静にして言語の特訓をしていたおかげで体調も回復して1人で歩き回れるまで元気なった。


救助された時は死ぬ寸前まで衰弱していたが歩いたりできるようになってきた。歩けるって素晴らしいなもし右手じゃなくて右脚だったらと思うと怖いな。結果オーライってやつ?いや、結果オーライではないか。不幸中の幸いってやつか。


右手が無くなって左右のバランスが悪くて歩きにくかったり、右手でコップを取ろうとして切断されたことを思い出してあぁもう俺に右手はないんだった…っと胸が苦しくなったり。しかももう右手が無いはずなのに、無いはずの右手がまだ痛む…


歩けるようになりルーブの家の中やその周辺を散策する。

集落や村では無いみたい。自分が遭難していたジャングルの麓の川を跨いだ反対側にポツンと1軒だけ。ルーブの家だ。ジャングルの木々が浅いところを切り開いて、周りに畑やらがあるので自給自足で娘と2人で暮らしているっぽい。本人から聞いたわけじゃないので見た感じの予想だけど。って言うか周りには家一軒も立ってねーし。ルーブは熊みたいに身体がデカくてまさに きこり って感じ。

建物は簡素な作りのように見える。木で骨組みを作り藁と泥を混ぜた土壁に藁の屋根。

家の照明は蝋燭だったし簡素な木の柵なんかを見ると文明レベルが低いみたいやはりここは日本、いや、地球じゃないのかも知れない。


丁度、ルーブの家のすぐ近くに川が流れていた為自分が流れているのを発見できたのだろう…


そういえば制服はボロボロだったのルーブの服のお下がりをもらった少しデカいが文句はない。肌触りもあまり良くないが贅沢は言ってられまい。


ルーブとステューは畑仕事やら狩猟やら色々毎日休み無く朝から働いているみたいだ。

ルーブのあの屈強な体は畑仕事の賜物なのだろうか?

二人が働いているのに自分だけダラダラしているのは申し訳ないと思ってルーブに聞いてみたのだが

「今の葵には休むことが仕事だ。まだ顔色悪いぞ。」

とのこと。


まだ回復しきれていないのをルーブには見透かされているのかも知れないな。

いや、隻腕だとできる仕事が限られるからかも。


次にステューに聞いてみた。

「仕事、ない?やる気、満々!」

と、まだまだ文法にも語彙力にもぎこちないので身振り手振りジェスチャーも加えて聞いてみた。


「服洗うから手伝ってほしいの!」

との事だったので大したことは出来ないが、洗ったら干したりするのを手伝った。もちろん石鹸なんかはないので川の水で手洗いだった。コレで汚れ落ちるのか疑問だったが黙って従った。まだそんなペラペラと喋れるほど上達してないので。


他にも夕方頃には料理の手伝いをしたり、掃除やら調理の下ごしらえやら、片腕でも手伝えることは沢山ある。


こんなにも家事炊事の大変さが身に染みて理解できた。

母さんが毎日1人でこれをこなしてたのか。

家電があるとはいえめちゃくちゃ大変なことなのは今の自分なら容易に想像できた。

今までたったの1回も「手伝おうか?」の一言も言ったことは無かったし、母親が家事炊事するのは当たり前だとすら思っていた自分を心から恥じたい。


絶対にこの世界で生きて日本に帰り親孝行したい。


2人の役に立ちたい!恩返しがしたいという気持ちが伝わったのか、最近は少しずつ馴染んできている。

左手だけの生活にも慣れてきたし、ステューとお喋りするのが最近の楽しみなのだ。


ルーブは無口な親父って感じだからあんまり会話量は多くないが良い関係を気付けて来ていると思う。ルーブのイメージは寡黙だが誠実で頼れるお父さんって感じ。身体も熊のようにデカくて大柄のおっさん。怒らせたらヤバそう。



とある日の夜。

テーブルで食卓を3人で囲む。いつもと変わらないスープとパンを頬張る。大体献立はいつも同じ感じ。


ある程度意思疎通できるようになった今、そういえばルーブに何故救助してくれたのか聞いてみたら、

「葵の服装が貴族か王族かと思ったから救助した」

っと軽いことのように笑って答えていた。まだ完璧に受け答えできないので、想像で補っている部分はあるけど、大体のニュアンスは合ってると思う。


「自分は貴族や王族じゃないから見返りは期待できそうにないけどいいの?」


自分はずっと心配だった事を聞いてみた。


するとルーブはフッと笑って答えた。

「確かに最初はモノの珍しさで助けたが、今は色々雑用を手伝って貰ってるし、娘のステューも気にかけてもらってるしもう息子みたいなもんさ!」


そのルーブの言葉にうるっと来て照れ隠しにスープを飲むフリをして誤魔化す。


「ありがとう…」

そうボソッと答えるとルーブとステューは微笑んでいた。素直に感謝を伝えるのがこんなにも恥ずかしいなんてな。


「葵のご飯の食べ方の所作が綺麗なの。本当は貴族様ではないの?名前に姓がありそうなの。」


「あーフルネームは西村 葵。西村が家の姓で葵が名前だよ。でも貴族様や上流階級ではなく一般庶民だったよ。」


「だから葵の故郷は貴族でも無いのにあんな豪華な服を着てるんだな」

ルーブが疑問そうに答える。


「あー。あの服は制服と言って学生はみんな同じ服を着るんだよ。」


「セイフク?ガクセイ?」

首をかじげるルーブとステュー。


「えっと、何から話したもんか」

言葉をできるだけ噛み砕きながら学校のことを説明した。


「つまり葵の故郷では殆どの子供達が22の歳まで学舎で学問に励むのか!?あんな豪華な服を着ながら!?」


「それってそれって葵の故郷の国ってもの凄ーーーくお金持ちの大きな国ってことなの!?だって貴族や王族でもない子供達でもあんな豪華な服着れるの!もの凄ーく羨ましいの!」


ルーブもステューもめちゃくちゃ驚いていたけどそりゃそうかこの世界の平民の子供の常識は労働が当たり前で学校なんか存在しないんだから。親からすれば立派な労働力で勉強させる親なんか皆無。


「行く当てが無いし故郷にも帰れなさそうなんだけど、ここで暮らしてもいいの?」


「ああ!?何言ってんだ葵は俺の息子なんだから当たり前だろ!」


息子と言ってくれたのがなんか嬉しかった。

自分とルーブのやり取りをニヤニヤしながら聞いているステューと目があって微笑み返しておいた。


ずっと気にしていたからホッと肩の荷が降りて楽になった。

しかし明らかに寝床と1日2食を頂けるほどの労働はしていないように感じる。早く2人の役に立ちたいな。これまでの恩を返したいし、早くある程度会話出来るようになってこれからの事について話したいのだが、まぁ今のところなんとかなってるし焦る必要はないかな?


この世界に来て安心できる居場所ができたように思えてようやく笑えるようになってきた。でもまだまだ疑問が残ってる。ここはどこで魔法とはなんなのか、日本について何か知ってるかとか。とりあえず込み入った話になるのは間違いないからもう少しだけ語彙力を付けてスムーズに情報交換できるようにしたい。

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