第5話 : 学習、そして兼役
突如会議室に現れた隕石、どうやら──
《ネコの意識》
隕石は涙を流した。我々は初めて隕石の感情を感じる事ができた。段々とわかってきたのが恐怖や不安では無く安心といった涙だと思う。
隕石「…話」
研究員達「「─!?」」
研究員C「馬鹿な…!」
その他研究員も腰を抜かしたり口に手を当て顔色が限り無く白に近づいたり様々である。
隕石「…話を」
隕石は何故か地球人と同レベルの仕草を行い、会議室の席に手を向けた。どうぞ座ってくださいと言わんばかりである。
◇◇◇
我々は現状大人しく席に着く事しか出来ない。
研究員は多い訳でも無く、動員できる大半がこの場にいる。連絡を行おうにもここまで知性を持った相手に下手に刺激するのは危険だと判断した。
隕石「私は…あそこにいる方の体を借りているのだと思います。」
私の事か、隕石は席には着いているが顔は下を向いている。先程とは異なり神妙な様子である。
加えて言葉があまりにも流暢すぎるのではないか。もしや私の脳内の再現にも成功してしまった可能性もある。
言語能力には自信があるのと、私を再現しているなら外見だけでなく中身もというのが妥当だろうか。
隕石「信じて貰えないかも知れませんが、私は取り返しがつかない事をしました。」
研究員A「それはどのような?」
どうやら冷静に話している素振りを見せているが会話ができていることに緊張で意識がひっぱられている。
隕石「私にはどうやら人間の方々には、皆さんには見えない、特殊な力があります。」
隕石「先程のような、私自身がこの部屋にやってきた時の"あれ"は言葉をお借りすれば、証明はできないのですが、まだ物理的なものなのです。」
研究員一同((…私達の知らない物理だが…))
隕石「ですが、皆さんの常識では今までに無かったであろう力もありました。」
研究員A「ありました…と何故過去形なのかお聞きしても?」
隕石「どうやらこの星に降り立とうとした際かなり前から、本能的に力の源だと感じていたものがどこかへ行ってしまったみたいで…私はもう失ってしまったようなのです。」
隕石「人間の方々と接触してしまうと、どうなるのか私には想像も…」
研究員B「人体に有害である可能性もある…ウイルスや菌のような物なのですか?それともなにかまた別の…」
隕石「恐らく皆様の体の一部に似ていたような気がします、細かい組成は異なるやもしれませんが…」
そんな会話をしているとふと机の資料が目に入る。
隕石「…!これです!これと全く同じ物です!」
それは、つい先程に鑑定が終わったばかりの"存在できない筈のDNA"の図であった。