第3話 : 起床、そして歯車
年齢不詳、性別不詳、出身・姿を全て隠してきたネコが、未知を前に仲間に一部を初めて明かす。
■数時間後
《ネコの意識》
隕石は研究室から離れ、今は生物実験棟に移動された。
隕石は簡単な動きを行ってはいたが大して体を動かすと言ったことはせず、こちらの様子を目を大きくしながら見ているだけであった、とても奇妙である。特段問題は無いため観察対象として隔離という扱いになった。
そして私は、自身の情報を他の研究員に明かさねばならなくなってしまった。私と同程度…とまでは行かないかも知れない。が、彼ら彼女らも世界的に見れば各国の最高峰の知見を持ち、冷静沈着に今まで数々の困難や不可能を可能に変えた論文を学会に投げ入れ続けてきた優秀な研究者で、その洞察力は並大抵のそれではない。
そんな環境であれ程今まで作ってきたキャラを"ブレ"た発言をしたのだ。説明が無いと今後の研究やグループワークに支障が出かねない、幾ら何でも個人情報とはいえ、もはやあの隕石の登場でそれ所では無くなった緊張感。我々の最優先課題はもう、個人の意欲などに収まりきらず事実解明を急ぐ点にある。
私はもう───
研究員A「…いいんだ。」
研究員B「…あぁ。そうだぞネコ、我々は─」
…あぁそうか、私は勘違いをしていたのかもしれない。私達は研究員、研究の答えを徹底して炙り出す自体に本文が…
研究員B「お前がムッツリすけべだった事だったなんて政府には報告しないからn…」
………私はこいつらを深く勘違いしていたのかもしれない。そう考える前に私はもうスーツの機能を解除していた。
研究員一同「「………女性!?」」
◇◇事情説明◇◇
とりあえず隕石のあの姿は私と全く同じである事や、隕石の体をあまり見るなよ。といった個人的な注意喚起等を済ませた。
研究員A「そういや、よく見てみればみればあの隕石も同じ容姿だな…」
ネコ「あんまり顔を近づけるんじゃない、うっとうしい…」
いや確かに見せたのは初めてだけどそうジロジロみなくても。
研究員C「皆さぁああん!例の鑑定結果でましたぁ〜!!!」
突拍子も無く会議室に入り込んできた吉報。例の鑑定結果と言われたがなんの事だか全然分からないのだが。隕石の鑑定ならしようにも、物質自体が捉えられなかった為できなかった筈…
研究員A「そういやネコは丁度服を取りに行って隕石に着せたり生物実験棟に移動させたりしてたから知らなかったか。」
研究員B「そうだったそうだった。あのなネコ、実はな、発見された長野の山にな…」
研究員B「"シミ"があったんだとよ。」
研究員A「実は隕石自体に着いていた可能性が高いんだが…どうもあの時は発光やら、分子が確認できないやらで視野が狭くなっててさ、後から鑑識の方々が現場で見つけたらしいんだ。」
なるほど…しかしどうだろうか。シミなんて幾らでもできそうなもんなんだが、地面に接触してたり大気圏突入で焼き焦げた部分があったりしたのかもしれない。
しかしそんな考えも報告を見てから消え去った。
「組成なしのDNA」
本来二重螺旋構造で無数のパターンの鎖で構成されるハズのDNA…だがしかしタンパク質などで完成された二重螺旋構造を残し、ポリヌクレオチド鎖が観測できなかった。つまり"もぬけの殻"である。
有り得ない、存在しない、ではなく有り得るわけがない、存在できない。
我々はまた、興味を掻き立てられた。果たしてこのDNAと呼べるのかまだ怪しい代物が一体どのような目的でどのような生物から送られてきたのであろうか。あの隕石は一体なんなのであるか。
未だ、予想すら困難である。