証明せよ、自らの在り方を世界に刻め
■◇■
その日、普段の様に午前の講義を受けたゼルマが二人と共に食事をしていると唐突に彼等はやって来た。
「よお、落ちこぼれ。久しぶりだなあ。元気にしてたか?」
「………何の用だ、先輩。今俺は非常に忙しいんだが」
「昼飯を食うのが忙しい事か?ちんけな学食なんざ食いやがって。………舐めてんじゃねえぞ。この俺が態々来てやってるんだぞ?後輩のお前には取るべき態度ってもんがあるんじゃねえか?まずは敬語だろ?」
いつかの日と同じ様に二人の取り巻きを引き連れ、ゼルマの卓までやって来たその男。
剝き出しの敵意を隠そうともしない彼の名をレックス。
初日にクリスタル・シファーに絡み、揉め事を起こしていた学徒だった。
「だから何だ?もう俺と先輩との間には何の関係も無い筈だろ。それと、俺が敬語を使うのは相手を敬う時だ。あんたは敬うには到底値しないな」
「落ちこぼれのお前が人の価値を語るのか?知ってるぜ、お前の落ちこぼれっぷりをよ」
「それこそ最高学府を出る先輩には関係ない事だろ。それとも魔導士になれなかったから外に出るのか?」
「―――つくづく癇に障る野郎だなあ………!お前はッ!!」
賑やかな食堂の一角で行われている会話。レックスの怒号が響くと、周囲が一気に鎮まる。
既に周囲には一定の学徒が集まり始め、初日と同じ様に人だかりを作っていた。
「おいおいおい!黙って聞いてればなんだ手前?うちのゼルマになんおいちゃもんつけてんだぁ?おい!」
「そうだな。あれから既に一週間も経っている。一週間も前の出来事を因縁に持ち出すというのはいかがなものだろうな。しかも私達は何も悪い事をしていない筈だが?」
「つーか俺の名前は覚えたんだろうな!!」
一度は黙って聞いていたフリッツとエリンも、ゼルマを援護すべく介入する。
三人は長机にフリッツとエリンが隣同士で座り、その対面にゼルマが座っていた形だった。
故にフリッツが立ち上がろうとするが、それは邪魔される。
取り巻き二人が立ち上がろうとするフリッツの肩を抑えた為だ。
「………おい、手ぇ離しやがれ!」
「そういう訳にもいかないんだよなぁ」
「外野は黙って聞いてろ、なんとか君」
「フリッツ・フランケンだよ!!覚えてねえじゃねえか!」
フリッツが二人を振り払う寸前、意外な所から制止の声がかかる。
取り巻き二人の行いを止めたのは他ならぬレックス自身だった。
「やめろ、お前等」
「レックス、良いんすか!?」
「そっちの野郎に用はねえ、放してやれ」
「………うす」
下級生であるフリッツには強気だった取り巻きもレックスには逆らえないのだろう。
促されるままに掴んでいた肩を離し、フリッツを解放した。
「随分物分かりが良いんだな」
「今言った通りだ、今日の用事はお前にしかねえからな。余計な事してる暇は無いんだよ」
レックスが笑う。下卑た笑みだ、とゼルマは思う。
彼がこれから何かをするのが丸わかりの笑みだ。
そしてその予想は的中する。
「決闘だ、ゼルマ・ノイルラー。レックス・オルソラの銘の元に決闘を申し込む」
◇
決闘。それは、互いの同意の元に行われる戦い。時に名誉を得る為、時に恨みを晴らす為、時に財を成す為に決闘は行われる。
模擬戦と明確に異なるのは勝者と敗者の扱いであり、決闘における勝者と敗者の間には戦いを境にして絶対的な優劣が決定されると言っても良い。
多くの場合において決闘は予めルールを決めて行われる為に、勝敗はより明確なものとなるのだ。
そしてそれは、ここ最高学府においても同じだ。
ただし外の決闘とは異なる点も存在する。
最高学府における決闘は学徒個人で勝手に行う事を禁じられている。
最高学府側が正式に許可したもののみが許され、それ以外は処罰の対象だ。
これは余計な被害を生み出さない為であり、そして勝敗により強制力を持たせる為である。
最高学府が許可した決闘の結果は、必ず執行される。
それが金銭の支払いであろうと、従属の契約であろうと、所持する魔道具の移譲であろうと、そして最高学府からの退学であろうとも。
「おい、決闘って!なんだよそれ!?意味分かんねえだろ!?」
「ゼルマ、受ける必要は無いぞ。最高学府の決闘は互いの同意が得られなければ許可されない。お前が認めなければ決闘なぞできやしない」
「そうだ、断れ!そして手前は帰れ!しっしっ!」
当然だ。ゼルマとて受ける必要も意味も無い決闘である。
フリッツとエリンの忠告通り、いや忠告が無くとも受ける気は無かった。
そもぞもが無理な因縁を付けられた事が切っ掛けのいちゃもんである。ゼルマが相手にしなければ、レックスの方には何の正当性も存在しないのだ。
「黙れ。俺が話してんのはゼルマ、お前だけだ。受けるのか、受けないのかどっちだ?」
「決まってるだろ。俺に受けるメリットが無い」
「そうだな。そう言うと思ったぜ。だが、これならどうだ?」
そうしてレックスは懐から一枚の紙を取り出し、ゼルマに手渡した。
ゼルマとしては受け取りたくも無いが、状況が状況である。渋々受け取ると、紙に目を通す。
それは書類だった。最高学府で申請を行う際に用いられる形式と同様のもの。
外出許可を得る際に取得するものと同一の書類であり、そこに書かれていた名前とは―――
「………クリスタル・シファー」
「気づいたか。文字を読むのは速いじゃねえか」
「生憎、本を読むのは得意な方でな」
クリスタル・シファーの外出許可申請。申請の許可に時間がかかる為に外出の時期自体はまだ先だが、長期の外出になる予定の旨がそこには記載されていた。
最高学府の魔術師は全て学徒である。そして学徒であるからには学ばなければならない。
故に最高学府の外に長期間外出する際にはこうした申請を経て許可を貰う必要があるのだ。
許可自体は手続きは必要だが普通に降りる。帰省する者、短期間の旅に出る者、素材を手に入れる為に冒険者に同行する者等、外出許可を申請する魔術師は多い。
しかしクリスタル・シファーは特待生。他の学徒に比べて外出という身に危険が及ぶ行為には最高学府側も慎重にならざるをえない。
優秀な魔術師が外出し、二度と戻って来なかった例などいくらでもあるのだから。
「どうして、いや………オルソラ、そうか」
ゼルマが気になったのは、どうやってこの書類を手に入れたのかだった。
だがその疑問はすぐに解消される。
レックス・オルソラ。その名前を思い出す事によって。
ハルキリア王国貴族、オルソラ家の魔術師。
レックス・オルソラは貴族魔術師だ。
「まさか知らなかったのか?俺が誰か」
「ああ知らなかった。だが納得した、確かに王国貴族らしい見た目だ」
「誉め言葉として受け取っておいてやるよ」
最高学府は魔術師の学園。世界最高の教育機関。
そして同時に、あらゆる勢力が一堂に会する魔境でもある。
大陸中様々な勢力の魔術師が集い、魔術を学ぶ。
彼等は皆等しく学徒だが、王侯貴族も居れば特権階級も多い。
本来大陸最西端に存在する魔物達の領域を指す言葉である魔境がいつしか最高学府に対しても用いられる様になったのは、暗に権力闘争が行われているからだった。
そしてオルソラ家もまた大国ハルキリアの貴族。
魔術師は家系が重要であるが故に、同じく血統と伝統を重視する貴族制度とは相性が良い。
長き年月をかけて魔術師の品種改良を行う、それが魔術師の家系という概念だ。
貴族ならばやりようは幾らでもある。
買収か、そもそも王国貴族の手の者が紛れていたのか。
兎も角彼は自らの名前の力を使って彼女の情報を手に入れたのだ。
「で、これがどうかしたのか?」
「おいおいおい、そこまで馬鹿じゃないだろ?仮にも最高学府の学徒、分かってるよなぁ?」
「俺がクリスタル・シファーの為に受けるとでも?通りがかった所を助けただけの女の為に?」
「お前は受けるさ、よぅく調べさせて貰ったからな」
「………………」
それは脅迫だった。
そうして、一瞬の時間が流れた。数秒だったのかもしれない。
ただ最早食堂の喧騒すらも静めてしまう程に場の緊張感は高まり、聴衆もまた彼の言葉を待っていた。
未だ椅子に座したまま立っているレックスを見上げるゼルマと、そんなゼルマを文字通り見下しながら微笑むレックス。対照的な光景が、食堂の一角に生み出されていた。
「ゼルマ………」
「………………」
フリッツとエリンも卓の向こうからゼルマの方を見ていた。
そして―――
「良いだろう。受けてやるよ」
ゼルマは決闘を受諾する。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
瞬間、沸き立つ聴衆達。
叫び、名前を呼び、次々に勝敗の予想を垂れ流す。
「新学期初の決闘だ!」「カードはオルソラ家のレックスとあのノイルラー!」
「これは見ものだ!」「やっぱりオルソラが勝つか!?」「いやノイルラーも歴史じゃ負けてないぞ」
「おいおい、いつやるんだ!?明日か!?」「講義の予定空けとかなきゃ!」
決闘は表向きはお堅いものだが、実質的には最高学府内における娯楽の一つ。専用の闘技場も用意されている程なのだ。
「ハハハハハッ!ならルールを決めようか!時は二日後の正午、場所は第二闘技場だ!」
「闘技場だって!?どんだけ人を集める気だ!!??」
「この俺が最高学府を出る最後の催し物だ!盛大にしてやる!!」
第二闘技場は最高学府内部にある闘技場の中でも二番目の広さを誇る。
広さとはつまり舞台の面積でもあるが、同時に観客席の数でもある。
決闘は魔術師にとっての一大イベントの一つ。
注目度の高い決闘では立見席すら用意される程だ。
「お前が勝ったら、さっきの書類を俺は最初から見てない事にしてやる。シファーにも関わらねぇ。そして!俺が勝った場合だが………お前は最高学府を退学してもらう。拒否は、出来ないよな?」
「分かった、それで受けよう」
「ゼルマ!?何でだよ!?お前が受ける必要はねぇだろ!?」
フリッツが思わず立ち上がり叫ぶが、ゼルマの視線はレックスへと固定されていた。
そのまま視線をずらす事は無く、二人は会話を続ける。
「それで?条件はそれだけで良いのか?随分と甘いんだな」
「強がってられんのも今の内だ。お前は二日後惨めに最高学府を去るんだよ!退学したお前はもう最高学府の学徒じゃねえ………楽しみだなぁ、二日後が」
沸き立つ聴衆に囲まれ、悪役そのものの顔をしながらレックスは哂う。
自身の勝利を疑わず、態々ゼルマが恥をかく様に場を整えたのだ。
たった一週間前の、少しプライドを傷つけられた事だけで。
「一つだけ約束しろ」
「あぁ?」
その場を去ろうとするレックスの呼び止め、ゼルマが言う。
「俺が勝てば、さっき言った条件は必ず守れよ」
「はぁ?これは決闘だ、言われなくとも守ってやるよ。お前が勝てたら、な」
「………言質は取ったぞ」
■◇■
「おいゼルマ!」
レックス達が去り、食堂の様子もかなり落ち着いてきた頃。
ゼルマはフリッツとエリンに問い詰められる形で廊下に居た。
「何で受けた?分かってんのか?負けたら退学なんだぞ!?」
フリッツの言葉も最もだった。寧ろ、友人としては普通なのかもしれない。
ゼルマの行動は明らかに食い違っている。
最初にフリッツから助けた理由を問われた時、クリスタル・シファー等どうで良いとばかりの態度を取っていたゼルマ。そして実際に彼女と話し、『可哀そうな奴』と言い放ったゼルマ。
ゼルマがクリスタルを助けたのはあくまでの成り行きであり、仕方ない事だったと、彼は二人に説明していた。説明していた、筈だった。
しかしこれは最早成り行きではない。
明確にレックスはゼルマに逆恨みをし、ゼルマを壇上に立たせた。
そしてその材料となったのは、他ならぬクリスタル・シファーだ。
本来脅迫の材料に成り得ない筈の彼女を使って、レックスはゼルマを決闘の場に引っ張り出したのである。これは少なくともフリッツにとっては信じ難い事だった。
「お前が良い奴だってのは知ってる。けど、そこまでの事か?成り行きで助けただけの奴に自分の退学まで賭けられるのか?」
フリッツが怒っているのはゼルマが取った行動に対してでは無かった。
彼自身は、ゼルマの行動を否定するつもりは無い。そんな部分まで含めてゼルマだと知っているからだ。
故に、彼が怒っているのは全く別のポイント。
「お前とシファーとの間に何があるんだ!?」
ゼルマの行動はもう成り行きや通りすがりでは説明できない。
人間は普通、そこまでだけの関係性の人間に自分の進退までは賭けられない。
であるならば、フリッツはゼルマとシファーとの間に自分の知らない何かがあると考えた。それは当然の帰結であり、彼の怒り………親友である筈の自分にすら話してくれなかった事を怒っているのだ。
「………悪い。だけど、別に彼女に理由がある訳じゃ無い。このまま放っておくと余計に厄介な事になるのが分かっているから受けたんだ。あいつはしつこそうだからな」
「俺にも言えない事なのか?」
「今言った事が真実だ。嘘はついてない」
「………………」
フリッツは黙る。
フリッツは善良な人間だ。多少頭の足りない部分、直情的な部分はあるが、それが彼の魅力の一つであると言っても良いだろう。情に厚い性格が彼の長所の一つなのだ。
だからこそ、フリッツは知っている。
その上で、何を言い出せば良いのか迷っている。
そして二人の間に静寂が訪れた時、これまで沈黙を保っていたエリンが口を開いた。
「フリッツ、もういいだろう。私達は知っている筈だ、ゼルマがどんな人間か」
「だけどよ………!」
「気持ちは分かるさ。だが、信じよう。全てを口に出す事が信頼関係じゃない。その分私達はゼルマの事を知っている。それに、ゼルマは負けないさ。そうだろう?」
「それは………そうだが………」
エリンがフリッツに助け舟を出した形だった。
エリンの性格はフリッツと対照的。今回はそれが如実に表れた形だ。
友人として、脅迫が成立する程の秘密を抱えるゼルマを心配し怒るフリッツ。
友人として、ゼルマの勝利を信じ、何も語らない事を選んだエリン。
どちらが良いのか、どちらが劣っているのかは無い。
どちらも正しいが故に、結論は存在しないのかもしれない。
ただこの場においてはエリンの答えがフリッツにも届いた様だった。
「………すまん。つい、感情的になった。………いつもの悪い癖だな。t怒って悪かった」
「何も感じてないさ。そこがお前の良い所、そうだろ?」
「………ははっ、良く分かってるじゃんか!」
フリッツが謝罪をし、それをゼルマが受け入れる。そしてフリッツもまたゼルマの言葉を素直に受け取る。そこにあるのは確かな友人関係だ。
ゼルマ、フリッツ、エリン。奇妙な三人組だが、その関係性は確かなものだ。
多少達観した所のあるゼルマ、感情的だが友情に厚いフリッツ、冷静ながら友人想いのエリン。
ゼルマは滅多に二人と喧嘩をしないし、フリッツとエリンも喧嘩をする事はあれどそれが尾を引く事は無い。これが三人の現在の関係だった。
「分かった。今はお前を信じる。けど、助けが必要ならすぐに言ってくれ。何が何でも手を伸ばして助け出してやるからな!」
「………すまん、ありがとう。エリンも助かったよ」
「なに、変な事はしていないさ。ただ私もフリッツの気持ちは分かる。黙って何も話さず、一人で済まそうとするのは止めてくれ。私達は良き友人だろ?」
「そうだな………そうだ」
エリンも根底にあるのはフリッツの似た感情だ。
だが、エリンの視点はエルフのそれだ。故に他者よりも冷静に判断できるのだろう。
ゼルマも素直な二人の気持ちを裏切りたいとは思わない。
ある意味強烈に責め立てられるよりも、効果のある行為だろう。
「それで?決闘は二日後だったっけ?」
「レックス・オルソラはそう言っていたな。しかし二日後か………狙ったんだろうな」
「ん?どういう意味だ、それ」
「覚えてないのか。二日後、つまり明後日は日程の関係で講義の数が少ない日だった筈だ。正午ともなれば多くの学徒が決闘を見に来るだろうな」
最高学府の講義日程は学期単位で管理されている。
一年を前半と後半に分割し、一つの講義を一年を通して学ぶ形だ。
だが教師の自身の日程の都合や、各必修科目講義の進捗等の違いはどうしても現れる。特にほぼ全て学徒は必修科目以外の講義も多く履修しているのだ。
故に各学期には、こうした必修科目の調整日が設けられているのである。
「三学年までの学徒は勿論、それ以降の学徒も来るだろう。どうやら奴は徹底的に辱めるつもりの様だ」
「超性格悪ぃー。ちょっと止めただけだろ?それにもうすぐ最高学府を出るんだったら気にせず出ていきゃ良いのによ」
「貴族なんてそんなもんだ。先輩にとっては自分の自尊心が一番なんだよ」
「そういうもんなのかねぇ」
「私の故郷でも権力を誇示したがる者は居た。種族に関係なく、特権階級というものは自らが特別である事をひけらかしたいものだ」
最高学府における学徒は皆平等に学徒としての扱いを受けるが、人間の心情としてはそう上手くはいかないのが実情だ。
王侯貴族として生まれ育った魔術師はやはり自身が特権階級であるという自認をしているものだし、より深い部分では種族間の意識の差は埋めがたいものがある。
特にレックス・オルソラはハルキリア王国の貴族。
ハルキリア王国は人種主義を掲げる国家として有名であり、貴族が持つ権力も非常に大きい。
そこで育ったレックスがあのような性格になるのも頷ける。
「お前の事だ、何か考えているんだろ?」
「少しな。だが、万全を期したい。その為には残り二日で出来る限りの準備が必要だ」
「何か手伝えることはあるか?何でも言ってくれていいぞ」
「ありがとう。だが今回は一人でやる」
折角の提案だったが、ゼルマは断る。
それには当然理由があった。
「何で難癖をつけられるのか分からないからな。最悪、お前等を理由に約束を反故にされるかもしれない」
「そこまでするか?一応最高学府公認の決闘だぜ?」
「する奴はする、可能性の話だがな。だからこそ万全を期すんだ。俺に魔術の才は無いからな」
決闘に勝ったとしてもレックスに約束を守らせなければ意味は無い。
ゼルマの目的を達成するには、最低でもレックスに約束を破らせないだけの正当性が必要だった。
「だから二人は応援しててくれ。それだけで良い」
「本当にそれだけで良いのか?」
「ああ。それに、これはチャンスだ」
「チャンス?」
これまでのネガティブなイメージとは反対方向の言葉がゼルマの口から出て来た事で、エリンは思わずオウム返しに言葉を返してしまった。
「ああ、魔導士学位の認定方法については二人共知ってるよな?」
「知っているが………そうか!」
「そうだ、それで行く」
ゼルマはメリットが無い、と言っていたが一つだけ存在する。
それは確かに条件としては入っていない、だが非常に重要な事柄。
魔導士の学位を取得する二つの方法。それは理論と実践。
「レックスを倒し、俺の理論を証明する」
■◇■