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大賢者の末裔  作者: 理想久
第三章 魔術師の宿題
78/87

万全であれ。例え万能で無かろうと。 弐

感想・質問等お待ちしております。

 

 ■◇■


「皆様、お集まり頂きありがとうございマス。コレより門主会議を始メたいと思いマス」


 自動人形が挨拶を述べると、速やかに門主会議は開始される。

 そこはそれなりに広い、窓の無い空間だった。外界の光源は無く、空間はかなり薄暗い。

 空間の中央には中心に穴の開いた円卓が用意されており、円卓が淡い光によって照らされていた。


 本来なら異物である筈の自動人形による進行に誰も異を唱えないのは、既に彼等にとっては当たり前となっているからなのだろう。


「なぁ、聞いても良いかシラバスの代理人」

「どうゾ。ウルフストン代理人様」

「様は要らねぇよ。……聞きてぇ事は山程あるが、まず聞きてぇのは何で()()()()()を送って招集したかって事だ」


 だが、今回の門主会議の趣は普段のそれとは異なっていた。

 普段なら自動人形こと六門主家シラバスの代理人が会議の進行を務め、都度議題に合わせて各人へ進行を交代したりするのだが、今回の会議は一人の疑問から始まったのである。


 疑問を投げかけたウルフストンの代理人の言葉に、ラゴートの代理人が続けた。


「ご丁寧に『緊急』とまで付いていましたね。そして、少なくとも代理人は必ず出席するように、とも。代理人を務めてから五年経ちますが……こんな招集の仕方は初めてです」

「ああ。俺も久しぶりに見たぜ、この場に六門の代理人が全員居るところなんざ」


 ウルフストンの代理人が言うように、十二席存在する円卓の七席が埋まっていた。

 それはつまり、六門の代理人が全員揃っている事を意味している。七席なのは机に突っ伏して動かないシラバスの門主が居るからだ。前回に加えて、欠席していたヴィーボアの代理人が参加している形だ。


 そして前回から変化している点はもう一つある。


「レオニストの代理人はコルキス嬢から交代していらっしゃるようですが……」

「…………どうかお気になさらず。この会議に支障はありませんので」


 前回レオニストの代理人を務めていたエリザベート・コルキスの姿は無く、代わりに若い男性がレオニスト代理人の席に座っていたのだ。

 代理人とは文字通り門主の代理を務める立場。門主からの信頼と、門主会議を乗り切るだけの能力が求められる。門主に代わって言葉を発するとはそういう事なのだ。


 そして経験が求められる立場だけに、余程の事情が無い限り代理人が年度の中で交代する事は無い。そして余程の事情とはつまり、死亡や部門内での失脚である。

 特に此処にいる全員、エリザベートがどういう人間だったかを知っている。加えて新星大会の結果についても合わせて考えれば、前者と後者のどちらがエリザベートに当てはまるか想像に難くなかった。


「まぁそれは置いておいてだ。で、どうなんだシラバスの代理人。それとも……貴方に尋ねた方が良いんですか、アランカルト・シラバス様?」


 ウルフストン代理人の視線が、突っ伏して微動だにしない魔術師へと向く。

 純白の衣服に白髪の男性。顔を伏しているが故に、顔立ちも表情も分からない。

 だが彼は間違いなくシラバスの当主である。


 最高学府六門が一つ、神秘伝承部門(シラバス)

 所属する魔術師の数は最少でありながら、唯一無二の特性を有する魔術師達の巣。

 その長こそ、アランカルト・シラバスであった。


 だがウルフストン代理人からの問いかけにも門主は動かない。

 声が聞こえてすらいないのか、反応すら見せる事は無い。

 代わって、いつも通りにシラバスの代理人である自動人形が応答した。


「その問いについてハ私から答えさせていただきマス。門主への直接の質問ハお控え下サイ」

「なら教えてくれ、どうして今回の招集はこんな形式だったのか」


 ウルフストン代理人とて回答を期待していた訳では無かったのだろう。

 回答が得られるのであればそれで構わないと、すぐに本題に移る。


「本日皆様二お集まり頂きました理由ハ、既にお手元の資料二記載しております。先ずはご確認ヲ」

「この紙切れ一枚が資料だと?マジで言ってるのか?」

「先ずはご確認ヲ。代理人足り得る皆様であれば、十分に理解出来マス」


 代理人の手元に予め置かれてあった一枚の紙。どう考えても大した情報量が収められているものではない。だが、シラバスの代理人はそれで十分だと言う。

 それぞれに疑念を抱きつつ、代理人達は資料を裏返し、手に取った。


「これ、は」

「ほ、本当なんですか……これ?」

「おいおいおい……マジかよ」

「…………」

「ふむ……成程」


 そしてそれぞれに反応をした。

 ある者は驚愕に表情を歪ませ、ある者は静かに情報を整理していた。

 十分に理解出来る、その言葉が真実であった事を証明している光景だった。


「ではご理解頂けたようですのデ、具体的ナ話へ移らせて頂きマス」

「ま、待って下さい!!こんな文章だけでは納得できませんよ!?」


 代理人達が情報を飲み込んでいる最中、一人の代理人が声を上げる。

 アズバード代理人の席に座るその者こそ、アズバードの後継であるナルミ・アズバードだ。


「同感ですね。シラバスの代理人、ここに記載されている事は本当に事実なんですか?事実ならば、それに足る証拠をご提示いただきたい。『はいそうですか』と信じるには……内容が荒唐無稽のように思えます」

「はい。勿論でございますアズバード代理人様、ラゴート代理人様。既に証人をお呼びしております」

「証人……証拠品ではなくですか?」


 自動人形の言葉に、ラゴートの代理人が顔を顰める。

 証拠品ではなく、証人。それは今回明かされた情報に鑑みれば、少しおかしな組み合わせであったからだ。


「ご紹介致しマス。中央大図書館所属、秘匿書架担当のチェーヴェリ・アルシスム大司書です」


 だが、そんな思いはすぐに消える。

 何処から現れたのか、シラバスの代理人の傍の陰から一人の男が姿を現した。

 特徴的な衣服を身に纏った男。そしてこの場に居た全員、その衣服には見覚えがある。

 それは最高学府の司書が着る制服であったからだ。


「ご紹介に預かりました。中央大図書館の秘匿書架を担当しております。チェーヴェリ・アルシスムと申します」

「秘匿書架の大司書だと……?」

「はい。といっても普段は中央大図書館の司書と兼務しておりますが」


 中央大図書館。それは最高学府の図書館施設を統括する機関の名称である。

 最高学府には大小様々な図書館施設が存在するが、私設図書館を除けば全ての図書館の大本はこの中央大図書館に帰属している。だからこそ共通した検索サービスも提供できるのだ。

 また、中央大図書館は最高学府の中央に位置する最も大きな図書館でもある。


 そして、そんな中央大図書館に存在する最高学府で最も入り難き場所の一つ。

 一般には公開されない書籍、文書、理論が所蔵される場所。

 それこそが中央大図書館の秘匿書架であった。


「では、アルシスム大司書。説明をお願い致しマス」

「かしこまりました」


 チェーヴェリ・アルシスムは傍の自動人形へ会釈をすると、代理人達の方へと向き直る。

 円卓に席が配置されているので、正確には代理人達の方を見回した。


「先ず始めに断言しておきますが、お手元の資料に記載された内容は真実です。正式に秘匿書架に所蔵されている、紛れもない事実となります」

「まぁ、秘匿書架に入ってるならそうだろうな……」


 チェーヴェリの言葉を受けて、いやそれ以前にチェーヴェリの登場を受けて代理人達の間では得た情報を受け入れている様子だった。

 だが、此処でも一人、おずおずと手を挙げる者が居た。

 ナルミ・アズバードである。


「……あの、すみません。何で秘匿書架に入っている事が真実である事の証明になるんですか?」

「ご質問ありがとうございます、ナルミ・アズバード様。それは秘匿書架に所蔵される書籍、文書が真実であるが故にこそ所蔵されるからです」


 チェーヴェリは優し気な表情のまま、続ける。


「虚偽の情報であれば、態々保存する必要はありません。勿論、歴史的には意味があるでしょう。知識の編纂過程を辿る事もまた重要ですから。ですが……虚偽ならば隠す必要もまた無いのです。秘匿書架へ納められる情報とは即ち、情報が持つ危険性に鑑みて『真実であるが故に、秘匿せざるを得ない』と判断されたものなのです」

「な、成程……そういう事ですね」


 最高学府において、あらゆる知識は尊重されるべきである。

 知の大図書館を謳う最高額において、情報の廃棄は許されざる事。

 故にこそ、秘匿書架が存在する。

 どのような情報であっても、保存・保管する為にだ。


 だが今回の場合、秘匿書架が意味するものはそれだけではかった。


「それだけじゃねぇぞ。秘匿書架から情報を出すには()()()()()()()()()。つまり今回の案件は……」

「……学園長もご存じだという、事」

「てか話せたのかよ、ヴィーボアの代理人」

「ん……」


 これまで一言も発さずに居たヴィーボアの代理人が発言する。

 一見すると少女のようにも見えるヴィーボアの代理人はゆっくりと次の言葉を紡いだ。


「……学園長がご存じなら私達に疑う余地は、無い」

「まぁそういうこった」

「ありがとうございます。理解出来ました」


 学園長は最高学府に存在するあらゆる組織・機関の最上位の命令権限を有している。

 だがそれだけでここまでの信用を得る事は出来ないだろう。

 最高学府においてキセノアルド・シラバスが絶対なる存在である理由、それは彼が非常に優れた魔術師であるからに他ならない。


「今度こそ、ご理解頂けたようですので話を進めさせて頂きます」

「お待ちを。まだ聞きたい事が残っているのですが?」

「それでは具体の話を終えた後に質疑応答の時間を取らせて頂きます。進行に合わせて解消される疑問もあるかと思われますので、どうぞご理解下さい」


 そう言われてしまえば、口を挟む余地は無い。

 実際、チェーヴェリの言う通り具体の話にはまだ一切触れられていないのだ。

 そしてラゴートの代理人もまた、進行の過程で自身の疑問が解消される可能性があると理解したのだろう。全ての代理人が静かにチェーヴェリの進行を待った。


「先ず、本件については他言無用とさせて頂きます。議事録も残しておりません。くれぐれもお気をつけ下さい。その上で、代理人の皆様におかれましては門主の方々へ本件について共有をお願い致します」

「つまり、門主の方々にも動いて頂くと?確かに事の規模を考えてば当然かもしれませんが、余りに危険では?」

「はい。ですので本件について直接的に対処する人員は既に此方で選定しております。門主の方々はあくまでも最悪の事態への備えとお受け止め下さい」

「まぁ門主が動くとなると流石に目立ちすぎだわな」

「それも一因ではありますね」


 代理人の知名度は様々だが、最高学府において六門主の名前を知らぬ者は居ない。居るとすれば余程の偏屈者だ。

 実際に顔が知られているかどうかは門主によっても異なるだろうが、それでもだ。各部門に所属する魔術師なら最低限自身の門主の顔は知っているだろう。

 そうでなくとも、滅多に表舞台に姿を現さないヴィーボアの門主でさえ入学式等の重要度の高い催事には顔を出すのだ。記憶力に優れた者ならば一目で分かってしまう。


「それで、既に対処人員は選定済みとの事ですが一体どのように?」

「基本はこの場に居る代理人の皆様に加え、各部門の科長及び科長級の魔術師。そして特待生の魔術師で対処を行います。配置及び概要は後日通達致しますが、基本的には相性を考慮した二人組もしくは三人組となる予定です」


 各部門の科長と科長級魔術師、特待生。そして保険とはいえ六門主を動員する。

 その人事は、どれだけ今回の案件が重要なのかを指し示していた。


「え、と、特待生もですかぁ!?また巻き込まれるんですか!!??」

「落ち着いて下さい。そもそも貴方は代理人なのだから特待生かどうかは関係なく参加ですよ」

「そ、そんな…………何だって僕ばっかり…………」

「……軟弱」


 うなだれているナルミに若干冷ややかな視線が送られる中、会議は続けられる。


「また本会議の終了後、代理人の皆様方へは参加人員の名簿(リスト)を配布致します。また、参加人員へは学園長名義にて通達を行いますので、部門毎の再伝達は不要です」

「代理人としての仕事は門主への報告だけで良いって事か」

「究極的にはそうなります」


 本来、他部門に所属する魔術師に口を出す事は越権行為だ。

 例えば現代魔術部門内の人事に古代魔術部門は口を出す事は出来ない。

 実際は大小様々な駆け引きが存在するのだが、それでも大っぴらに干渉する事は暗黙の了解で禁止されている。

 だが今回の場合は学園長より人事を許可されている状態。故に部門の枠を超えた人事通達が可能なのである。


「それでは簡単ではありますが私からの説明は以上です。詳細は後日の通達をお待ちいただければと思いますが、この場で何かあればどうぞ」


 チェーヴェリがそう締めくくると、すぐに一人の手が挙がる。

 ウルフストンの代理人であった。


「さっき坊主も言ってたがよ、どうして特待生を参加させるんだ?特待生が優秀なのは認めるが……少数精鋭で行くってんなら無駄な犠牲を増やす結果に繋がるんじゃないか?」

「これは学園長のご意思です。人員の選定を行ったのはシラバス様ですが、特待生を動員する権限を有するのはあくまで学園長のみですので。貴重な経験となるだろう、との事です」


 特待生も三年目以降は各種部門に所属する事ができるが、他の魔術師と違って任意となる。

 また所属したとしても、彼等はあくまで特待生としての身分を失わない。そして、特待生は学園長直属の魔術師であるが故に、例え門主であっても人事権は持たないのだ。


「それに、特待生の方々は全員優秀です。『大賢者の再来』に加え、そちらのナルミ・アズバード様も。今回の作戦の都合は、少数精鋭の方針とはいえど最低限必要な人数を確保する必要がありました。その点、特待生ならば実力には申し分ありませんからね」

「一応聞いておくが、その『作戦の都合』ってのは何だ?」

「作戦範囲の事です。本件の対象範囲は最高学府の全域となります。もし対処が誤れば甚大な被害を齎す事は想像に難くありません。故に二人組ないしは三人組による面での配置が必要なのです」

「二人組は少ないと思いましたが……そうした訳でしたか」


 想定される危険に対し、二人は余りにも心許ない数字だ。

 だが最高学府は広大である。その全域に魔術師を配置するとなれば、最低限必要な人員で配置するしかない。二人組或いは三人組というのがその最低限必要な数という事だ。。


「質問」

「どうぞ、ヴィーボアの代理人様」

「……全域ってどこから、何処」

「ありがとうございます。こちらも後程通達致しますが、全域とは都市結界の内側、そして外郭周辺部分となります。その範囲内で生じる被害を考慮し、適切な人員を配置する予定です」

「…………外は、面倒」

「ヴィーボアの特性も考慮しておりますので、ご安心ください」

「ん…………」


 チェーヴェリの回答に満足したのか、ヴィーボアの代理人は再び固く口を閉ざした。

 もう尋ねたい事は無いという意思表示である。


「あ、あのじゃあ僕からも一ついいですかね?何度もすみません」

「どうぞ、遠慮なさらずに」

「疑ってる訳じゃないんですけど、コレは本当に起きるんですかね……?ほら、今は対策の話ばかりですけど、起きる可能性が実際どれだけなのかなぁ……って」

「とても良いご指摘です」


 チェーヴェリは改めて全員を見回すと、一層真剣な表情で語り始めた。


「正直、中央大図書館では測りかねております。既に何名かの魔術師には協力を仰いでおりますが、何しろ前例が文献にしか残っていないものですから。ですが、もしもに備えず楽観視するというのは余りにも愚かな所業です。そんな事は我々には許されません」

「『万全であれ。例え万能で無かろうと』ですね」


 ラゴートの代理人が引用したのは大賢者が残した言葉。

 それは大賢者の著書の中でも人気が高い、『エンデヴァッリの伝書』に記載された一文である。

 万能なる存在で有れば、対策は必要ない。あらゆる事態に対応出来るが故の万能だからだ。

 しかし魔術師は、人は万能ではない。どうしても対応できない事態は起きうる。

 故に万能ならざる者は万全を目指さなければならないのだと。


「本件についてシラバスの方々と中央大図書館が協働しているのはそうした理由もあります。最も我々の仕事はあくまでも情報分析に基づく立案補助に過ぎませんが」

「この場ヲ借りて、感謝申し上げマス。アルシスム大司書様」

「感謝には及びません。もしそれをいただくのであれば、全てが無事に済んだ後でしょう」


 そういうチェーヴェリの表情は決して明るくなかった。

 勿論何事も起きないに越した事は無い。だが、もしも、『何か』が起きた時にどうするのか。

 チェーヴェリの表情は、彼の矜持の表れだったのかもしれない。


 そして、アルシスムの表情はすぐに元の優男然としたものに戻る。

 周囲を見渡し、口を開いた。


「では他に何か質問がございますか?……無いようですね。では私はこれで」

「待ちなよ」

「……っ!?貴方様は」


 出番の終了を宣言しかけた刹那、突如として空間に響く新しい声。

 この場でこれまでに発現していない者はアランカルト・シラバスのみ。だが彼は今も尚、机に突っ伏したままだ。


 ならば、その声の主は外からやって来たものに他ならない。


 そして、この場に揃った全員がその声の主を知っている。


「遅れて悪かったね。少し野暮用でさ」

「シャア様……!?」


 その男は、一言で言えば捕食者であった。

 細身ではあるが決して華奢ではない。無駄を削ぎ落した、肉食獣が如き威容。

 美しき金の髪を携えて、その男は堂々と席に座る。


 空席、即ち古代魔術部門(レオニスト)の門主の席へ。


「あぁ、君は確かジェナ・サービス君だったかな?随分と荒い目付きで此方を見るものだね。―――無礼だぞ。弁えろ」

「……っ!」


 瞬間、ウルフストン代理人……ジェナ・サービスの肉体が停止する。

 指先一つも動かせず、ただ一筋の汗が机へと垂れる。

 魔術は使われていない。それは一目瞭然だ。

 魔力の流れくらい読めなければ代理人足りえない。


 ならば、これは単なる威圧。

 シャアという人間が放つ、存在感そのものだ。


「……シャア様、どうか威圧はお控え下さい。この場に貴方様に逆らおう等と考える愚物はおりませぬ故」

「そうか。それもそうだな。悪かった、シンドリー。久方振りの門主会議で勝手を忘れていたようだ。ジェナ君も許せ」

「……っ!……ええ」


 そういうと、再びジェナ・サービスの肉体が動き出す。

 たった数秒の停止。しかし、ジェナの表情は一日中歩き通したかのような疲労が現れていた。


「さて、話は概ね理解しているよ。さっき学園長から聞いてきたからね」

「では、どうして此処へ?」

「大司書君、俺は憂いているんだ。もし、仮に、そんな事が起きればどうなるか……分からない筈もない。君達はまだ何かを隠しているんじゃないか?」

「そのような事は」


 チェーヴェリは否定するが、そんな事は関係ないとばかりにシャアは続く言葉を紡いだ。

 この場に居る、誰もが驚く言葉を。


「では当然、この場にヴィザー・アージュバターナー君を呼んで差し支えないだろう?」


 ■◇■


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