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失われた勝利への道  作者: にわかの妄想者
1940年 フランスの戦い
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第7話 ダンケルクを突破せよ!第一段階

5月18日、マルルでのフランス軍主力戦車隊を撃破したグーデリアン率いる第19機甲軍団は、依然として凄まじい士気の高さと勢いを維持し、サン=カンタンを突破する。

サン=カンタンにもフランス軍の防衛ラインが敷かれていたが、いけいけどんどこの士気の高さを持つ第19機甲軍団は、これを容易に突破する。

突破後はアミアンへ進撃。

道中フランス軍は抵抗してきたが、圧倒的な士気の高さで蹴散らし進撃する。

そのままアミアンに流れるソンム河に沿って進めば、イギリス海峡に近いアブビルに到達する流れだ。

サン=カンタン突破後は、フランス軍の抵抗は微弱になりつつあり、所々でフランス軍の降伏を受け入れている。

時には敗走中のフランス軍部隊に出会うこともあった。

それだけ凄まじい進撃スピードであり、敵は我々の戦車隊を見て、完全に戦う意欲を無くしてしまっていた。


数日が経過しても状況は変わらず、フランスの大地が眼前に広がっていた。

ラインベルガーは観光気分で、光景を楽しむ余裕すらあった。

・・・止まって、風呂敷を広げって、ゆっくりワインを飲みながら雰囲気に浸りたいな!

そんな呑気なことを考えていると、不意に頭に不安がよぎる。

「閣下、敵が展開しているとしたら、ソンム河対岸でしょうか」

「そうだな、敵は戦意がないようだがね」

この時点でソンム河対岸の兵力は分からないが、脅威ではないと考えた。

もし戦う力が残っているのであれば、対岸ではなく我々の目の前にいるはずと思ったからだ。

しばらくして、グーデリアン閣下が質問をしてきた。

「余裕のある今のうちに確認しておきたいことがある」

「なんでしょうか」

ラインベルガー以下同乗していた者が注目する。

「ダンケルクを包囲するのはもはや100%確実だろう。そうなったら、連合軍の連中はどうするか、のことについてだ」

同乗していた幕僚の一人が答える。

「救出作戦を展開するでしょう」

「救出するとしたら、どれほどの期間を要するのか?」

これもまた別の幕僚が答える。

「1週間要するかと」

ラインベルガーは記憶を振り絞り思い出す。

そして、確実な情報を記憶の箱から取り出すことができた。

「1週間と4日です」

ラインベルガーは断言した。

流石にグーデリアン閣下は驚く。

「・・・というと?」

「史実では、5月24日から6月4日の間に包囲された30万強の連合軍が、海峡の向こう側に渡ります」

「・・・そこで君の言っていた進撃・攻撃停止命令か!」

「そうです。我々は5月23日に進撃停止命令が下され、26日に進撃再開となりますが・・・グーデリアン閣下なら、この3日間が引き起こす甚大な事態を理解できると思います」

「はは・・・総司令部とルントシュテットの指示だね、それは」

苦笑いしながらグーデリアン閣下は言った。

「アルデンヌの時にも言いましたが、一つ手をうちます。ご心配なさらず」

「いやなに、心配している訳ではないが、君のことだ。うまくやるだろう」

「そうでなければ私は銃殺刑でしょう」

「頼むぞ」

「やってみせます」

幕僚たちは、ソンム河対岸の敵について議論していた。

どうやら、無視してダンケルクへ向かうと結論を出したようである。

その間、先んじて走らせている偵察隊は、アミアンの近くまで進出していた。

ラインベルガーは冷静に今後の展開について、再度頭の中で整理している時、幕僚の一人であるネーリング大佐が質問をしてきた。

ラインベルガーは表情には出さないものの驚く。

軽く紹介しよう。

ヴァルター・ネーリングは装甲部隊指揮官の一人で、過去にはグーデリアン閣下と戦術の研究を行っていたほどグーデリアン閣下と、いわゆるノリが合うようで、優秀な将校である。

後になると、北アフリカでロンメルと共に連合軍相手に激戦をすることになったりと。

気になったら調べてみてほしい。

現在は参謀長として指揮している。

そんな彼が出所もわからぬ青二才な自分に質問をしてくるとなると、少しどころかかなりの驚きである。

「ラインベルガー少佐」

「はいネーリング大佐、なんでしょうか」

「アミアンの戦いは、どんな展開になるだろうか」

「さしたる戦いはありませんので、一個師団投入すれば問題ないかと。それよりも、その先のアブビルに素早く進撃するべきでしょう」

ネーリングは一つ試してみた、ラインベルガーの考えを明確に捉えるつもりだった。

結果としては良かったようである。

・・・ふむ、しっかりと戦局の流れを把握しているな。

最重要目標を一番に据えての見通し、気に入った。

「ふむ、そうか。ありがとう」

ネーリングはラインベルガーに最初は疑問を抱いていたが、ここまで一緒に進撃を共にしてきて信用したようである。

グーデリアンは二人のやり取りを見ていたが、ほっとしたようだ。

実の所、ラインベルガー自身も人間関係に心配していたが、一番それを心配していたのはグーデリアンであった。


5月20日、アブビルに到達。

アミアンではさしたる抵抗なく占領に成功しており、アブビルも同様に占領した。

「閣下、この先の道のりは、ブーローニュ、カレーと来て、その次にダンケルクです」

「うむ、素早く進撃しよう」

ブーローニュまで進むと、戦闘が始まった。

意外にも連合軍は防衛ラインを構築しているようで、担当している第10機甲師団は思ってもいない事態に少々焦り気味となる。

当初は第10機甲師団の半数弱を投入して占領を予定していたが、意外な抵抗を見せる連合軍相手に、第10機甲師団は更なる兵力の投入を決定した。

これをグーデリアンとラインベルガーは、23日には陥落すると予想を決定。

その間に、第1機甲師団はカレーへ、第2機甲師団は直接ダンケルクへと向かう。


5月21日夜。

この日は史実であれば、アラスの戦いが始まるのだが、徹底した空爆と砲撃支援及び、完全に敵の進撃ルートを読んだ待ち伏せによって、完膚なきまでに連合軍の戦力を潰した。

アハトアハト、凄かったな!

後、あのシュトゥーカ隊の綺麗な爆撃、一度後部座席に乗ってみたいもんだ!

ラインベルガーは第19機甲軍団司令部の天幕の外で、座って夜空を見ながら、目下の目標である、攻撃停止命令の回避について考えていた。

・・・多分、やるなら明日の夜だろう。

ラインベルガーの把握している限りだと、というか、通信兵に聞いた情報だから確実だろうが。

第19機甲軍団司令部の通信機器は、でかいのがいくつかあり、その中の一つに、軍集団司令部からの受信を担当しているものがある。

それが何かしらの理由で使えなくなると、軍集団司令部からの命令は届かなくなる。

しかし、困ったことに受信を担当している機器は二つあり、どちらか一方を破壊するだけではもう一方が受信してしまう。

簡単なことではないが、同時に破壊する必要がある。

何か、きっかけが必要だ。

とりあえず、歩こう。

気分転換を兼ねて、司令部付近を歩く、夜風が気持良い。

そのまま、鹵獲した兵器の置いてある倉庫へ向かう。

警備の兵が疲れていたようで座っていたが、ラインベルガーが来たことに気付き、慌ててビシッと敬礼する。

「あぁ、休んでくれていて構わないよ」

「いえ、これは私の仕事ですから」

「じゃあ、質問しても?」

「鹵獲した兵器についてはお答えできます」

「これ、もらってもいいかい?」

手榴弾とブローニング拳銃を手にとる。

「え、あ、いや、構いませんが、手榴弾ですか?」

「そうだよ。何しろ、司令部が一度ゲリラに襲撃されてね」

実は進撃の道中、一度司令部は襲撃を受けている。

少人数で、言ったら悪いが素人のような相手だったが。

それ以来、ラインベルガーは自身の行動に幅が出るように、持ち物を多めにしていた。

無論、銃火器もである。

それを話すと警備兵は納得したようだ。

「なら、納得です。手榴弾は一つで足りますか?」

「あぁ問題ないよ・・・いや、一応もう一つもらっておこうかな」

ラインベルガーは「不測の事態」を危惧し、二つもらった。

・・・自軍のものを使えば良いのでは?と、警備兵は思ったが、特段気にするものではないと考えた。

ラインベルガーは、司令部の天幕の中へ戻った。



「うーむ、凄まじいスピードだ」

軍集団司令部にて、情報を確認していたのは国防軍年長者、ルントシュテットである。

彼は本来退役していたが、戦争が始まると復帰した人物である。

彼は電撃作戦に控えめな思考を持っており、進撃スピードにいささか不満があるようだった。

「グーデリアンの軍団は前に出すぎだ、これでは他の部隊と足並みが揃わない」

悩んでいると、アブビル陥落の知らせが司令部に入ってきた。

更には、ブーローニュの陥落は23日との知らせと、更にはカレーも攻撃に入ったと知らせが入る。

・・・ここらで一度体制を整える必要があるな。

ルントシュテットは悩んだが、一人で決めてしまった。


5月22日夜。

第19機甲軍団司令部にて。

ラインベルガーは夜風に当たって、冷静に夜空を見ていた。

・・・やるか。

とりあえず、司令部の天幕の中に戻る。

「おかえり、ラインベルガー少佐」

「お疲れ様です、バイエルライン少佐」

フリッツ・バイエルライン。

彼も優秀な指揮官の一人で、ネーリング大佐と似たようなタイプである。

気になったら調べてみると良いだろう。

「ラインベルガー少佐、ダンケルクをどう考えるかな?」

「最重要目標の一つです。将来的なことを考えると、落とすべきでしょう。30万を超える大軍もセットにして」

「君なら、ダンケルクにどう防衛ラインを構築する?」

「そうですね・・・兵力を活かした全周防御でしょうか。どこか一つでも抜かれたら、たちまち大混乱となりますから」

「まぁ、それしかないか」

「というより、敵に士気の高いやつはいないかと。いてもイギリス軍の根っからの軍人でしょう」

「確かにな。相手の立場になって考えると、確かにそうだ」

「話の途中ですが、今一度外へ出ます」

「あぁ」

しばらくして、いきなりの爆発と銃撃音が鳴り響いた。

場所は暗くて分からないが、音のするほうへ警備兵が走っていった。

そこにいるのはブローニング拳銃を持ったラインベルガーであった。

警備兵が状況を聞くと、どうやら用を足しに行った先で、連合軍のゲリラらしき数人の者が手榴弾を車両内に投げ入れており、すぐさまそのゲリラに向かって手持ちの武器で発砲したらしかった。

「どうした!何があった!」

グーデリアン閣下と幕僚が急いで様子を見に来た。

「ゲリラにやられました」

ラインベルガーは手榴弾をくらった車両を見に行く。

中は火薬の匂いがするが、よく見るとでかい通信機器がやられてしまっていた。

何事だ?と、人が集まる。

その中に、人だかりを割って入ってきた通信兵がいた。

状況を見て絶句する。

「あぁ・・・なんてことだ・・・」

「担当の通信兵だね?」

「はいグーデリアン大将閣下。私がこの破壊されてしまった通信機器の担当者です。丁度用を足しに行っていた時でした・・・」

「ふむ、それは仕方がないな。いやなに、気にすることはない。むしろ、君は幸運だ。殺されてしまっていたかもしれない」

「いえしかし・・・これでは軍集団司令部からの通信が・・・」

「あーそれはそうだな」

グーデリアンは瞬時に察し、ラインベルガーを見た。

ラインベルガーはニコっと返す。

グーデリアンは軽く笑った。

「つまるところだ、これからの行動の全責任は私が持つわけだ!」

これを聞いて幕僚は理解する。

これから始まる一大事を。

全員不安よりも、わくわくする感情が勝った。

ラインベルガーは何度も実感したことを、再度確認した。

史実を変えるこの気持ちを。


次回、「ダンケルクを突破せよ!第二段階」

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