監獄与太郎 その1
自作シナリオです。
目が覚めたら見知らぬ部屋にいた。取り敢えず記憶を手繰れる所まで思い出す。
たしか、散歩している途中で見知らぬ男に
「科学者の湯川アマルガムだな。来てもらうぞ」
と言われるや否や体に電流が走って……。
つまり、拉致されたのだろう。だが私がヒーローとは知らなかったのだろうか、一般人向けの拘束しかされていない。となれば、することは一つだろう。
「変身」
ヒーロースーツを身に纏い、力ずくで拘束を破壊。ついでに部屋の鍵も破壊して脱出する。電波が届かないためHAに連絡を取ることもできず、気の向くまま出口を探してウロウロしていと、ある人物を見つける。
HAの高官である寺田与太郎だ。顔を見たことがある。こっそり声をかけると、ギョッとした表情でこちらを見て、その後にコッソリ話し出す。
「おぉ、ヒーローか……ワシも捕まっていたんだが何とか抜け出して逃げ出そうとしとるんだ。ヒーローがいるなら心強い、一緒に連れていってくれんか?」
連れていきたいのは山々だが、まずは本人確認をする。バッジよし、ほっぺ引っ張りよし、変装の可能性はなさそうだ。改めて同行を快諾する。
「こちらこそよろしくお願いします。ですが現在、道がわからず彷徨っている状況でして……」
「それについては先ほど、このアジトの見取り図を確認したから脱出経路はばっちりだ。任せとくれ」
「感謝します」
道がわかるのならば安心だ。寺田氏の道案内に従ってアジト内を進む。出口まであと少しという所で警備兵のような佇まいをしたヴィランのいる広間に辿り着く。寺田氏が言うには
「あやつはここのガードマンの役割のヴィランだ。名前はアビスタッフ。あやつを倒せば脱出はすぐそこだ」
とのこと。であればさっさとアビスタッフとやらを倒して脱出するに限る。私は武器を構え、ヴィランの前に躍り出るのだった。