わたしの幸せ04
星海楓です。
この作品はエブリスタとの同時投稿となっています。
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玄関を出ると、ひりひりと焼けつくような日光が皮膚を照らす。そんな炎天下の軒先で、私の恋人である立秋は立っていた。彼の家は、学校から見て私の家の真逆に位置する。男の子の足で歩いても四十分くらいはかかるのではないだろうか。
それに、立秋は人前で恋人らしい行動を人前で行うことを好む性格ではなかった。放課後、帰りが遅くなった時に送ってくれることはあるが基本的には登下校は共にしない。誘いさえすれば、放課後デートに付き合ってくれるが、基本的には私が先導することが多い。そんな彼が、私のことを自主的に迎えに来てくれた。それはこの上ない幸せだった。
ついさっき、シャワーを浴びた自分に対して感謝をする。新調したばかりの、石鹸の香りがするはずだ。ドラックストアで一緒に選んだものである為、匂いが気に入らないということはないだろう。
「おはよう」
幸せそうな表情をしていたであろう私に、彼は手を差し出した。胸の高鳴りを感じる。気温のせいか自分の血液が沸騰したせいか、暑さが顔に集中していく。もうこの時には、今朝見た夢の不快感はすでに緩和されていて、私は夢の内容を自然と口にしていた
「今日の夢、すごくリアルで怖かったの。交通事故にあうんだよ、しかもすごく体痛いし、縁起悪いよね」
話始めると思いのほかオチが無いということに気が付いた。いくら恋人であるとはいっても、他人の夢の詳細になんて興味があるわけがないだろうと自己嫌悪に陥る。それでも、立秋が真剣に話を聞いてくれていることが嬉しくて、愛されているのだと実感することが出来た。
いつも歩く道のりと同じはずなのに、信号や軒先の花々が輝いて見える。間違いなく目の錯覚であることは、理解している。それでも、この世の現象の全てを科学で説明することは出来ないのだから、もしかしたら本当に輝いている可能性だって捨てきれないだろう。
校舎内に入ると、登校中の生徒と朝練を終えた生徒でごった返していた。そろそろつないだ手を離されるかな。そう思って、立秋を見たが話す様子はなかった。嬉しさから思わず手を強く握りなおした。周囲が二人に熱い視線を送り始めたことから、立秋は手をつないでいたことに気が付いたようだ。顔を真っ赤にはしていたが、つないだ手を離す様子はなかった。 それがまた、嬉しかった。
「帰りも一緒に帰るぞ」
それだけ残して、彼は自分の教室へ向かっていった。
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