私の幸せ01
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この物語はどうしようもなく私の死から始まる。
最悪な目覚めだ。自分が交通事故で死ぬなんて、夢見が悪すぎる。ここまで不快な気持ちになる夢は初めてだった。
カーテンの隙間から青空がのぞいている。少し前までの雨が嘘のようなカラッと乾いた快晴。そんな青空と相反するように、私のシーツはぐっしょりと汗で湿っていた。
とりあえず、シャワーを浴びよう。そう思い立って部屋を出ると母がいた。
お母さんはわたしの顔を見るなり、「顔色悪いけど学校休む?」なんて心配してくれるが、悪夢を見たというだけの子供じみた理由で学校を欠席したいと言うわけにはいかなかった。
「大丈夫だよ、少し怖い夢を見ただけだから」となるべく明るい表情を作り母の前から立ち去る。そうしなければ、お母さんの顔を見た安心感で泣いてしまいそうだった。怖い夢は私の精神を不安定にしていた。
いつもよりも少しだけ熱めに設定したシャワーを浴びると嫌な気持ちも一緒に流すことが出来たのだろう。少しだけ気持ちが落ち着いていた。どうせ夢なんだからと思うことにして、着慣れた制服の袖に腕を通した。
校舎の前にはもうすでにたくさんの生徒が登校していた。
「芹那、おはよう」
ただの挨拶にさえ胸の高鳴りを抑えられない。声をかけてきてくれたのは、私の意中の少年だった。他の同級生よりも整った容姿をしている私の恋人。冷淡な性格に思われることもあるが仲を深めれば心根の優しい少年だった。そんな彼にずいぶんと長い期間私は片思いをしていたものだ。
だから、ホワイトデーに彼から告白された時には、涙が出るほど嬉しかった。何度も夢でないことを親友に確認して、煙たがられたことをよく覚えている。
あぁ、ちゃんととシャワーを浴びてきてよかった。きっと私は今、石鹸の匂いだ。
「立秋おはよう。聞いてよ、今日すっごい怖い夢見たんだよ」
そんな軽口を叩けるくらいには、今日の夢の恐怖は緩和されたらしい。
「どんな夢を見たんだ?」と聞いてくれる彼に、私は熱弁をふるった。
登校中か下校中かはわからないけど車にひかれる夢を見て、それがとてもリアルで鮮明な夢であったことを伝えると、それがあまりにもオチのない話であることに気が付いた。
自分ではすごい夢であったように感じていたが、他人が聞けば本当にただ少し夢見が悪かっただけのなんてことない話だろう。
自分で話しておきながら、多少の恥ずかしさを感じてしまう。顔に熱が集まる。鏡をみて確認したわけではないが、おそらく赤く染まっているだろう。それでも彼は最後まで話を聞いて、今日は送って帰るよと、頭をなでていったのだ。
なんて幸せなんだろう。そう感じる一方で、たまにその幸せに不安を感じてしまう自分がいた。
人生がプラスマイナスゼロになるようになっているのであれば、きっともう私にはマイナスしか残って いないだろう。
また明日の夜に更新します。