第1話 暗黙の中の光
ここは、どこだろう?
真っ暗で何も見えない。
「お〜いっ、棗ぇ〜、椿ぃ〜。」
と、呼んでみたものの返事もかえってこなければ明るくもならない。
「へ、へっぷしッ!」
うぅ〜、寒くなってきた。
その場に丸くなるように座り込む。
……
…
やばい、意識がもうろうとしてきた。
だ、誰か…た、たす、け…って、誰もいないんだっけな……わ、悪い棗、お前のコンプレックス完全に治してやれなかった。
椿も、お前にちゃんとありがとうって、親友でいてくれて、俺のコンプレックス治してくれてありがとうって言えなかったな。
わ、悪い……もう、だ、駄……
「大丈夫だよ、私が守る。」
「ほら、しっかりしてください。」
「まさかこんなとこで死んだりしないよな。」
「ほら、お兄ちゃん、みんな待ってるから帰ってきて。」
!?
な、なんだ!?
いろんな人の声が……ッ
目を開けると、一つの光があった。
な、なんだ?
『帰って来なさい。待ってるから。』
その声には知らない声もあったが、今の俺にはそんなことは関係なかった。
みんなが、待っててくれる。
俺の帰るべき場所でただ、ただ俺の帰りを待っててくれる。
それが嬉しかった。
そんな嬉しさが俺の力になった。
そうだった。俺には帰る場所があったな。
みんな、待っててくれる。
みんな待っててくれ、今帰るッ!
そして、俺はその一つの光にむかって走り出した。
感じる空気が肌を切るように痛い。
吐く息が凍るように寒い。
けど俺は走り続ける。
みんなが待ってる光の先へ。
そして光にたどり着いた。