母が残した最後のビデオレター
『ん……?これちゃんとついてる?まっいっか。
私は今、病院にいるよ。元気してる?私は見ての通り元気だよ!!というかお母さまに聞いたよ!?私が倒れてから何にも口をしてないんだってね?そんなのダメ!!!ちゃんと食べないと帰ってからお父さんの大好きなカレーライス作ってあげないんだからね!!』
(ノイズ音)
『それとそうだ!マキくん!五歳の誕生日おめでとう!!新しいお母さんとどう?上手くやっていけてる?いやぁー、お父さん頼りないからなー!心配なんだよね!!!まぁ、それでもお母さんはちゃんと見てるから頑張って大きくなりなさいよ!!これはお母さんからのお願いだ!!』
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『よっ!!マキくん、十三歳の誕生日おめでとう!!もう中学生かぁ!!早いものだね?身長どんくらいになったのかな?140ぐらい??もしかしてお母さんをこして150とか60行っちゃった?まぁ、そっちのお母さんの身長はわからないけどね!』
(ノイズ音)
『ていうかお父さん!どんな人選んだのかなぁ?私と同じで落ち着きある人?なに?落ち着きないっ?だまらっしゃい!!んじゃ、とりあえずお母さんからのお願いだ!!ちゃんと新しいお母さんとお父さんを支えてあげてね?……んじゃ!!』
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『やっハロー!!マキくん!!!十六歳の誕生日おめでとう!!!早くも高校生か!!!いやぁー、思い出すなぁ……実はねお父さんと出会ったのこの時でこの頃から私にゾッコンなのよ!!ゾッコン!んで告白の時のセリフ……じゃなくて話が逸れる所だった。どう高校生?まさか悪さなんかしてないよ?ウチの可愛いマキくんは非行に走るわけないか!!ってんぁっ!!』
(カメラが倒れ、画面が変なところを写す)
『誰かぁー!誰か直してください!!私直せません!!……誰も来ない……まっこのままでいいかんじゃ、マキくん!私からのお願い!困ってる人がいたら助ける事!!いいね!……ってお医者さん!!それ切って直してください!!」
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『うぇーい!マキくん〜?二十一歳の誕生日おめでとう!!もうお母さんと同い年だねぇ?お父さんに似て男前になっちゃった?やだー!私ったら自分の息子に破廉恥な事聞こうとしてるぅ!!』
(しばらくのノイズ音)
『はぁ……はぁ……ふぅ……おっとごめんね。こんな見苦しい所見せて?実はこれ撮ってるの余命一週間宣告された時なんだよね……だから私急いでこれを急いでコソコソ撮ってたの。多分、お父さんにもバレてなかったと思う……』
(ノイズ音)
『なんで……!?なんで私がこんな目に合わなきゃいけないのよ……!!私悪い事してないのよ!?私は!!普通の人生送って幸せに暮らしたかっただけなのに……たった一つの幸せすら許してくれないの!!』
(ノイズ音)
「ごめん……最近精神的におかしくなってきてるの……ちょっと吐いて落ち着いた……よし!こんなママだけど最後の望み聞いてるかしら?実はね二つあるの!一つは…………幸せになりなさい。そして運命の人に出会ってその人を幸せにしなさい……それが一つ!!もう一つはお父さん!!もし私の事でうだうだ言って今のお母さんに迷惑かけてるなら……いっそ私の事なんて忘れてしまいなさい!!そうじゃなきゃ幸せになんないんでしょ?そんなの……私が許さないわ……!私を理由にしないで勝手に幸せになりなさい!!どうせ、もしかしたら天国で会うのかも知れないんだし、その時まで私は待ってるわ。もちろん!ゆっくり来る事!んじゃ!これを最後にしてビデオを全部終わり!!大事に取っとくもよし!いらないからと捨ててもよし!……いや、それは私悲しいかも……とりあえず!じゃぁね!お医者さんが待ってるから』
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「なんだよ……これ?」
「マキ……」
「こんなの……!」
「マキ、下を向くな。あの世でお母さんが悲しむか馬鹿にしてる……無理やりでも笑って前を向け」
「……うん……頑張ろう」
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「とりあえずお墓参り行くか!」
「了解!……あっお母さんも行こうね!」
『あー私、緊張します!』
「あはは、友達感覚で会いにいけばいいだよ!そんな緊張しないで!』