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ド陰キャ吸血鬼は本当の恋に憧れる。  作者: 月刊少年やりいか
角の無い鬼との出会い-プロローグ-
3/43

3話 『思いあがると罰を受けるって話』

 

「やめろよ。この子嫌がってんだろ」


 ナンパされている女子高生とゴブリンとの間に割り入った俺は、筋肉質のゴブリンの拳を片腕で引き留めながらそう話す。


「あぁん⁉︎外野がでしゃばってんじゃねぇぞ‼︎」


 掴んだ腕を振り払おうとゴブリンが拳に力を入れる。


「な……なんだよ腕が……」


 だがその拳が動くことはない。

 完全に俺に押さえつけられ、ゴブリンの顔がどんどん青ざめていく。

 まぁそりゃそうだろう。体格が一回り以上も小さく、マッチ棒のような体格の奴に押さえ込まれてるのだから。


「ここは俺が何とかする。君は下がってて」

「あ、ありがとう」


 少女はそう言うと数メートル後ろの河川敷の坂に身を隠した。


「さて……もういいか」


 少女が距離をとったのを確認したところで、掴んでいたゴブリンの腕を離す。


「テメェ……兄貴になんてことを!オレ達の邪魔をした落とし前、ちゃんと理解してるよなぁ?」

「そうだぜ!オラ達の親分に傷をおわせたこと、後悔させてやるべ!」


 青ざめたゴブリンを守るような形で、取り巻きのゴブリン二人が割って入った。

 リーダー格のゴブリンをAと置くなら、こいつらはゴブリンBとCといったとこだろうか。


「そっちこそ……しばらくナンパ出来ない覚悟でいろよ?」


 まぁ所詮はゴブリン、何人集まろうが敵ではない。

 そう思える絶対的な自信が、俺にはあった。

 もう何年もこの力は使ってはいないが、俺は


「今日の俺は部活に入れられたとか、部活に入れられたとか、部活に入れられたとかのせいで少し苛立っててな……」


 意識せずとも、恨みのこもった言葉が俺の言葉が漏れた。しかも三回も。


「だから……手加減しねぇから覚悟しろよ!」


 眼鏡を外し、全身の筋肉に意識を集中させると、体が急激に熱を帯び、眠っていたヴァンパイアの力が解放される。

 染料材で染めていた黒髪が本来の月色に輝く金色に、全身の毛穴からは蒸発した血液が溢れ出し、赤い霧が俺の体を覆った。


「あの金色の髪……サキュバス⁉︎」

「いや待て!あの目の色にあの赤い霧――ヴァンパイアだぜアイツ‼︎」

「ヴァ……ヴァンパイア⁉︎なんて厄介なもんに喧嘩をオラはふっかけちまったんだべさ……」

「ヴァンパイアとサキュバスのハーフなんて……そんなのいるんかよ」


 恐怖と驚愕の入り混じった顔で、ゴブリンBCが俺を見つめた。

 ヴァンパイア――それは怪人の中でも、特に優れた戦闘能力を持つ種族。血の力により強化されたその肉体を駆使すれば、敵う種族などいないと言われている。

 俺はサキュバスのハーフだから、純血に比べればそこまでの力は無いが、ゴブリン程度であれば楽勝だ。


「へっ、ヴァンパイアだからなんだってんだ」


 豚鼻をふがふがと鳴らしながら、リーダー格のゴブリンAが立ち上がった。


「たしかに噂によれば強いらしいが、ハーフって事はヴァンパイアの力は半分だ。いくら最強のヴァンパイア族って言っても、半分なら勝機はあるぜ!なんせ俺らは三人――ゴフッ⁉︎」


 話すゴブリンAの顔面を、ゴブリンBがストレートパンチをかました。


「て……テメェ何しやがる‼︎気でも狂ったか⁉︎」

「いやぁ……すまねぇなぁ兄貴……俺は、アンタよりあの男に着くことにするよ。やっぱ時代は細マッチョよ」


 言ってゴブリンBが更に拳をふるい、ゴブリンAをノックアウトさせた。

 たしかに俺はハーフヴァンパイア。力は純血に比べれば弱いかもしれない。だが、ハーフだからこそできる芸当というものがあった。


「どうですか淫鬼夜さん?俺やってやりましたよ?」


 チャーム。本来は異性にしか効かないその能力だが、ヴァンパイアの血の力により強化されたそれは、一人であれば同性にもかけることが出来る。

 これが、ハーフヴァンパイアだからこそ出来る芸当だ。


「よしよし偉いな。じゃあ後は泳いで遊んでていいぞ」

「あいあいさー!」


 ゴブリンBは敬礼すると、河川敷の崖下に猛ダッシュし、川に飛び込み、そこで泳ぎ始めた。


「やれやれ……本当に怖い能力だな、これ」


 俺に敵意を向けていた相手でさえも、従順な奴隷に変えてしまうチャーム。

 改めて過去の自分が、この力で異性の気持ちを捻じ曲げていただけという事を感じた。

 まぁそれでも、チャームが無い俺をキモいだの何だの言うのは酷いと思うけどな、リアル女子達。


「オメーよくも二人を……!オラが一人でのしてやる!」


 シャドーボクシングで威嚇しながら、ゴブリンCが俺を睨む。


(そうか、まだ残っているのをすっかり忘れていたな)


 ふと崖下を見ると、河川敷に敷かれた野球のグラウンドの上に、巨大な建設機械が置いてあるのを見つけた。

 巨大な車体に、それと同じぐらいの大きさの車輪がついたロードローラーだった。


「そこでちょっと待ってろよ」


 俺はゴブリンCにそう言い残すと、高速で崖を下り、アフリカ象一頭分もの重量があるロードローラーを持ち上げる。

 そして跳躍し、夜の満月をバックにゴブリンの前に現れると、俺はニヤリと笑った。


「ロードローラーだ――」

「ひいいぃぃ――――⁉︎」


 あまりの恐怖にゴブリンは甲高い悲鳴をあげると、白目を剥いて気絶した。


「一度やってみたかったんだよ。ありがとう、夢が叶った」


 ロードローラーをその場に下ろす。

 やっぱりヴァンパイア種族の夢といったら、このロードローラーを持ち上げる事と、気化冷凍法だ。


「はぁ……久しぶりにこんな動いたな」


 ふぅ……とため息をついたところで、背後から鈴を転がしたような澄んだ声が俺を呼んだ。


「貴方、見た目の割に強いのね」


 隠れていた少女が俺の前に姿を現すと、そう言った。


「見た目の割にって……まぁいいか、事実だし」


 改めてその少女を見る。

 その少女は、どことなくかなでと風貌が似ていた。

 艶のある長い黒髪、夜闇でも分かる透き通った白い肌。

 綺麗だな、と二次元専門の俺でもそう感じてしまうぐらいに、綺麗な少女だった。



 きっと……彼女に流れる血液も、さぞ美味いんだろうな。



「え……?」


 一瞬、頭に流れたその思考に俺は疑問を持った。

 なんだ今のは?俺は何を考えた……?美味そうって、俺は何を――


 どくん


 心臓が跳ねる。

 急激に喉が渇いていき、全身の血の気が引いていく。


 この感覚に、俺は覚えがあった。

 それは、ヴァンパイアの血の力を使い過ぎたことによる、本能の暴走だった。


「まさかたったあれだけで……」


 チャームと共に、ヴァンパイアの力を使わなくなって3年。

 日頃からランニングなどの基礎体力作りを怠った事はないが、まさかこれ程までに自分の体が衰えているなんて。


「どうしたの……?顔色が悪そうだけれど」


 心配そうな顔つきで少女が俺の顔を覗き込んだ。

 少女の顔を間近で見た事で、ドロリとした粘り気のある唾液が口から自然と溢れ出た。


「救急車呼びましょうか?」


 今の俺は、本来のヴァンパイアとサキュバスのハーフとしての力を取り戻している。

 すなわち、この女にもチャームはかかっているということだ。なら問題はない……。

 俺は彼女の制服の襟を掴むと、一気に肩まで引き下げた。


「きゃっ……な、なに⁉︎」


 服を乱暴に流されたことで、少女が悲鳴を上げた。

 だがそんなものに構っているわけにはいかない。

 咎は後で受ければいいさ、今は一刻も早く血を飲まないと……。

 俺は構わず口を開くと、彼女の首筋に噛み付き吸血する――


 そのはずだった。


「やめて!」


 噛みつく直前、彼女が俺の頬を叩いた。

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