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1話

先日行われた魔力判定の儀式でのことだーー




「ラナ!」


名前を呼ばれて私は振り向いた。


「早く行くよ!遅れちゃう」

「分かってるって!まってよ!」


同い年のソフィはもう家を出るところだった。

今日は魔力判定の儀式だ。


魔力測定とは、その名の通り魔力があるのか、そしてそれがどのくらいの大きさなのか調べる事が出来る。

魔力は半分近くの人が持っているが、実用的に仕えるのは一握りの人間だけである。


「じゃ、行こうか」


私たちは孤児院の隣にある教会ではなく、街の中心近くにある教会に向かった。

大きな教会でしか儀式は受けられないからだ。


「もしも私たちに魔力があったら」

「それもすんごい大きいやつ!」

「何したい?」

「私は大金持ちになりたい!」


そんなたわいもない夢を話していたら、近くに住んでいる同い年の男の子たちがいた。

まあ、あまり話したこともないから一緒に行くことはないけれど。

やっぱり彼らも夢を話している。

みんな考えることは同じだね。


話しながら歩いていると、大きな教会についた。

この教会に入るのは初めてだ。

沢山の人で溢れている。


「ラナ、あれ見て。大きな像。あれが神様なのかな」


ソファが大きな女性の像を指差す。

確かに神々しい。

んー、でも。


「天使様かも。頭の上に輪っかついてるし」

「あ、ほんとだ」


人の流れに乗って進んでいく。

親が付いてくる人もいるからすんごく混むんだ。


「5つに分かれるんだって」


急にソフィが言った。


「え?なんで分かるの?」

「え、さっき神父様が言ってたじゃない」


気づかなかった…。


私たちは一番近い列に並んだ。

一人一人水晶に手を乗せていくんだ。

結構時間がかかる。


暇を持て余しながら待つこと1時間くらい。


「次の方どうぞ」


ようやくシスターに呼ばれた。


「身分証明証を」


冒険者ギルドのカードを見せる。

冒険者ギルドと言っても、その中にある子供用お手伝いコーナーのカードだ。

それでも立派な身分証明証になる。


「ラナさんですね。この水晶に手を乗せてください」

「はい」


私は言われた通り手を乗せた。

水晶の中心が淡く金色に光った。

キラキラしてて綺麗だった。


シスターさんは少し驚いて


「加護持ちですね」


と言った。


「奥の部屋へお進みください」


奥の部屋?


ソフィに目配せすると、私は違うシスターさんに連れられて奥の部屋へ入っていった。


とても綺麗な部屋だ。

私ですら分かる。

この部屋はすんごくお高い。


部屋には男の人がいた。

お偉いさんな気がする。


「どうした」

「神様のご加護をお持ちの方です」


神のご加護?


「そうかそうか。お名前は?」

「ラナです」

「ラナよ。私はアンディといいます。そこにお座りなさい」


私は男の人の前に座った。

意外と優しそうな人だ。

目尻には笑い皺があり、温和そうなグリーンの目は優しく細められている。


「君の水晶は金色に光ったんだね?」


私はうなずいた。

緊張して声も出ない。


「金色の光はね、神様のご加護を受けている人にしか出ないんだよ。普通の魔法使いの水晶は青く光るんだ」


そうなんだ…。


「加護持ちの人は大抵教会に仕えている。私もそのうちの1人なんだけどね」


男の人は自分の掌を私に見せた。


「こうやってすると光るんだよ」


確かに、掌になにかのマークみたいなものが浮かび上がった。


「私は決断の神ディアス様のご加護を受けている。君の紋章も見せてくれないか?」

「あの、どうすればいいんですか?」


アンディさんは一層柔らかく笑って言った。


「暖かいものを手に集めるイメージだ。利き手はどちらだ?」

「右です」

「それじゃあ左手に集めてみよう」


私は左手に暖かいものを集める?イメージをしてみた。

うん、分からない。


「そうだな、血流をそこに集めるイメージだ」


あれか、痺れた足に血が通いだすときのあの感じ。


「お!出来ているじゃないか」


左の掌に紋章が浮かび上がっていた。

なんか神々しい気がする?かな?


「見せてもらってもいいかな?」


アンディさんが私の掌をじっと見ると、シスターさんが慌てたように分厚い本を持ってきた。


「いや、必要ない。見ればわかる。これは母なる大地の女神の紋章だ」


シスターさんが明るい声を上げた。


「まあ!ラナさん、良かったですね。母なる大地の女神のご加護だなんて」


母なる大地の女神…。


知っている。

この世界の大地を作った神様だ。

この世界は、母なる大地の女神と天空を司る神々が作ったとされている。


「君は大物になれるぞ。おめでとう」


アンディさんはもっと優しく目を細めた。


「すぐにでも教会に入りなさい。努力次第で王都の教会に行くこともできるかもしれん」


え?


「身分証明証によると親がいないそうだね。私たち教会が君の家になろう」


ええ?


「知っての通り教会は神に仕える神聖なお仕事をする。やりがいも感じられるよ。きっと。まあ、恋愛は禁止だけどね」


え、え!?


「恋愛禁止なんですか!?」


アンディさんは明らかに表情を曇らせた。


「当然だよ。生涯を神に捧げるんだからね」


ええ、嫌だ。


絶対に嫌だ!!!



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