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第五話 修行


〈〈進化状態に移行します〉〉

〈〈これより進化するまで、神域技能(ゴッドスキル)《EXP吸収》によって得られるすべてのEXPは進化用EXPとして保存されます〉〉

〈〈進化条件は、EXP:115以上、進化用EXP:10以上です〉〉


 こんなアナウンスとともに進化状態に移行してから、3日が経った。


 森を徘徊し、狩って狩って狩りまくった。もちろん俺一人でである。


『わたしもいました-!』


 まあ、リースを含めると二人だな。


 日が出れば、森に出て、日が沈めば、洞窟に戻る。

 魔物は、せいぜい強くてもDランク上位ってところで、あのオークほど強い魔物はいなかった。


 なぜ、あのオークはあんなに強かったのだろう? リースはなんか変だと言っていたが、原因は分からないらしい。


 食べきれない魔物はそのまま放置していたが、もったいないとかそういう風には思わなくなった。俺はこの環境に大分毒されているのかもしれない。

 今のステータスがこうだ。


名前:宮勝秀

種族:ゴブリン

特殊進化状態:ゴブリン→ゴブリンレア

      :条件:EXP:115

         :進化用EXP:10

年齢:0

EXP:106

進化用EXP:9

神域技能(ゴッドスキル):《EXP吸収》《進化の系譜》

究極技能(アルティメットスキル):なし

通常技能(ノーマルスキル):《魔力操作B》《力補助魔法(パワーアシスト)C》《水刃魔法(ウォーターカッター)C》《障壁魔法(シールド)B》


 EXPは1しか上がらなかったが、進化用EXPは9溜まった。


 EXPは《EXP吸収》以外にも増やす方法がある。その方法は修行である。

 スキルを何度も使い、上達すればEXPは上がるのだとか。実際、3日間の狩りで少し上達した結果EXPは1増えたのだ。


 現在は進化状態なので《EXP吸収》によって得られるEXPはすべて進化用EXPになる。EXPは訓練で集めるしかない。進化用EXPの条件はもうすぐ達成できるが、EXPの方が問題だ。このペースでいくと進化まで、あと27日もかかる、長い。


『じゃあ、修行しましょう!』

(修行? どんな?)

『《魔力操作》の修行です! 《魔力操作》は魔法の基礎で大切ですし、ヒデにぴったりの修行法がありますから』


 修行場所は洞窟の奥がいいと言うので、俺が生まれた洞窟の一番奥にやって来た。最奥とはいってもこの洞窟はあまり深くない。辛うじて、外から光が差すのが分かる。


『まず、左目の内側の端に、右指を横向きに置いてください』

「ぐぎゃぎゃ(こうか?)」


 右指の人差し指を左目の瞼の上、内側の端の方に乗せる。


『そうです。そしたら《パワーアシスト》を使いながら押して下さい』

「ぐぎゃ……ぎゃぎゃ(押し……たら、左目潰れるが)」

『はい。そうです。潰します』


 ………………。

 リース、なんかストレス溜まってる? それとも俺がなんか嫌なことした?


 少しリースが怖くなる俺。

 リースはブンブンと首を横に振る。


『違います。ヒデの修行のためです。盲目になることで、《魔力操作》の修行になります。安心して下さい。進化すれば、目は治りますので』


 予想以上のスパルタだった。この白髪の少女は、前世ではストイックに剣の修行をしていたに違いない。



 ~~1時間後~~


 俺は闇の中にいる。まだ、両目が痛い。


 《魔力操作》は魔力を操作するスキルであり感知するスキルでもあるらしい。

 リース曰く、魔力の操作ができれば感知もできて、逆に魔力の感知ができれば操作もできる。そして、魔力の操作の訓練は体内魔力を使うが、魔力の感知には体内魔力を必要としないから、効率がいいんだとか。


 現状、俺は体の外にある魔力を感知することは出来ない。体の中にある自分の魔力なら感じ取れるし、ある程度操作することも出来るのだが……


 そして、リースは修行が終わるまで、つまり進化するまで俺と話さないらしい。危険が迫れば教えてくれると言って消えてしまった。

 なので本当に真っ暗だ。リースもいない。ちょっと寂しく怖い。



 ~~1日後~~


 起きても真っ暗だ。だが、慌ただしかったゴブリン生活から解放されて、久しぶりにゆっくり考えられる――と言いたいところだが、俺にそんな余裕はない。

 そもそも、この場所は本当に安全なのだろうか? リースは危険が迫れば教えてくれると言っていたが、教えてくれたところで何も見えないから何も出来ずに死ぬんじゃないのか? 俺は何度もそう思い、その度に修行を終わらせるために頑張ろう! と思うがそもそも何をすれば良いのかも分からない。


 ただいつの間にか、呼吸に意識を集中すると、魔力を含んだ空気を吸っているのが分かるようになっていた。俺はその感覚を大事にして、ゆっくりと呼吸を続けるのだった。



 ~~さらに1日後~~


 腹が減りすぎて、お腹と背中がくっつきそうだ。

 でも、周りの状況が少し感じ取れるようになってきていた。自分の周りの10センチくらいならうっすらと分かる。下の方に洞窟の地面があるのが分かる。とはいえ、表面のゴツゴツは感じ取れない。


 進化用EXPがあと1必要だから出なければならない。リースは『ある程度周りの状況が感じ取れるようになったら、外にでてください』って言っていた。

 そして洞窟を出るまで魔力を一切使うなとも言っていた。


 もう既に考える気力はなく、自分自身が何故こんな状況なのかもよく分からなくなってくる。

 正確には、考える気力がないというのが半分、考えないようにしているのが半分、といったところだ。お腹が減って考える気力がなくなっている上に、考えてしまうと思考がネガティブな方向に行ってしまうのである。

 そして、俺は寂しい……リースに会いたい。どうしようもない孤独感と無気力という性質の異なる負の感情が二つ、心の中にある。


 だが、もし仮にリースと何かを話せば、確実にこの負の感情が霧散するだろう。今まで俺は、精神的な面でリースに助けられていたのかもしれない。そう思うと、少しだけ心が和らいだ。



 ~~そのまたさらに一日後~~


 大分、周りの景色を感じ取れるようになってきた。洞窟内を歩いても壁にぶつかったり転んだりすることはない。自分を中心として半径2メートルくらいの範囲を感じ取れる。十分近いところでは、洞窟の表面のゴツゴツも感じ取れる。


 もうそろそろ出よう。


 お腹はすごく空いているが、精神的な面は持ち直した。人間楽しみがあれば、なんやかんや、やっていけるのである。


 そして、そろそろ洞窟から出ようかな、と立ち上がった時にそれは聞こえた。


〈〈通常技能(ノーマルスキル)《魔力操作B》が通常技能(ノーマルスキル)《魔力操作A》になりました〉〉

「ぐぎゃ!?(うお!?)」


 ………………。

 ……驚いて声をあげてしまってが、なんかむなしいだけだな。


 そういえば、ステータスって見えるのか?

 気になったので心の中で「ステータス」と念じると見慣れた半透明のパネルが見えた。


名前:宮勝秀

種族:ゴブリン

特殊進化状態:ゴブリン→ゴブリンレア

      :条件:EXP:115

         :進化用EXP:10

年齢:0

EXP:200

進化用EXP:9

神域技能(ゴッドスキル):《EXP吸収》《進化の系譜》

究極技能(アルティメットスキル):なし

通常技能(ノーマルスキル):《魔力操作A》《力補助魔法(パワーアシスト)C》《水刃魔法(ウォーターカッター)C》《障壁魔法(シールド)B》


 やっぱり、視力がなくても見えるのか。

 ……ていうかEXP:200って。すごく上がったな。


 そして、俺は洞窟を出た。

 3日間何も食べていなかったから、とにかく腹が減っている。何でもいいから早く食べたい。そんな思いで森を歩く。俺には視力がなく、真っ暗闇の中、歩く。


――――――だが、魔力は感じる。


 少し歩くと、動く何かを感じた。放たれている魔力量も木や地面に比べると遙かに多い。


 だから、離れたところにいたそれに気が付く。

 魔力を感知して周りの状況を感じ取っていた俺は、本当に近くにある地面や木しか感じなかったから、走らずゆっくり歩いていた。


 注意深く魔力の感覚に集中すると、それは何かしらの生き物の集団であることが分かる。

 生き物を大きく感じるなんて《魔力操作》はかなり優秀だ。全方位への感覚もある。これがあれば、不意打ちされる可能性はないだろう。


 その生き物は複数いるようだ。多分10匹以上。俺のすぐ目の前には数本の大木があり、その集団は俺の存在に気付いていないと思う。動きからして、戦っているようだが漁夫の利を狙わせて貰おう。狙うのは、一番魔力が多い奴だ。


 水が、俺の体の周りから霧のように現れ、集まり、三日月型となる。


 俺は戦っているらしき集団の中で最も魔力量の多い獲物に向けてウォーターカッターを放つ。ただ、その獲物との間にどの程度木があるのか分からない。だから、ウォーターカッターに障害物を躱す機能をつけて放つ。


 三日月型のウォーターカッターはその集団とは違う方向に放たれた……が、大きく曲がり、大木を避けてその集団の一匹の首をはね飛ばした。


〈〈通常技能(ノーマルスキル)水刃魔法(ウォーターカッター)C》は通常技能(ノーマルスキル)水刃魔法(ウォーターカッター)B》になりました〉〉

〈〈進化条件を満たしました。進化します〉〉


 そのアナウンスが脳内に響いた瞬間、痩せた一匹のゴブリンが光輝いた。




名前:宮勝秀

種族:ゴブリン

特殊進化状態:ゴブリン→ゴブリンレア

      :条件:EXP:115

         :進化用EXP:10

年齢:0

EXP:202

進化用EXP:11

神域技能(ゴッドスキル):《EXP吸収》《進化の系譜》

究極技能(アルティメットスキル):なし

通常技能(ノーマルスキル):《魔力操作A》《力補助魔法(パワーアシスト)C》《水刃魔法(ウォーターカッター)B》《障壁魔法(シールド)B》

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