第四話 進化?
オークを倒した俺の目の前に残ったのは、オークとオークが倒した十一匹のゴブリン。
食うか。
ゴブリンは横に置いて、オークを食べる。
む、柔らかい。国産和牛のような柔らかさ……まあ、国産和牛なんてほとんど食べたことはないのだが。でも、オーク肉は柔らかすぎないか? これだけ柔らかかったら、もっと簡単に倒せていてもおかしくないはず。俺と戦う前に、ゴブリンたちと戦っていたが、そのときに喰らったダメージももっと大きくなるべきだと思う。
『それはですね、モンスターは生きているときの方が、肉質が固いんです。死ぬと魂がなくなり、魔力が無くなるんです』
(はぁ……魔力かあ)
魔力ねぇ、よくよく考えてみると、全くよく分からない物だ。
そして俺は、オーク肉を食べ続ける。
~~10分後~~
結局、オーク肉を三分の一ほど食べるのがやっとだった。もったいない。
『でも、食べきれなくてもいいのです』
リースが言う。
ん? どういうことだ?
『ステータスを見てください』
名前:宮勝秀
種族:ゴブリン
年齢:0
EXP:104
神域技能:《EXP吸収》《進化の系譜》
究極技能:なし
通常技能:《魔力操作B》《力補助魔法C》《水刃魔法C》《障壁魔法B》
EXP:104? 増えている。
『オークから奪ったEXPの分だけ増えています。殺した相手のEXPのうち一割を奪うのが神域技能《EXP吸収》です』
(じゃあ、あのオークはEXP40くらいだったってこと?)
『細かいところは分かりませんがそれくらいです。Cランクの魔物の基準値はEXP25ですから、あのオークはCランクの中でも強い個体でした。
そして、強い個体をたくさん倒してEXPをたくさん集めれば、どんどん強くなれます。なので、別にオーク肉を余らしてしまってもいいんです』
そもそも、EXPを得られたとしても、肉を余らしている時点でもったいないだろ……とは思うが、強くなるためには仕方無いとも思う。
――*――*――*――
その後、ホーンラビットやアカガラトカゲなど計10匹ほど狩った。なるべく食べるようにはしたが、かなりの量の肉を余らしてしまった。ちなみに、すべてEランクの魔物である。
ホーンラビットは巻き貝のような角を持つ、白い兎であり、かなり素早い。
アカガラトカゲは体長1メートルの鈍重そうなトカゲであり、口からファイアーボールを出す。体が硬い分動きは遅いが、火の玉を放ち、攻守ともにバランスのとれた魔物だ。
やはりEランクというべきか、先程戦ったオーク(Cランク上位)と比べると、本当に雑魚だ。
EXPの方はと言うと、合計で1増えてEXPは105となった。しょっぱい。もうちょっと強い魔物を倒したい。う~ん、なんかさっきのオークだけ明らかに強さおかしい。バランス考えてんの? って感じがする。
日が傾き辺りが暗くなってきたので、あの洞窟に戻ってきた。いろいろと目印を覚えていたのでなんとか戻って来られた。本当に、遠くに行かなくて良かった。
洞窟の中には13人のゴブリンがいる。
基本的にゴブリンは10人ほどの小さな群れをつくる。そして同じゴブリン同士なら所属する群れが違っても争ったりはせず寛容である。群れと群れとの交流も活発であり、もし森でばったり会えば合体して一つの大きな群れになることも珍しくない。その場合は大抵、その後2つの新しい群れに分裂するが。
とリースが言っていた。
なので、俺が他のゴブリンたちから疎まれると言うことはまずない。
森の中、一人で寝るのは危険なので、俺は洞窟の中で寝ることにした。
ゴブリンたちの群れから、不寝番を出してくれるので安心できるという訳だ。
この洞窟はゴブリンたちがよく使うので、布団代わりにホーンラビットの毛皮らしき物がひかれている。
……洞窟の硬い岩の上に直接寝るよりかは大分マシなのだろうが、ふつうに固い、柔らかくない。
とりあえず、今後の目標にふかふかベッドも追加かな。強くなるのと、ふかふかベッドがとりあえずの目標だ。
裸に慣れてしまった俺はそんな風に思うのだった。
――*――*――*――
朝。意識が覚醒すると同時に脳内にアナウンスが響いた。その声は男の声だ。リースではない。
〈〈あなたは成人しました〉〉
〈〈条件を達成しました。現在可能な進化は以下の通りです。
通常進化:魔法士ゴブリン
通常進化:ホブゴブリン
特殊進化:異端ゴブリン
特殊進化:ゴブリンレア
進化しますか?〉〉
おいおい何だこれ。突然なんなんだ。
成人しました、から条件達成しました、の流れだから、進化にはゴブリンとして成人する必要があるんだと思う。
ていうか、もう成人したのか。まだ齢2日、生まれてから3日目なんだが。
俺、進化するみたい。4つも候補あるが、正直どれがいいか分からない。
困惑気味の俺の横で、リースは唸った。
『へー、《進化の系譜》ってこういう風なんですかー』
(ん? 知らなかったのか?)
『はい。《進化の系譜》を持つ魔物は進化可能っていうのは知っていましたけど、こうして実際に聞くのは初めてです……人間は、《EXP吸収》は持っていますけど《進化の系譜》は持っていないですから』
(それでどの進化先がいいかわかるか? あと、通常進化と特殊進化ってのがあるが、これはなんだ?)
『分からないです……』
リースは申し訳なさそうに呟く。
『ゴブザードとホブゴブリンとゴブリックっていうのは知っていますが、ゴブリンレアは聞いたことないです』
じゃあ、ゴブリンレアで決まりだ。きっと希少種は強いからな。
〈〈ゴブリンレアに進化します。よろしいですか?〉〉
YES!!
『え、早っ! 即決過ぎます! 家族でファミレスに行くと、必ず注文するのに時間をかけ、真花ちゃんに「早く注文して」っていつも言われているヒデらしくないですよ!』
それとこれとは関係ない。
希少種という時点で評価値が振り切れてしまって、考えるまでもないからな。
ふう~さあ来い! いやーどんな進化をするか、楽しみだ。
わくわくと興奮する。
〈〈進化状態に移行します〉〉
〈〈これより進化するまで、神域技能《EXP吸収》によって得られるすべてのEXPは進化用EXPとして保存されます〉〉
〈〈進化条件は、EXP:115以上、進化用EXP:10以上です〉〉
………………は?
どういうこと?
《EXP吸収》によって得られるすべてのEXPが進化用EXPとして保存される?
それで、進化条件の一つが、EXP:115以上? 《EXP吸収》なしでEXPをあげる? どういうことだ?
『EXPは《EXP吸収》を使う以外にもあげる方法があります』
え? そうなん?
『修行するとEXPが上がります。むしろ修行するのが一番オーソドックスなEXP上げの方法ですね』
へぇ……
そうなのか。じゃあ、修行してEXPを10上げればいいのか。進化用EXPの方も10だから、こっちはEランクモンスター100体か。
『そうですね』
リースは宙に浮きながら、そう言って白髪を揺らして笑った。
名前:宮勝秀
種族:ゴブリン
特殊進化状態:ゴブリン→ゴブリンレア
:条件:EXP:115
:進化用EXP:10
年齢:0
EXP:105
進化用EXP:0
神域技能:《EXP吸収》《進化の系譜》
究極技能:なし
通常技能:《魔力操作B》《力補助魔法C》《水刃魔法C》《障壁魔法B》