8・じいさんに惚れそう
「ふぁ…頭痛ぇ」
寝起きは最悪、ガンガンと鈍器で殴られているような感覚。久々に二日酔いを経験する。
辺りを見回すと空いた酒瓶や、ビールの缶カラが散乱している。
おお…この量を2人で飲んだのか…
自慢にもならない「おじぃ、明日は仕事だから程々にね」
そう少年に釘を刺され、その日の夜はセーブしながらじいさんと晩酌して眠りにつくが俺はお酒に弱くはない。
その俺がまさかこんな醜態を晒してしまうとは…
寝癖がついた髪をボリボリとかいているとじいさんが入ってきた。
「なんじゃ、ボウズ今起きたのか。寝ぼすけじゃのう。」
そう言われて時計を見ると時刻は朝の8時を回ったところ。
いやいや、じいさんや…なんであんなに浴びるほど飲んでたのにそんなケロッとしてるのさ…
マジで物の怪のたぐいかなんかか?
今なら酒呑童子あたりが先祖とか言ってもすげぇ納得出来るわ…
「酒くさい…」
じいさんの後ろからひょっこりと顔を覗かせた少年は、鼻をつまんでジトッとこちらを睨んでくる。
「あはは…面目ないです…」
「ま…まあ、ひとまず風呂にでも入ってさっぱりしてきたらどうじゃ?」
さすがのじいさんもやり過ぎたかな?と思ってくれたのか頭を指でポリポリかいて少年に風呂場までの案内を頼んでくれた。
すまない、じいさん…フォローありがとう!
じいさんは用があると言い、また出掛けていった。
「お風呂ここ。じゃあ僕片付けするから」
途中まで案内してもらい俺は少年が顎で示した方向を見る。生ゴミでも見るような目線をしりめに脂汗をかきつつお礼をいう。
どうやら俺は少年よりもヒエラルキーの下に分類されたようだ。
違うの!いつもはだいたい介抱する側なんだよ!
あのじいさんが異常なの!なんて叫んでも全然取り合ってくれそうにもないしイソイソと風呂に入っていく。
「ん゛ん゛あ゛ぁ゛ぁぁあ」
言葉にならない声をだし、風呂を堪能する。
いやぁ、やっぱ風呂はいいなぁ。
そう思いつつ、昨日の朧気な記憶を拾い集める。
じいさんが雇ってくれるようなことを言ってた気がするけどいくら意気投合したとはいえ冗談だろう。
たった2日間だがかなりお世話になりすぎた。
あれだけ迷惑かけちゃってるし、俺が丁度無職だったからとはいえ話がウマすぎる。
別に急いでないし、せめて恩返しってことで早めに出て片付けくらい手伝うか。
◇◆◇
俺は少年の邪魔にならない程度に手伝っている。
とは言ったものの俺が出た後にはだいたい終わっていたのだが…
少年の働きぶりは目を見張るものがある。
掃除、洗濯などをムダのない洗練された動きでやってのける。
随分と手慣れたもんだな…
さっきも俺が風呂から出るとバスタオルとじいさんのらしき甚平が置いてあったし。
そういや、バスタオルはピンクに猫の絵が至る所にプリントしてあるものだった。
どう考えてもじいさんの趣味じゃなさそうだし貰い物だろう。
じいさんは孫って言ってたし両親はどうしたのだろうか?昨日の雰囲気からしてもこの家には、じいさんと少年しか住んでなさそうだ。
いや、あまり野暮なことは聞かない方が良い。
こうゆうのはそっと為ておくのが大人のマナーというものだ。たぶんそうなのだ。
そんなことを考えているとじいさんが帰ってきた。
「おお、すまんなボウズ。明日からビシバシしごく予定じゃから今日ぐらいは休んでも良かったんじゃがのぉ」
本気だったみたいだ。
「よぉし、ボウズの歓迎会じゃ!今日は…「おじぃ、明日は仕事だから程々にね」」
そう少年に先手を打たれ苦笑するじいさん。
じいさんどんだけ飲んべえだよ…
その日の夜はセーブしながらじいさんと晩酌して眠りにつく。