5・鬼、見参
はぁ…はぁ…
ー なにこれ意外と遠いわ ー
はぁ…はぁ…はぁ…
ー なんでこんなことやってんだろ俺 ー
はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…
ー ちょーわき腹痛いんですけどホントにヤバい ー
はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…
ー あー…クソが!これで沈み切ってたら笑えねぇわ ー
はぁ…はぁ…はぁ…着い…た…はぁ…はぁ…はぁ…
ー 間に合ったー!俺えらい!!マジ頑張った ー
着いた先は簡素な道路にボロいレールで遮られた崖だった。
船越○一郎が出てくるような立派な崖ではないが充分怖い場所だ。
まさか、ホントに崖に着くとは…
ジッと夕日を眺める、潮風は火照った身体に丁度良い。
車もあまり通らなそうな道路なのでカモメの…いや、ウミネコかな?あれ?
まあ、どっちでも良いか。
鳥の声と海の音も耳に優しくなんとも言えない心地よさがある。
うん、なんか良いなコレ。
今まで悩んでいた事がとてもちっぽけに感じる。
ほとんど勢いで来てしまったが、ここまで来た甲斐があったというものだ。
ジワジワと沈む夕日をただ黙って眺めていく。
こんなにキレイなんだし、悩みのタネを今考えるのは無粋というものだ。
今はただ純粋にこの景色を楽しもうではないか。
◇◆◇
20分くらいたっだろうか?
もうまもなく日が完全に沈み辺りが暗くなってきた。
ー うむ、余は満足じゃ。そろそろかえ… ー
「…ぁ!…ちを…………いわ!」
ん?なんか聞こえたな?いや、気のせいか?
クルリと後ろを振り返ると高速で何かが向かってくる。
「……もんがぁ!…のくさ……じょ…たた……治して…わ!!」
向かってくる点はどんどん大きくなり人の形が見えてくる。
ひえぇぇっ、鬼!?怖い怖い怖い…いや、鬼の形相をした人だ!
なんで!?えっ…ていうか、どゆことコレ!?頭が全然状況に追っつけてないわ!
何か知んないけど命の危機を感じる…!!
…あっやべぇ…腰抜けた…動け…
「クハハハハ…軟弱ぅ!軟弱ぅぅぅ!!うおっ!?」
鬼の形相をした人が手前の石ころに転がり盛大に飛んでくる。
あっ、コレは綺麗なフライングボディーアタック…
【ドーーン!!!】
俺の意識はそこで途絶えた。