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千代と八千代と  作者: 梅宮トム
3/12

3・ちょっと傷心を装ってみる

「行ってきまーす。」

そう言って親に見送られ家を出る。

いつも通りの日常、ただ1つ違うのは行き先が会社ではなく公園ということだけだ。


会社が倒産してから1週間がたった。


「ふぅ…」

公園のベンチに座り、上を見上げる。

俺の気持ちとは裏腹に快晴だ。


ーリストラされた、大黒柱ってこんな気分なのかなぁ…ー


そんな風に思いつつ、また溜息がでる。

ああ…せっかく苦労して入った会社なのになんでこんなことに…。

ちょー親に言いづらいわ。

何これ、何なの?俺なんか悪いことしたっけ?

もしかしてバチ当たったの?俺があまりにも無気力過ぎるから神さまが試練でもよこしたの?


いや、別に信心深くはないけどさ。


あー…めんどくさいまたあの就活の日々が始まるなんて本当にめんどくさい。

考えるだけで気が滅入ってしまう。


だんだん考えるのがイヤになり、ボーッと過ごす。


グゥー…


「腹、減ったな…」


コンビニで飯でも買おう、うん…そうしよう。


ー今月の生活費はあるとして来月はどうすっかなぁ…ー

ー親に頭下げるしかないかなぁ…ー


ふと、目についた旅行雑誌。

手に取って旅行雑誌をパラパラと目を通していく。

グゥー…

「あっ、サンドイッチ買いに来たんだった。」


買い物を済ませ、ひとまずさっきの公園にもどりまたベンチに腰をかける。

「いただきますっと…」

食べようとしたら、野良猫がすり寄ってくる。


ーアニマルテラピーって今の俺に効きそうだな…ー


あからさまにサンドイッチが狙われてるであろうがとりあえず癒しが欲しい。

ほんの少しちぎってエサでつれば食べてる間に少しぐらい触らせてもらえるかもしれない。

お前はエサを貰って嬉しい、俺は触れて嬉しい。

お互いに欲求を満たせてWIN WINじゃないか!


「ほれほれーエサですよー」

ちぎったサンドイッチを近くでちらつかせて触る機会を伺う俺。


野良猫が目を光らせたその刹那!

少しちぎった方を無視され俺の膝元の本体を狙われる!


シュバッ!

『ハッハッハ!チョロいな!愚かな人間よ!』


すぐさま距離をとられ、こっちを見る姿はまさにそう言ってるかのようだった。


ちぎった方のサンドイッチをそのまま口に運ぶ。

まさか猫にもこの仕打ちを受けることになるなんて…


気持ちはどん底…、まだ満たされぬ腹の音を聞きつつふとさっきの旅行雑誌を思い出す。


「あー…海…行きてぇな…」


特に海が好きというワケではないが癒しを求めてる俺には海が丁度良いのではないかと思った。


うん、明日にでも行ってみようか。



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