闘争心という炎に油を注いでしまった
こうして私の第一次魔法対戦が始まった。
魔法の演習授業とか、そんなものなんて存在しなくてもいいのにという気がする。
というかミオはこんな授業があるなんて言っていなかった。
「私はただ身代わりを頼まれただけなのに。なのに何でこんな事に」
私は小さく繰り返し呟く。
だが現実は非情だった。
闘技場には私とレイナ、そして審判らしき先生と、その周りを囲む人々というか生徒が。
さっきロビンと目が合った時、頑張れよと手を振られて、その前にこの状況を何とかしてほしいと殺意がわいたのを付け加えておく。
酷い、酷すぎる。
私の身に降りかかってきた不幸を嘆いていた私。
魔法だって使えるのは炎の魔法一つのみ。
残りは、練習する時間すらなかったのだ。
この魔法演習の時間は、制服で行う。
なんでもこの制服の防御効果は高いとか。
だから別の服に着替えるよりはこのままの方がいいらしい。
といった話も聞いたなと私は思った。と、
「相変わらず余裕ですわね」
「いえ、余裕なんて全くありません」
「……やはり頭を打ったのは本当のようね。こんなに大人しくなるなんて」
「そ、そんな可哀想な私なのでこの戦いは、なかったことにしていただけないでしょうか」
私はそうお願いしてみる。
今からでも遅くはない。
私は徹底的に食い下がるのだ!
そう思って私はレイナにお願いするも、彼女は獰猛な笑みを浮かべて、
「いやよ」
「そんな……」
「性格が変わったとしても貴方がミオであることには変わらないわ。私に勝利し、毎回毎回『愚かなレイナ、私に勝てると思っているの? でもその不屈の精神は気に入っているわ、いつでもかかってらっしゃい!』と言い続けた貴方ですもの。記憶が無くなったくらいで、弱くなるとは思えないわ」
と言い切ったレイナに私は、ミオは何をやっているんですかぁあああ、と悲鳴を心の中で上げた。
私は全く関係がないのに、ミオの、そう、この世界のミオのせいで私は危機的状況に陥っている。
こんな状況になるなんて想定していないし想定外です!
身代わりの費用に入っていません追加の費用の請求をするレベルです!
と混乱する頭の中で私は思った。
思って絶望した。
目の前でレイナが何か魔法を使おうとしている。
どうやらいつの間にか戦いが始まっていたらしい。
目の前に幾つもの魔法陣が現れて、
「“炎球”」
炎の球が現れて、私に向かって襲い掛かる。
「ふぎゃあああああ」
私は悲鳴を上げて、逃走した。
だって見るからに熱そうだしケガをしそうだ。
こんなものを目の前に出されるとかなんで私は、こんな目にと思わざる負えない。
そして次々に繰り出される魔法に私は必死になって避けていると、
「ミオ、ちゃんと戦いなさい! 馬鹿にしているの!」
「ふ、ふええええええ」
そんなこと言われても無理です。
そう思いながらとりあえず呪文足で炎を呼び出して攻撃してみたが、
「この程度の魔法でどうにかなると思っていると。私も舐められたものですわ。いいでしょう……私の本気、見せて差し上げますわ」
とレイナは言いだす。
どうやら無詠唱の魔法は、彼女の闘争心という炎に油を注いでしまったらしい。
なんてことだ、どうするんだ私!
そして私の目の前に、いくつもの氷の鋭い槍のような物が出現したのだった。
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