勝利宣言をする彼女
魔法初心者どころか今日初めて知りました、しかも特殊能力を使った事すらない私に降りかかってきた“決闘”。
魔法演習の手合わせのような物らしいのだけれど、
「わ、私は今日はちょっと……」
「あら、逃げるのですの? あのミオが? 頭を打ったらしいというのは本当のようですわね」
笑う彼女。
いかにもな高慢な令嬢にしか見えない彼女だがそういえば、この人の名前すら知らない。
というかこの状況で私はどうすればいいのだろう?
そうだ、サポート役をしてくれるロビン王子は、そう思って私が振り返ると、まるで何事もないかのように、サンドイッチにかぶりついていた。
ちょっ、そうやって穏やかに食べている場合ではなくと私が思っていると、ようやくその視線が、
「レイナ、今、ミオは大人しくなっているから刺激するんは止めてくれ」
「……確かにその方が貴方には都合がいいですわね。ですがこの私、レイナにとってミオは永遠のライバル! 何だか知らないけれどいつもなら面倒臭そうに『嫌よ』の一言で済ますミオが、あのミオが……『わ、私は今日はちょっと……』何て控えめな表現に! これならば、今日ならば私は今日こそ、ミオに勝利できる気がするの!」
瞳を輝かせながら恍惚とした表情で語る彼女は、レイナというらしい。
だが今の話を聞いた範囲では、彼女は一度もあのミオに勝っていないように聞こえる。
というか、そもそも別人なわけで私はそんな魔法なんて知らないわけで。
どうしよう、どうする、どうするんですか!
三段階に不安の言葉を考えてから私は、全力でこの今目の前に迫る危機に対処することにした。
「せ、折角のお言葉ですが、私は今はそう言った気分ではないですから」
私はそう言い返す。
徹底的にごねる。
ごねてごねて相手が折れるまでごねる。
それも食事とこの昼休みの間ずっと!
そう私が決めているも、現実はそんなに私には優しくなくて、レイナが私を見ながら楽しそうに、
「そう、そこまで徹底的に嫌がるのね。さらに私は気になってしまったわ」
「! そんな!」
「そうね……なら、貴方が“偽物”だと言いふらして、レッテルを張ってやるわ! そうなれば魔力の測定など面倒なことになるでしょうけれど、それくらいのことはさせてもらうわ!」
喜々として勝利宣言をする彼女だが……多分、彼女は気づいていないとしか思えないのだが、私にとって一番攻撃力のある脅し文句だった。
逃げられない、逃げ道をふさがれてしまった。
これではこの戦いを受けざる負えない。
なんでこんなことに、そう思いながらも私はもうそれ以上言い返せそう出なかったので、
「はい、分かりました」
「そうよ、そうやって素直にしていればいいの、午後の授業が楽しみだわ」
そう嬉しそうに去っていくレイナ達。
一方私は涙目になりつつもどうしてこんなことにと思っているとロビンが、
「まあ、特殊能力がミオにあるからいいじゃないか」
「! まさか私の特殊能力が見たいがために黙っていたんじゃ……」
ロビンは沈黙した。
なんてひどい展開、そう私が思っているとそこでロビンが、
「まあ、その、少しくらいは食後の運動も兼ねて、この世界の魔法を教えてやってもいい」
やはり罪悪感が少しでもあったのか、ロビンが私にそう言ったのだった。
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