察しというような顔
ミオの婚約者はロビンという王子様だったらしい。
しかし婚約破棄を投げさせる挑発って何をやったんだろうと思わなくはない。
そう思っているとそこで目の前のロビンが、
「それでお前の名前はなんて言う? 本名の方だ」
「嶋本美緒です。ミオの方が名前になっています」
「この姿で名前まで同じなのか……それはだと最高の身代わりだな、ミオには」
そう言ってロビンは深々とため息をつき、
「とりあえずは約束通りできる限りサポートはする。この学園やこの地域については詳しくないだろうし。俺の事を知らなかったから、この地方の人間じゃないだろうから出身地を教えてもらえると助かる」
「あ、えっと、その……実は私、この世界の人間ではないのです」
「……」
「異世界からこちらに来た人間でして、その……」
「……まさか女神様がこちらに呼んだ人間の一人、か? だが勇者関連は別の王家が担当するはずだから……対、“魔族”用の人材? そんなすごい人間に身代わりを……さすが、俺のミオだな」
なにやら一人感慨深く頷いているロビン。
だが私としては、
「“魔族”って何ですか、私、戦わないといけないのですか?」
「いや、随分人数を読んだらしいからそうとは限らないが、もしもの時のための、という話らしい。そのために特殊能力を与えたとかなんとか」
「特殊能力、そういえばまだ私も確認していないかも」
何しろいきなり謎の女性に脅されて身代わりさせられてここに連れてこられたのだ。
しかも昨晩一睡もしていない。
そんな状況だったので確認していなかった。
そこでロビンが私に、
「ここでは魔法の演習もあるから、すぐに魔法を使えるようになるとは思えないからその特殊能力で使える魔法で誤魔化しておいた方が良いかもしれない。異世界だから魔法の形態が違うだろうしな」
というロビンの話を聞きながら私達の世界には、魔法なんて存在しないと思った。
でも話がややこしくなりそうなので黙り、私は考える。
そもそも魔法のあるこの世界で、この世界に来たばかりで魔法の知らない私がどうやって誤魔化すのだろうと思う。
そもそも特殊能力といったって、どんな能力なのか。
水を出せるといったものなら魔法っぽいけれど、空間転移とかそういったものだったら……そう私が悩んでいるとロビンに、
「早く特殊能力を確認するんだ。それで俺の対応が変わるから」
「は、はい……えっと、“ステータス・オープン”」
私はそう言って自分の能力を出してみる。
そこにはいろいろな数値が描かれているが、最後の特殊能力の部分には、
「“重力変換”」
そう書かれていたのだった。
そして私はロビンに連れられて教室に。
なぜかざわめきが上がるがそこでロビンがみんなに、
「彼女はミオだ。そういう事にしておいてくれ」
「……あ」
察しというような顔になって生暖かい視線が私に降り注がれる。
あのミオという人物は一体どんな人物だったのかが私にはとても気になったのだった。
評価、ブックマークありがとうございます。評価、ブックマークは作者のやる気につながっております。気に入りましたら、よろしくお願いいたします。