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花園にて

 貴族の、その中でも偉い人の屋敷なので庭も広い。

 入り口付近にあった噴水を左に進むと、よく手入れされた花園がある。

 バラのような蔓の植物がフェンスのようなものに絡められて、迷路のようになっている。


 甘く優しい香りが広がるそれを見ながら、


「いい匂い。花も綺麗だし、今はちょうど見頃なのかな? ってリーフ、花は食べちゃダメだよ」

「みぎゃ」


 リーフは私にたしなめられて花を食べるのを止めた。

 でもまさか突然食べだすとは、このリーフは果物が主食だけれど甘いのかな? と私が思っていると目の前でリーフが食べてしまった場所から花が咲いた。

 ふわりと甘い香りが漂ってくるが、その不思議な光景を見ていた私は、


「流石ファンタジー世界、不思議なことがいっぱいあるみたい。もう少し見て回ってみよう」


 そう私は呟いてリーフと一緒に歩いていく。

 このミニドラゴン、意外に歩くのが速いので私が待っていたりする必要はない。

 むしろ私が置いていかれそうなほどである。


 でも鼻歌を歌うように、軽く飛び跳ねながらみぎゃ~、と鳴いているのは一見すると可愛い。

 そんなミニドラゴンを見ながら歩いていくとやがて、花園の中心部にやってくる。

 そこには屋根のある小さな休憩場のような場所があった。


 そこで少し休憩してみたいと私は思う。

 テーブルとイスもあるし、と思いながらミニドラゴンのリーフと一緒にそこで休もうかと思ったのだが。


「みぎゃ」

「ここの周辺を歩いてくるだけだよ? あまり私の目の届かない所に行かないでね」

「みぎゃ」


 私に頷いて歩き出すミニドラゴン。

 それを見ながら私はしばらくそのベンチで休むことにした。

 ほほを暖かい風がないでいって、甘い香りに頭がぼうっとしてくる。


 眠くなるくらい気持ちがいい。

 リーフは、周辺にいた蝶のような虫を追いかけている。

 それを見ているとそこで誰かがやってきた。


 ミオの母親だ。

 どうしたのだろうと思っていると私のすぐそばまできて、


「少しお話を良いかしら」

「あ、はい」


 私はそうとしか答えるしかない。

 そこでミオの母親は、


「こうやって近くで見ると本当にそっくりね。一度貴方ともゆっくり話してみたかったの。異世界でも貴方は学生だったのかしら」

「あ、はい」

「そうなの。異世界のあなたの生活、聞かせてもらってもいいかしら」


 そう言われてしまったのだった。







 異世界に当たる私のいた世界の話は、ミオの母親にとって未知のものであったらしい。

 異世界人とは会った事がないのもあるし、伝え聞いたものの範囲で走らないらしい。

 そんな魔法があるの? といった概念的な理解になってしまったが。


 そこでそれらの話を聞いた母親が、


「今の話をミオに聞かせたかったわ。あの子はそう言った物が理解できるような子だから」

「そうなのですか?」

「ええ。もしも戻ってきた時には、そういった話をしてもらえないかしら。貴方には迷惑をかけてしまったけれど……短い間でもあなたと一緒にいて、きっといいお友達になれそうだと私は思うのよ」


 そう言われてしまったのだった。


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