ちょっとお前、こっちにこい
挨拶してきたこの美少年は、どうやらミオが婚約破棄を投げつけたかさせた相手であるらしい。
笑顔の彼だが背後に般若のお面が見えるような気がする。
どうするんですか!?
わ、私、偽物だってここで気づかれて……本当にどうするんだろう、そう私が思っていると目の前の彼は、
「まあ、ミオの性格は俺は良く知っているからな。どうせうまいこと婚約破棄を手に入れたと思ったんだろう? 散々俺を挑発したからな」
「挑発?」
「しらじらしい。まあお前は自分が挑発したなんて認めないだろうな。それに乗った俺もそうだが、挑発したとなったら色々と面倒だろう? その婚約破棄自体が無効になるからな」
「は、はあ」
気の抜けた返事をする私。
お前は気づかれていないと思っているんだが分かっているからなという、ドヤ顔な彼だが、どうやら私が別人だと全く気付いていないようだ。
うーん、これはと思っている間も、べ、別に婚約破棄は俺の本心ではないわけでとか皮肉っぽく言っているがそこで彼は不思議そうに私を見た。
「何でいつもみたいに言い返してこないんだ? もっとこう、キッツい一言だったり実力行使だったり」
「え、えっと……」
ミオは一体何をやっていたんだろう、この人と、といった疑惑が私に浮かんでくる。
だが少しでも話せばボロが出るのではと思ったので黙っていた。
そこで、何かに気付いたのか目の前の彼がさっと顔を青くしてから私に、
「……お前、俺の名前を言ってみろ」
「え、えっと、えーと……突然の腹痛と頭痛で記憶喪失になったので、名前が思い出せません」
「……ちょっとお前、こっちにこい」
そう言って、青い顔の美少年に空き教室に引きずり込まれてしまった。
これから何をされてしまうんだろう、そう私が思っていると、
「本物のミオはどこだ」
「え、えっと私が……」
「お前は偽物だ。というかあんな性格の女が、この世に同じ姿で二人以上いてたまるか」
「え、えっと、ほ、本物で……」
「本物でないのを証明したら、どうなるだろうな。偽物が学園に入ったという事で大ごとになるだろうな」
「で、でも……」
「他の奴らには……うまく立ち回ってやるから本当のことを言え。でないと、公爵家の絶大なスキャンダルにまで尾ひれをつけて広めるぞ。婚約破棄を投げつけさせられた恨みは絶対に許さない」
そう言い切った目の前の美少年に私は、ん? と思った。
つまり彼は、
「ミオが好きなのですか?」
「……」
「もしも違っていたらごめんなさい」
「……本当に別人なんだな。はあ、でもお前ならいいや、そうだよ。だからそういったスキャンダルは無いようにしたいというのが本音だし婚約破棄も無かった事にしたい」
「は、はあ」
「それで本物のミオはどうした?」
どうなんだろうこの人と思いつつも気づかれてしまったので私は、説明をすると、
「ミィイイイオォォォ」
「え、えっとあの」
「いや、君は悪くない。つい取り乱してしまったが、そうか、なるほど」
薄く笑った彼はそこで、
「俺の名前はロビン・キッドウェル。この国の第二王子だ」
そう自己紹介したのだった。
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