チートについての考察、終了
重力加速度については、普通に使おうという話になった。
次に考えるべきなのはこの質量の部分。
「質量を変化できるって、何処までの事になるのかどうか」
「……物質まで変更できるかも、という事か」
「うん、同一体積内で質量が変わるとなると、密度も変わってくるし。それともただ単にその存在そのものの質量が変化するだけで物質そのものが変わるわけではないのか?」
この魔法自体が、“概念”に近い能力であれば、後者の状況になる。
前者であったなら、この世界の物質が私達の世界と同じ法則であるなら、様々な金属や合成樹脂の類を作り出せる。
この世界で価値のある金属を、幾らでも製造可能だ。
もしその能力があるなら、それらを売っていけば当面の生活費は稼げる。
つまり、このよく分からない学園生活から逃げられる。
「素晴らしい事に気付いた、よし、それで行けるならいこう」
「? 何を思いついたんだ?」
不思議そうにロビンに言われたので、私はそのある可能性について話した。
つまり幾らでも高価な金属作り放題な状況かもしれないのだ。
それを聞いたロビンが無言で意思を一つ拾い、
「試してみたらどうだ?」
「そうする!」
というわけで私達の世界の“金”を作り出すように考える。
金です、純金です、どこぞの新大陸で金と間違えて黄鉄鉱を持ちかった人達みたいなものではなくて、価値のある“金”を! 銀やプラチナでもいいです!
そう念じて魔法を使うよう意識してみたが、特に何の変化はない。
それを見ていたロビンが、
「それで今、何かやっているのか?」
「う、うん、魔法を使うように念じているけれど何にも起こらない」
「だったら軽くなる方の概念を使ってみるとどうだ?」
「……手に持っているのか分からないくらい軽くなった」
どうやら物質そのものを変化させるのは、この特殊能力の範囲外だったらしい。
この“悪役令嬢”な身代わりから逃げられると思ったのにと私が心の中で嘆いていると、
「どうした? やけに落ち込んでいるが」
「これで物質変換して貴重な金属を作れれば、それを売って生活ができるのに。私、こんな身代わりなんてしなくて済んだのに」
「……残念だったな。それで他の使い方は思いつかないのか?」
ロビンが私の嘆きを適当に流した。
酷ス、そう私は思いながら次は、
「この魔法の有効範囲と出力かな。今落とすときに物体の形状は変わらないかな、と思ったけれど液体にも気体にも変わらなかったそれは良いとして……そこの木の枝の棒でいいかな」
とりあえず傍に木の枝で地面に四角を書く。
不思議そうに見ているロビンの前で私はその四角の範囲に意識を設定して、
「“重力変換”」
魔法を使う。
これはちょっときつい魔法で、魔力が多めだが私にはきついかもしれない、とも思う。
けれどそれは予想通りの結果を私にもたらした。
「地面が液状になってる。よし、圧力を高くすることで液化させるのに成功っと。……でもなんだかすごく疲れる」
なので私はすぐに魔法を解いてみたが、
「でもこの力は何に使えるか分からないから保留して、あとは空間内の重力……引力を存在させるとかそんな感じかな」
「……そういえばさっきのレイナとの戦いで、氷が一斉にレイナに向かって言ったな」
「うん、あの氷の範囲からレイナの手前までを無重力にして、少し氷自体には上からの引力を働かせて氷を浮かばせてから、レイナのいる方に面状の重力場の板のようなものを発生させて、その引っ張られる勢いで攻撃した形かな」
「とっさによく思いついたな。他に何かアイディアがあるのか?」
「うーん、その時思いついたのは球の重力を生じさせたら、氷が集まって“ウニ”みたいになるなとか」
「ウニ?」
「私の世界の海にいる生物だよ」
「異世界は変な生き物がいるんだな」
ロビンに私はそう言われてしまい、そしてそこでようやく、授業の終わりの鐘が鳴ったのだった。
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