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私の目の前に現れた、自称、“悪役令嬢”

 今日は月の綺麗な夜だ、と私、嶋本美緒しまもとみおは思った。

 正確には現実逃避した、だが。


「長い黒髪、明るい緑の瞳に、この顔に、年齢も大体同じ。本当にいい所で出会ったわ」


 悠然と微笑む彼女は、この世界の現地人だ。

 ドレスを着た少女で、こんな夜に一人で出歩いたりしないような、高級なものを身にまとっているように見える。

 だが、彼女の笑みに私は怖い物を感じた。


 この世界に来たばかりの私はどうしようかと歩いていて、たまたまこの人物にぶつかってしまった。

 そして私は転んで彼女は立っていた。

 ただそれだけの関係だけれど、私のこの世界に来て瞳の色が変わったという些細な事象により、目の前の彼女と鏡に映したように瓜二つの姿になってしまったのだ。


 それに私は驚いた。

 なのに彼女はとても嬉しそうに、悪そうな笑みを浮かべたのだ。

 元々大人しい私は、彼女の笑みに不安を感じ、凍り付いたように動けないでいると……彼女はさらに笑みを深くして、


「私の名前は、ミオ・ブラウン。公爵令嬢よ。皆には悪役っぽいから“悪役令嬢”と呼ばれているわ」

「わ、私は嶋本美緒しまもとみおと言います。みお、が名前です。異世界から来ました」

「同じ名前なの。でも……異世界?」

「は、はい」

「そう、この世界の人じゃないの、怪しい人物という事ね。さらに都合がいいわ」

「な、何を」

「私、丁度、婚約破棄を突き付けられて、正確には、相手に出させたのだけれど……色々と面倒でね。ほとぼりが冷めるまで、屋敷から離れたいのよ。でも学校に通わないといけないしね……だから影武者が欲しかったのよね」

 

 そう目の前の彼女が私に告げたのだった。









 そもそもどうして私が異世界に飛ばされてしまったのか。

 理由は不明だが、確か高校生活中の修学旅行に向かっているさなか、女神様が現れて、チートを上げるから私の世界で魔王を倒してね、あ、魔王を倒すのは特定の子だから適当に生活していいや、ちなみにクラス全員集まらないと帰れないよ、とかなんとか……。

 こちらに来たら“ステータス・オープン”してみれば能力が分かるよと言われていたが、まだ私は確認していない。


 とりあえず人のいる場所にと思って歩いていたが、深夜であったらしく人にも遭えず、どうしようとうつむいて歩いていたら……冒頭の人物に捕まってしまったのである。

 それから私は彼女に、彼女の屋敷に連れ込まれて、


「ここに書置きしておいたからあとはよろしく」

「! 私、異世界人ですよ、この世界の事何も知らないですよ!?」

「そこはこう、その場その場で。ある程度単位はとっているから、後は出席しておけばいいだけなのよ」

「そ、そんな……ばれます、確実に別人だってばれます!」

「別にあなたが本人ですの一点張りで頑張ればいいのよ。貴方にはそれ以上の役目は求めていないわ」

「そ、そんな……」

「それに、異世界人らしいけれど貴方は行く当てがあるの?」


 そう問われて私は黙ってしまう。

 だって、そんなものは無い。

 このままいけば野垂れ死にするかもしれない。


 どうしよう、そう思っているとミオが、


「でもここに居れば衣食住は確保されて、私の身代わりが終わったらその分のお礼としてお金も支払うわ。当分の生活費にもなるわよ。異世界から来たのなら、こんな好条件無いと思うけれど」

「それ、は……で、でもどうして異世界人だって、すぐに信じてくれたのですか?」

「貴方の服装はこの世界で異質なのと、この世界に異世界人を呼んだって女神様の通達があったからよ」


 どうやら異世界人を呼んだよと現地人に通達があったらしい。

 でもそれなら迎えみたいなものは無いのかと思ったけれど、


「適当に呼んだだけだから、その場で何とかしてねという感じらしいわね」

「そんな……」

「それで、どうする?」


 勝利を確信したような彼女の笑顔。

 そして私は、諦めて涙目になりながら頷いたのでした。

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