自堕落な毎日に制裁を=酒と薬の日々=
午後10時カラクリ人形の様に、あるいは条件反射で4Lペットボトルのウイスキーをロックアイスを入れたグラスにだばだばと注ぎ込む。起床したのは午後7時。遅い活動開始も慣れてしまったものだ。そして、薬箱からばらばらと薬を吟味しながら取り出す。今日はどの薬を酒と一緒に嗜もうか。そうして取り出したのは、ハルシオンとロヒプノールを10錠ずつ。これだけあればさもしい夜も明かせるだろう。辛い現実から逃避出来るだろう。安いウイスキーロックをちびちびとやりながら、プチプチと薬をひとつずつ取り出していく。全部取り出してウイスキーで20錠の薬を飲み込む。ふぅ、と人心地つく。薬が効くのが早いか、酒が回るのが早いか。そんなチキンレースどうだっていい。効くまでのこのもどかしい時間が僕はきらいなんだ。15分ほど過ぎただろうか。視界がぼやけて視点が定まらなくなってくる。
嗚呼、これが僕の生きがいだ。好きなアングラな曲を流す。なんで生きているんだろう。そんなこともまだ考えている余裕がある僕はまだ完全にラリれていないな。グラスの残りのウイスキーを一気に飲み干す。少し喉がツンとした。どうでもいいことだ。キッチンへ氷とウイスキーを継ぎ足しに行く足元はゆらりとおぼついていない。ついでに、ビターチョコレートも自室へ持ってきた。まだまだ夜はこれからだ。ダイエット中だなんて気にせずにチョコレートを頬張る。それをウイスキーで流し込む。もう大分前後不覚だ。一人の部屋で独り言を喋ってみたけれど、自分の耳でも聞きとれない呂律が回っていない。これででも良いんだ。これが至福のひと時。PCで流している音楽のPVがもうはっきりと見えない。眼は悪くないのだけれど。もよおして、トイレに立とうとしたら立ち上がるついでに派手に顔から床に転げ落ちた。お薬のせいか、お酒のせいか、痛覚が鈍くなっていて然程痛くはないけれど、口の中を切ったようで口内に鉄の味が広がる。どうにかこうにかしてトイレには行けた。席に戻り飲みかけの氷の溶けて薄くなったウイスキーを一口、二口と口をつける。ヴーヴー。友達からラインが来た。どうやったって字もろくに読めないこの状態では返信なんてとてもじゃないけれど出来ない。僕はスマホをベッドに投げ捨てた。
そこからの記憶はない。健忘ってものだ。
酒と薬をあれだけ飲めば記憶が飛んでもおかしくない。
。
目が覚めたのは昼4時だ。テーブルの上には空になったグラスと、チョコレートが食べつくされていた。特に二日酔いにもなっていない僕はコンビニへ向かう。こうも毎日安いウイスキーばかり飲んでいては流石に飽きが来る。コンビニのアルコールコーナーで日本酒を選びカゴへ投げ入れる。それから食品コーナーでおにぎりとチョコレートを買う。
明日は平日だ。病院へ行かないと薬の在庫が切れそうだ。
たったそれだけの予定。そう考えてまた虚しくなった。
家まで徒歩5分、往復10分。それだけの時間があれば色々と考えてしまう僕を憂鬱にさせるのは十分過ぎた。
きょうの現実逃避に使う酒は日本酒。
これが僕の日常。怠惰で退屈でみじめな日々。
今日も」また昨日と同じように薬を飲んで、酒を飲んで、泥酔して記憶が飛ぶまでささやかな自傷行為をするんだろう。酒と薬は裏切らない。今まで多くの人間に裏切られてきたけれど、これらだけは僕に優しく寄り添ってくれるんだ。もう、シラフの僕が本当の自分なのかラリっている時の自分がそうなのか分らなくなってしまったよ。トータルの時間で言えばラリってる僕がもう確率されてしまっているんだけれど・・・。
シラフが怖い。辛かった記憶に、罪悪感に押しつぶされてしまうから。
部屋に戻った僕は日本酒のボトルをそのままラッパ飲みで飲み始める。薬ケースから適当な安定剤や眠剤を取り出す。日付は変わったけれど僕の時間はずっと止まったまま。また昨日と同じことを始める。意識が朦朧としてくる。
僕はいつまでこんな生活を続けるのだろう・・・・・・。
酒臭い溜息を吐いて自嘲して笑った。