夢に見たキミは綺麗だった
夢と現界の境界は曖昧だ。
たまに、これは夢か?と現界で思ったり、これは現界か?と夢で思ったりする。
曖昧で儚い夢現。
ボクは夢でも良いからキミに会いたい。
会いたいんだ。
「樫木!、樫木 雪音!」
呼ばれて窓に向けていた顔を前に向けるボク。
そこには英語教諭が居て、
「この英文に対して答えを言え!」
と、黒板を叩く。
乱暴な人だとボクは思う。
ボクは思いついた事を答える。
英語教諭は、不満そうに、
「それで良い。授業中は前を向いているように!分かったな?樫木」
と言い授業を続ける。
夢の中の・・・現界の中の?・・・とにかく、あちらの世界では英語教諭はとても綺麗な女の人で、乱暴ではない。
少なくとも、黒板は叩かない。
「ユッキー、何外見てたんだ?可愛い娘でも居たか?」
後ろの席から小声で話しかけられる。
声の主は小声で笑う。
「居たよ」
小声で答えると。
「えっ?マジで?」
と言い、
「何処に?何処に?」
と興奮気味に言う。
「今度はお前か!近藤 藍!」
英語教諭は、興奮気味にボクの後ろの藍を呼ぶ。
後ろでガタガタッと音が鳴りバターンと何かが倒れる音がする。
「イテテテッ」
藍の声がする。
どうせいつもの様に椅子を後ろに傾けて座って、突然呼ばれてビックリして倒れたんだろう。
そう思って後ろを見る。
そこにはスカートがめくれてパンツ丸見えの女子が居た。
「バッ・・・バカッ何見てんの!?」
慌てて起き上がり椅子を起こして座り直す藍?
「いつまでこっち見てんのさ!?」
ふくれっ面も可愛い藍?に言われて前を向くボク。
そこで違和感をおぼえた。
周りをキョロキョロ目だけ動かして見る。
見える範囲内に何故か男子が居ない。
黒板の方を見ると英語教諭も女の人に変わっていた。
「どうかしましたか?樫木さん」
英語教諭はニッコリ微笑んで聞いてくる。
「いいえ、何も」
怒鳴られるのも怖いけど、笑いながらでもそれはそれで怖い気がする。
これは夢か?現界か?
頬をつねる。痛い。現界か?
授業を終えるとあっという間に放課後になり、帰宅部のボクは家に帰る。
いつもの習慣になっている鉢植えの水やりをする。1つしかない不思議な植物。
どう見ても怪しいお婆さんから貰った植物。
確か、花が咲けば1つ願いが叶うんだったか?
いつも水やりをしながら思う。蕾なんて無いんですけど!!
いつもの様に心でツッコミを入れて、フラフラとベッドの前へ行き倒れ込む。いつもそうだ。
植物に水やりをすると、急激に眠気がおそう。
ボクは抗う事なく眠りにつく。
「ユッキー、ユッキー」
呼ばれて目を覚ます。
目の前には藍が居る。男の藍が。
「飯食べながら寝るなよな」
笑う藍。
あぁ、さっきのは夢か。と思う。
藍が女の子でクラスメイトも英語教諭も女ばかりの世界。
食べ掛けの焼きそばパンを齧りながら考える。
あっちの方が良かったなと。
「何考えてるんだ?ユッキー。エロい事か?」
ニヤニヤする藍。ボクは無言でデコピンをかます。
「痛い!暴力反対!」
大袈裟に痛がる藍。
あっという間に放課後になり、帰宅部のボクは家に帰る。
鉢植えに水やりをする。
そうして、またベッドで眠りにつく。
「ユッキー、ユッキー」
呼ばれて目を覚ます。
目の前には藍が居る。女の藍が。
「ご飯食べながら寝ないでよ」
クスクスと笑う藍。
あぁ、さっきのは夢か。
食べ掛けのサンドイッチを齧りながら考える。
デジャヴ?
否、微妙にと言うか違う事が多い。周りに居るのは皆女子だし、藍も女。
そして、ボクが食べてるのが焼きそばパンでなくサンドイッチな事。
「ユッキー、何考えてるの?好きな人の事?」
聞かれて藍から目を逸らすボク。
「天気が良くて良いねぇ」
立ち上がり伸びをする藍。
お腹の辺りが見える。
視線を上にすると、空を眩しそうに見る綺麗な横顔が見える。
「ん?」
こっちを向こうとする藍に気付いて、視線を手元に戻す。
サンドイッチはもう1口分しか無い。
それを口に放り込み牛乳で流し込む。
「あ!虹だ!」
誰かが叫ぶと同時に皆の視線は虹に向く。
雨なんて降ったっけ?
思いながら見た虹はとてもハッキリと綺麗に見えた。
放課後、帰り道の途中で男子と楽しそうに話す藍を見た。
何故か胸が苦しくなって、ボクは慌ててその場から走り去った。
家へ帰ると、鉢植えに水やりをする。
鉢植えの異変に気付くのと眠気がおそってきたのは同時だった。
あれ?あんな形してたっけ?名も知らぬ植物の変化に戸惑いながら、ボクは眠りにつく。
「ユッキー!ユッキー!」
呼ばれて目を覚ます。
目の前には男の藍の青ざめた顔があった。
消毒液のにおいでボクが保健室に居ることに気づく。
起き上がると、頭と全身が痛んだ。
特に右手足が痛い。
見ると、右手足に包帯が巻かれている。
「悪い!俺が悪ふざけしたせいでそんな怪我させて」
言われると、自分の身に何が起こったのか思い出そうとする。
頭が痛い。
確か、階段を降りてていきなり藍が後から抱きついてきた?
そんな気もする。
よく思い出せない。
抱きついて?
突然顔が熱くなるのを感じたボクは顔を見られない様に下を向く。
藍は、
「どうした?具合悪くなったか?俺、急いで林センセ呼んでくる」
そう言って椅子から立ち上がろうとした藍の手首を掴み引き止める。
ボクと違って筋肉が程よく付いて少し太い腕。
「大丈夫だから」
言った声は少し裏返ってたかもしれない。
「そうか?でも、お前耳赤いぞ。熱でもあるんじゃないか?手も熱いし」
言われて手を離す。ガラガラッという音がして、足音が近付いてきて、カーテンが開けられ白衣を着た男が顔を出す。
林先生だ。
「樫木、大丈夫か?」
言われて頷く。まだ痛いが、ただそれだけで大丈夫といえば大丈夫だからだ。
「近藤は、責任をもって樫木を送って行くこと!」
いつの間にか放課後になっていて、ボクは藍の部活が終わるのを待って、藍が運転する自転車に乗り家へ帰った。
帰ると、鉢植えに水やりを・・・しないで、そこに植えられている植物を見た。
やはり蕾は無い。
けど、何かが違う。
分からない。
とりあえず水やりをする。
そうしてまた眠りにつく。
歌声がする。歌詞が無いその歌声はとても綺麗だった。
目を覚ますとそこは眠りについたベッドの上だった。
スマホから、歌声が聞こえる。
歌詞の無い歌。
最近何かと騒がれてる歌。
歌詞や歌ってる人物も誰が作曲したのか何もかも不明なそれは、有名な動画サイトにアップされるや否や、あっという間に聴く者皆を虜にした。
ボクもその1人で、アラームに使っている。
アラームを止めると歌も止まった。
時間を確認すると、朝になっていた。
右手足には包帯が巻かれてはいない。
痛くもない。
当然頭も。
着替えて朝食を取って家を出ると、藍が立っていた。女の藍が。
一緒に並んで歩く。
ボクより少し背が高い藍。
「海、楽しみだね!」
私服の藍は、白いミニスカートにピンクのTシャツを着ていた。
海は凄く綺麗で、それを見ている藍の横顔も綺麗だった。
「近くにあると、いつでも来れるからって来ないけど、来たらやっぱり良いよね!」
顔を輝かせる藍。
「そうだね」
そう言うボクは海の方を見た。
潮風が気持ちいい。
それからボク達は、ソフトクリームを食べたり特別なシュークリームを食べたりして過ごした。
夕方になると家へ帰り、鉢植えの植物を見る。
蕾の様な物が見える気がする?
水やりをすると植物が光り、突然蕾の様な物が大きくなり花が開いた。
とてもとても綺麗だった。
綺麗だなぁ。
そう思って見ながらボクは眠りについた。
アラームの音で目を覚ましたボクは、右手足が痛い事に気付いて起き上がって包帯が巻かれているのを見た。
そしてアラームを止める。
右手足に気を付けながらベッドから降り、鉢植えを見ると花は無く不自然な感じで実がなっていた。
ボクは何も考えずにそれを取った。
実を取るとすぐにその植物は枯れ、土へかえった。
不思議だった
そこに取ったばかりの実を植え、水やりをする。
眠くはならなかった。
ボクは右手足が痛いのを気にしながら着替えて、朝食を取り外へ出ると、家の前に自転車に跨る男の藍が居た。
ボクが自転車の後ろに乗ると、藍が自転車をこぎ出す。
ボクは左手で藍に掴まり、右手でスカートがめくれない様に押さえた。
病院の前へ着くと、自転車から降り、
「ありがとう」
と言って中へ入る。
検査の結果、骨には異状は無かった。
帰りも藍が迎えに来てくれた。
家に帰り鉢植えを見ると、もう芽が出ていた。
その芽を軽く指でつつく。
「夢に見たキミは綺麗だったよ」
水をあげると、新しく出たばかりの芽は喜んでいるように見えた。
夢か現界か現界か夢か・・・ボクは夢現をさ迷う。
はじめましての方もそうでない方も、読んで下さりありがとうございます。
最後の方で、そう来たのかよ!とか、BLとかGLとかに発展しないのかよ!とか、ゴチャゴチャしてて読みにくいよ!とか様々思うことがあるとは思いますが、作者は敢えて黙殺します(笑)
えぇ、しますとも!(無責任)
恋愛経験0ですから、読むのは良いけど書くのは難しいのですよ。
と言いながら、恋愛物を書いている私も居たりして(笑)
これに関しては無理なものは無理なのです(^ω^;)
なんせ、夢と現実を行ったり来たりしてますからね(言い訳)
では、また次の作品でお会い?しましょう。
ここまで読んで下さりありがとうございましたm(_ _)m