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最後もシンカー  作者: 元帥
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再会

 マリナーズと契約した俺はキャンプ地へと到着。身体を軽く動かしておこうと久々にすがすがしい気持ちで球場に入った。

 この球場は俺が初めてメジャーキャンプに招待された時と何も変わっていない。ひなびた外観、意外と丁寧に管理された青い芝、茶色の土、全てがあの時のままだった。あの頃の自分は成り上がろうと必死だった事を思い出す。とうの昔に忘れていた青い感覚だった。


 「よおアレックス!久しぶりだな!」


 声をかけてきたのはジョージ・パウエル。俺がマリナーズと契約した年にドラフト2巡目でマリナーズに指名された男で、現在は内野全てと外野の両翼を守るベテランの控えとして落ち着いている男だ。俺が再建モードとなったマリナーズからトレードに出された年に、彼も別のチームにトレード移籍。その後は色々なチームを転々としていたらしいが同じチームに所属することは無かったし、対戦することも無かった。


 「しばらくぶりだな、ジョージ。お前もここに帰ってきたのか」

 「まあな!でも今回は万能控え内野手としてプレーする事になるだろうぜ」


 ジョージは屈託の無い笑顔で答えた。18年前と変わらない明るい男だ。プロ生活18年を通じて酸いも甘いも経験してきたはずなのにこうも変わらない男がいるとはな。いや、こうだからこそプロの世界で18年も生き延びられたのかも知れない。何年も前に変てこなキャラの日本人内野手がアメリカにいたらしいが、彼はそのキャラクターでカルト的な人気を博したと聞いたことがある。


 「そういやアレックス、俺らと同期でマリナーズに入った選手は俺ら以外皆辞めたらしいぞ」

 「ああ、もうそんな時期だろうなあ。俺らも30半ばだぜ」


 選手寿命が延びたと言われる昨今でも30半ばと言えば引退がささやかれる年頃だ。特に、落ち目で契約も切れる寸前の俺は引退説が根強く広まっている。ジョージも成績はここ数年パッとしてないみたいだ。今年か来年で2人とも引退し、ついに同期全滅という事態も大いにあり得るだろう。まあ、その中でも俺らは当たりの部類に入るのだろうが。


 「最後に古巣で一花ってのも、長きプロ生活の終幕としては悪く無いと思うぜ。もう一度注目の的になってみたいもんだな」


 ジョージはそう言い残して球場から引き上げていった。

 でもその一言で俺は一つ気がかりになったことがある。俺は今のこのチームに溶け込めるのだろうか?良くも悪くもこのチームは俺の知っている頃のチームでは無いはずだ。ここ数年順位を上げる事は出来ていないようだが、今のチームには好成績を見込める若手と中堅が集まっていると聞く。俺もジョージも求められるのはベテランの存在感の発揮に違いない。

 しかし、今の俺は落ち目の先発投手。ロングリリーフに回されるかも知れないし、最悪キャンプ中の解雇もあり得る。そんな奴の言うことを聴く奴が本当にいるのか?


 そんな不安が一瞬頭をよぎったところで、俺はある男に声をかけられた。

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