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ポチはお怒りのようです。

「見つけた!!」


そう聞きなれた声が響いた。

反射的に目を開けると、そこにはポチの姿があった。

ポチの顔はかつてないくらいに怖い顔をしていて、怒っているのがよくわかった。

そこで私はそう言えばポチにここには来るなと言われていたなとぼんやりとした思考で思い出す。

上からキティが退くと、なんだ、と呟いた。


「そういうことですか」


「何がだ」


「いえ。そんな怖い顔をしないでくださいよ。そういうことなら僕もこれ以上何かする気はありませんから」


そう言ってキティの浮かべた笑みは寂しげだった。


「やっと一人じゃなくなったと思ったのに」


そうキティは言うと背を向けて去っていってしまった。

そうして残されたのは私とポチだけ。


「ここには近づくなって言ったはずだが」


ポチの声は低く、こんな声は初めて聞いた。怒っている。かつてないほどに彼は怒っている。

普段なら私はごめんなさい!と謝っただろう。それをしなかったのは酔っていて、上手く思考ができなかったからだ。

反応しない私を不自然に思ったのかポチはベットに腰かけるとそっと頬に触れて酔っているのかと聞いてきた。

私はそれに答えず目を閉じた。ポチの手はひんやりしていてとても冷たくて、気持ちい。キティの時のように嫌な感じもしなかった。


「まったく。心配させるなよ」


「心配?心配してくれたの?」


「当たり前だろ」


むっとしたその声に反抗心が生まれてでも、と私は反論した。


「自分だって女の子達と楽しんでいたくせに」


「はあ?お前も見てただろう。あれのどこが喜んでいたっていうんだ」


その言葉には答えず私は知らないとポチとは反対の方を向いた。


「知らない。それに私が何しようがポチには関係ないでしょう」


「なんだそれ。俺がここに来なかったらどうなってたかわかってるのか」


「別に来なくても良かったのに。だってそういうパーティなんでしょ。今日は」


いつもならこんなこと言わないのに言葉がどんどん出てくる。来てくれて嬉しいと思っているくせに、心にもないことまで言ってしまう。

まずいと思ったのはなんだとと低い低いポチの声が背後から聞こえた時だった。

ぐいっと体を引かれたと思ったら仰向けにされ、上に乗られた。先程のキティとの同じ体制。けれど、キティとは違う。キティはこんなに痛いほどに肩をつかんだりしなかった。


「じゃあお前はあのままあいつにされても良かったってことか?」


「……そんなのポチに関係ないでしょう。……っ」


「答えろ」


肩の力が強くなって、私は思わず涙を浮かべる。ポチに対して怖いなんて思ったことなかったのに、今は恐怖を感じずにはいられない。

恐怖で答えられないでいるとポチは何を思ったか顔を近づけて……そうしえ私の首筋に沈めた。


「何……っ!」


チクリ、と小さな刺激。痛いのにぞくりとしたなんとも言えない感覚が体を這った。


「答えられなければ肯定ととるからな」


その言葉の後、またチクリと痛みが走る。


「や、だ」


「嫌?あいつは良いのに?」


嫌だと言っているのにポチはやめてくれない。また、その行為が手慣れていて、それに気づくとまた胸が締め付けられるように痛んだ。


「初対面のあいつに許すんだ、誰でも良いんだろう?なら俺でも構わないはずだ」


「ポチ、だから嫌なの……!」


「お前は……。俺の事がそんなに嫌いなのか?」


その言葉に私は首を横に振る。嫌い?違う。そんな訳ない。


「好き、だから」


だから、私は。


「だから絶対ポチだけは嫌……!!」

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