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交尾を求められました。

「無理!無理無理無理無理無理!!」


ペットライフ三ヶ月目。私は全力で首を振った。振りすぎて首がもげそうになったが気にしない。私は振り続ける。

と、もげる前に落ち着けとポチに両手でがしりと頭をつかまれ動きを封じられた。


「無理無理無理無理無理」


首が振れないので私は仕方なく言葉だけで拒否を表した。するとポチにはあとため息をはかれた。


「俺だって人前でするなんて嫌だ。が、見てみろあいつを」


彼の親指を示した先を見て私はひいい!と悲鳴を上げた。そこにはそっとこちらを期待するような目でキラキラ見る四十代ほどのでっぷり太ったおやじ……御主人様がいた。

この世界の人は見た目は人間と何も変わらない。違いと言えば魔法が使えるくらいである。

見た目変わらない生き物をペットにできる神経がわからない。特殊な性癖かっ!?と震えるばかりであるが、どうやらそれが普通のことであるらしく、御主人様を見ても誰もごみを見るような目で見ていない。

彼らにとって私達はペット以外のなにものでもないのだ。だから、私達の裸を見てもなんとも思わないし、排泄だってあらあらと見ていられる。私はここに来て恥というものはだいぶ捨てた。が、さすがにこれは無理だ!!


「こ、こここ交尾なんて絶対に無理!!!!」


交尾!交尾!!つまりいやーんな行為だ。無理無理!!

そりゃあ私も確かにたまが子供を出産した時は嬉しかったし、猫の交尾とか見たことない訳ではないけど他人に自分が見られるのはマジで勘弁である。

それになによりだ。交尾を、その、私がする?

かあ!!と顔が赤くなるのを感じる。

無理だ。無理無理無理無理無理無理無理無理!!!

だって私そんな行為したことないもん!!そもそも恋人すらできたことない!キス?もちろんありますよ!?ええ!生まれてすぐに母にしてもらいましたね!

ゆでダコのようになった私に気づいたのかポチはにやにやとこちらを見てきた。


「なんだ?以外と初なんだな」


「っ!?うるさいっ!あんたなんてポチのくせに!!」


「お前だってたまだろうが」


ごめんなさいねえ!私はイケメン様なあんたと違ってモテない女なんだよ!!

犬のごとくきゃんきゃんと吠える私にクスクスとポチは笑う。その余裕がまたうざい!


「とにかく絶対に嫌!」


「そんなに嫌がらなくても優しくしてやるのに」


「そういう問題じゃないのよ!!」


今やペットとなってしまった私だがこれでもちゃんと女の子なのだ。

私はちらりとポチを見る。余裕そうなポチの顔。きっと彼にとってはこんな行為なんともないのだ。だって彼と私は違う。地球にいれば順風満帆な人生を送れるはずだった人。

こんなところに来なければ私なんて話しかけもしなかったに違いない。それほどに彼と私は違う。私がどんなに彼を想ってもその想いは帰って来ないに決まっている。

今はそれをよく理解している。でも、そんな行為をしてしまえば私はきっと彼に求めてしまうだろう。私への想いを。

なら、今のままが良い。


「とにかく私は絶対に嫌だから!!」


私はそう叫ぶようにふん!と彼に背を向けた。

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