たま♀になりました。
私には決定的に運というものが足りない。
そもそも人並みの運があれば私は異世界トリップなんてものをしちゃあいない。異世界トリップ。異世界トリップである。まさかそんなもの自分の身に起こるなんて思ってトリップした人間などいないだろうが、言わせてほしい、何故私なんだと。
まだ、よく聞く特典がついているなら良い。ほら例えばすごい大きな魔力を持っているとか、特別な力を持っているとか、びっくりするくらいに周りに好かれるとか、あるじゃないか、そう言うの。
だが、残念ながらそんなもの私は持っていなかった。特別な力なんて持っちゃいないし、周りにも好かれちゃいない。いや、好かれているかもしれないが、それはなんというか皆が期待するようなものではない。
そもそも私この異世界で人間扱いされていない。いや人間扱いではあるのだ。うん。が、人間=ペットのこの世界でそれはちょっと、いやだいぶ辛い。
ペットだ。ペットである。もう一度言おう。そうして何度でも言おうペット。ペットだ。
猫とか犬とかそれと同等で扱われているのである。言葉はもちろん通じない。ペット扱いしないでくださいと言えば、あらあらごはんがほしいの?と微笑まれるこの屈辱。
家で飼っていた猫のたま。まことに申し訳ない。お前もこんな気持ちだったのだね。ごめんね、寝てるとこ起こしてかまえよーと揺さぶって。
ペットな私は今や飼い人間である。毎日の散歩だけを楽しみに生きている。もちろんその際は首輪付である。どんなプレイだ。私にはだいぶバード過ぎる。
屈辱的な毎日。堪えられたのはなんと言っても仲間がいたから。
そう仲間のポチ♂がいるからである。
ポチ♂彼もまた人間であり私と共に異世界トリップしてきた人間である。私とは違いかなりの美形だ。頭も良いようである。私でも知っている有名な高校に通っていたし、なんか会話の節々に教養を感じる。かわいそうに。地球にいれば誰もが羨む薔薇色の人生が送れていただろうに。今やポチ♂だ。聞いた瞬間笑った。ポチwwwと。……そのあとすぐに天罰がくだり我が家の猫と同じ名前のタマとつけられたのだが。
あの時のやつの顔は忘れない。あいつもタマwwwと笑っていた。自分もポチのくせに、憎らしいやつである。
そうして何が辛いって名前を御主人様につけられると言うことは隷属の証でもありしく、その名前以外では呼び合えないそう。
つまり、私は死ぬまでたま。ポチが目の前にいなければ毎日毎日泣いて暮らしていたことだろう。
まあ、そんなこんなで私達はペットライフを過ごしていた。