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レベル6・スケルトン は 死んだふり を 覚えた!

 うーむ、冒険者探し、正確に言うなら瀕死の冒険者探しって難しいなぁ。


 フェンリル様の御姿を拝んでから早ほにゃらら日、冒険者は何回か見かけてるんだけどなー、瀕死ってなるとなー。

 そもそもここ低層階だし、こんなとこで苦戦してたら冒険者務まらんよなぁ。

 さすがスケルトン、子供相手じゃないと勝てない、さすがです。

 あのフェンリルに追っかけられてた冒険者がイレギュラーだったんだろうなぁ、はぁ……


 大体スケルトンの耐久力無さすぎだよね、基本一撃でやられてんもん。

 ガッシャーンて音が聞こえてから駆けつけても戦闘終わってるもん、観察どころじゃないもん、自分も同じだと思ったら冒険者が怖くて近寄れないもん、見かけたら逃げちゃうもん。

 カタカタうっさいからこっそり追跡するとかできないし、どないせーっちゅうねん。


 ……閃いた!

 冒険者探す必要無いじゃん! スケルトン、ああこの際モンスターだったらなんでもいいや、とりあえずモンスターを追っかければいいんだ!

 いつかは冒険者とぶつかるだろうから戦闘が最初から観れる!

 僕ちゃんあったまいーぃ!

 よし、踊ろう。


(※スケルトンが踊っています、少々お待ちください)


 なんだか無性に恥ずかしいのは何故だろう。


 よし、とりあえずモンスターを探すとこからだな。

 おーいそこのスケルトン君ちょっとお待ちよー。


「カカカカッ」



――――――――――



 むむ!

 あれに見えるは冒険者ではないか!

 行くが良い、我が忠実なる下部、スケルトンよ!

 我輩はちょっとそこの物影からコソッと覗いておるからな、頑張るのだぞ。

 さて、コソッと観察開始だ。


 相手の冒険者はどんな人かなっと、観察観察。

 見た目は男、容姿は不細工、顔に肉がついてる時点で不細工というスケルトン基準だが。

 茶髪とか無いわー、髪の毛がある時点で無いのにさらに茶髪とか無いわー。

 綺麗な青色の目も人間基準ならイケメンかもしれんけど、目がある時点で不細工決定だわ、もちろんスケルトン基準で。

 体も筋肉つきすぎ、肉があるのは羨ましいけどスケルトン基準だとありすぎ、もっと骨が見えるくらい痩せてないとモテないぞ。

 総じてスケルトン基準だとダメダメなヤツだな、モテないし弱いだろう。

 まあ人間基準で言えばちょっと、いやかなり、正直に言えば滅茶苦茶カッコいいです。


 装備品は……俺とあんま変わらん。

 鉄の剣、鉄の盾、皮の鎧、皮の脛当て、皮の靴、頭はなんも着けてないけどいいのかな?

 まあ俺なんて頭どころか骨まで剥き出しですけどー!


 さて、どんな一撃で我が下部を葬ってくれるのか……なんぞあれ?

 なんか光っとる、体が光っとる。

 ぼやや〜んとしたモヤみたいなもんが体の表面を覆っとる。


 あ、動いた。


 わーお、スケルトン君瞬殺されちゃったよ。

 別に対した速さじゃなかったけど、実際スケルトン君も対応できてたけど、パワーが足らんかったっぽい。

 防御した剣を押し退けて体をぶった切ってたしなぁ、あの光の影響か?

 思い出してみれば腕部分の光が若干強めだったような気がするし、身体強化の魔法かなんかかな?

 ちょっと冒険者さんの記憶を見てみよう。


 ……あー、あるある、確かにそういう技術あるわー。

 つまりあれか、これが真似できれば俺もスケルトンからスーパースケルトンにジョブチェンジか。


 あ、冒険者こっち来んな、あ、ヤバイなんかアバラ骨に腕の骨が引っかかった。

 ちょこれどうしよう焦ってうまく取れないヤバイヤバイこっち来んなってー!

 こ、こんな時こそ「ただのしかばね」ごっこだ! そーれ!


 ……


 …………


 ………………


 見られてる、めっちゃ見られてる、こっち見んな。

 しまった、ダンジョン内って死体とか残んないんだった、ヤバイこれ超不自然じゃん。

 いやしかしどうするこれ、今更むっくり起き上がったら死亡確定だし、なんてったってスケルトンですしおすし。

 もう俺じゃなくて俺の後ろにいる何かを見てると信じてやり過ごすしかない、あの冒険者の死んだお爺ちゃんとかが俺の後ろにいるんだ、きっとそうだ、信じるんだ自分!


「……なんだ、ただのしかばねか」


 通じたー! まさかの「ただのしかばね」ごっこが通じたー!

 何こいつどんだけ初心者なんだよ!?

 ダンジョンの常識知らないの!? ダンジョンの驚異的な雑食性を知らないの!? 俺の胃袋は宇宙だ、を比喩とか例えとかじゃなくてガチでやっちゃうんだよ!?


 っていうか俺のことは認識してたのね、俺の後ろにお爺ちゃんとかいなかったのね。


「あ」


 ビクンチョ!

 え、え、なにその「あ」って、やめてちょっと怖いんですけど。

 その後に続く言葉は「もしかしてこいつ……」とかですか、やめて放っておいて近寄らないで。


「じ……じいちゃん?」


 爺さんいたー! まさかの爺さんがほんとにいたー!

 ってか泣くなよ、なんだよそんなに爺さん好きだったのかよ、きっと冒険者の心得とか言って訓練に付き合ってくれてたんだろうな。

 そんで自分の寿命がわかっちゃって「ワシを超えてみろ」とか言っちゃって、ヨボヨボの体を無理矢理動かして弱々しい姿を晒して、そんで「もう辞めよう!」とか言っちゃう冒険者に「馬鹿者! 戦士を相手に手を抜くなど最大の侮辱じゃ!」とかなんとか言うんだよ。

 そんで冒険者をやる覚悟を決めさせちゃったりして、負けた瞬間に「達者で生きろよ、愛する孫よ」とか言っちゃってー! 言っちゃってー!

 冒険者が「じいちゃーーーん!」って抱きしめる中で静かに息を引き取ったんだ、きっとそんくらい仲が良かったんだ、そうに違いない。

 アカン、涙が止まらない。

 ちゃんと涙流してるよ、心の中で、大号泣だよ、スタンディングオベーションだよ。


「じいちゃん、俺頑張るよ。

 だから見ててくれ! 俺はきっとじいちゃんみたいな冒険者になってみせるから!」


 ええ話や〜、めっちゃええ話や〜。

 まあスケルトンを見逃してる時点で君の冒険者人生は雲行きが怪しいけどね。

 せいぜい頑張りたまえ、ハッハッハ。


 ……とか言ってるうちに行ってしまった。

 マジで気づかないとか、ほんとに大丈夫かなあの冒険者。

 あ、あなたもそう思いますかお爺さん、バカな孫を持つと苦労しますねぇ。



――――――――――



 さて、同じ手段で何組かの戦闘を見たわけだけども……

 とりあえずわかったのは根本的にパワーが足りないってことかな、冒険者を相手にするのはスケルトンのパワーじゃ相当キツい。

 防御が防御になってないんだもんなぁ、剣で防げば力負けして押し留められない、盾で防御すれば盾ごと真っ二つ、もう防御しないで避けようとしたほうがまだマシだよ。


 まあその避けるってのも大分キツイんですよね、こっちもやっぱりパワーが足りん。

 脚力どころかあらゆる稼働部のパワーが無いから素早い動作ができない、見てから避けるとかまず無理だし、予測して避けようにも予測が外れたら一発退場だし、部が悪すぎる。

 瞬発的な話でも持久的な話でも一緒、ようするに何やっても遅い。


 パワーだなぁ、出力っちゅーかなんちゅーか、パワーこそ力だというか。


 ……そもそも俺、っていうかスケルトンってどーやって体動かしてんねやろ?

 肉ねーし、軟骨とかもねーし、腰当てとか明らかに腰骨から浮いてんのにくっついてるみたいに自然に動くよね。


 魔力かな、まあどうせ魔力だろうな、というか魔力以外で可能性が見当たらん。

 あれかな、紐みたいな感じかな、なんか違う気がする。見えない芯があるような? なんかこれも微妙に違う気がする。

 スケルトンの形に魔力の型枠みたいなのがあって、そこに骨とか装備品をはめ込んでる、ってのが一番近い感覚か?

 ただのしかばねごっこはその型枠を一時的にバラす、みたいな感じだったし。


 ってことはこの型枠部分に魔力を注いで強くすればいいんかな?

 ってか俺って魔力とか操作できんのかな。


 うん、できた、割と簡単にできた。

 なんか体内……いや内側も外側もあったもんじゃないけど、人間で言えば胸の真ん中を中心にしてぼやーんとした魔力的なアレっぽいのがあるような気がする。

 そんで型枠? すっげぼやっとしてどっちかってと粘土とかで作った余り部分が大量にあるようなもんだなぁ、まあそれを実際作ってるわ。

 そんで型枠の魔力は全部同程度の魔力が込められてるわけだけど、この濃淡は結構簡単に変えられるわ。

 よーしそんじゃ魔力込めちゃうぞー、パパ頑張っちゃうぞー。


 レッツトライ!


 ハッハッハ! 素晴らしい!

 素敵にさえ感じられるほど見事だよ!


 見事に、見事に……


 ガッシャーンてなったよ……何故だ!?

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