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レベル3・スケルトン は なにか を 調べている!

 さて、これからどうするかという話の前に冒険者の記憶……私にとっては記録だが、面白そうな情報があるな。


 かつて私と同じような存在が出現したことがあるらしい。

 『真紅の血(クリムゾン・ブラッド)』と呼ばれたその最高位モンスターは、見た目はただのスケルトンであった。

 ただし初期のころこそ普通の白色であったが、数々の冒険者を返り討ちにして浴びた返り血が体を赤く染め、最終的には変色して黒くなっていたそうな。


 普通のスケルトンと唯一絶対に違ったのは「技術」だ。

 発見された時点で、まるで剣の道を、それも力を込めた所謂剛剣ではなく、最低限の必要な力だけで戦う謂わば柔剣とでも言うべき剣の使い手であった。


 最初に発見された低階層では叶う冒険者などいるはずも無く、スケルトンと舐めてかかれば漏れなく一刀両断であったとのこと。

 やっと冒険者組合……俗に言う冒険者ギルドだな、これが危険種判定を下して討伐隊を編成するも、やはり所詮スケルトンと舐めてかかったのが悲劇の始まり。

 なんと討伐隊を全て返り討ちにし、挙句ダンジョンの中層に押しやってしまうという結果になった。


 中層以降は搾りカスなどではない、明確な目的と役割を持たされたモンスター達が蔓延る魔境だ。

 雑魚モンスターもいるが、意思とまでは言わずとも思考能力を持ったモンスターが多く存在している。

 当然、その身を構成する魔力は雑魚とは比較にならない。

 そんな場所に冒険者を切りまくったスケルトンを放り込む等、強くなってくださいと言っているようなものだろう。

 ダンジョンがそう仕向けたのか、それともこの時点ですでにスケルトンに意識があったのかは不明ではあるが、案の定その剣豪スケルトンは再発見された時点でとんでもない強さになっていた。

 慌てたギルドは高ランクの冒険者を招集し、高層に挑むような準備を持って討伐隊を再編成することになる。

 侮るような備えでは無かったのであろうが、やはりどこかで所詮スケルトンという発想があったのだろう。

 討伐隊がスケルトンを発見できたのがまさかの高層一歩手前、高層と中層の間にある扉、そこを守るガーディアンの役目を持った高位モンスターを今まさに切り伏せた瞬間だった。


 もちろん討伐隊は一戦交えるも、あと一歩及ばずスケルトンを高層へと逃すこととなる。

 それも仕方が無い事であろう、何せ冒険者が最低でも5人、役割分担の決まったしっかりとしたパーティーでもって討伐するようなガーディアンをたった一体で倒してしまうようなスケルトンだ。

 討伐隊の想定よりも遥かに強くなっていたのであれば、負けることこそ無いにせよ苦戦は必死であったはずだ。


 少なくともこの時点で、スケルトンには明確な意識が存在することが確認されている。

 冒険者の動きを観察するような素振りを見せ、役割分担を見極めて後衛を真っ先に狙う等といった、モンスターらしくない行動をとっていたそうだ。

 それこそ高層に出現する高位モンスターのように。


 討伐隊は少なくない被害を出しつつ、あと一歩というところでスケルトンは門をくぐり高層へと逃亡、そして一時的に行方不明となる。

 討伐隊は被害状況から高層階まで追撃することは不可能と判断し、任務失敗として帰路につくこととなった。


 次に剣豪スケルトンが発見されたのは、朝日が昇るのを数えて三桁を超えたころ。

 二回目の討伐隊に参加し、同じ討伐隊に参加していた仲間を殺されている冒険者が、執念で高層階を探し回って見つけたとされている。

 返り血で赤く染まっていた剣豪スケルトンは、この時点で赤黒く、骨ではなく血で作られているのでは無いかと思われるほどに赤く染まっていたらしい。

 冒険者ギルドは高層階でも生き残っているスケルトンを、ドラゴンやフェンリル等の大型魔獣種と並ぶ危険種として、それらと同じかそれ以上の懸賞金をかけることとなる。

 血のような赤いスケルトンということから『真紅の血(クリムゾン・ブラッド)』という個体名をつけて……


 ここから剣豪スケルトンと冒険者との歴史は長くなる。

 戦場は主にダンジョン内での話となるが、高層は広く・深い。

 高層階の半分も到達しないうちに、低層と中層を足しても軽く上回ってしまうくらいに広い。

 戦っては逃げられ、ある時は大きな被害を出し、ある時は奥へと逃げられ、ある時は大型魔獣の横槍が入り、まるでダンジョンがスケルトンを最深部へと導いているかのように、長い長い戦いはダンジョンの奥へと移って行く。

 この時に活躍した英雄とも言われるのが四人の戦士達。

 仲間を失った冒険者、スケルトンと唯一まともに切り結ぶことのできた大剣豪グラント。

 後にグラントと結婚する、あらゆる魔法を使いこなす希代の大魔法使いリリー。

 表の世界の代弁者として、驚異的な能力を誇るエルフの戦士アリスト。

 アンデッド系に対して絶対的な優位を持つ神官でありながら、最大の武器は自らの肉体であると拳を振るった格闘家ケビン。


 グラントを筆頭に彼らはスケルトンと数知れぬほどの激戦を繰り広げ、その戦いで鍛え上げられた彼らは表の世界、つまり地上でも様々な功績をあげていたという。


 やがて彼らはダンジョンの最深部へと到達し、逃げ場の無くなったスケルトンと最後の決戦を繰り広げた。

 最深部のガーディアンでさえ邪魔だと言わんばかりに軽く打ち倒したグラント達であったが、スケルトンの強さはそれを更に上回っていた。

 なにがあったかは本人達でなければ知る由もないが、少なくともスケルトンはこの時点でグラント達よりも強かったらしい。

 負けるかと思われた瞬間、唐突にスケルトンは「消えた」

 スケルトンだけではない、ダンジョン内にいた全てのモンスターが、ダンジョンを構成する源である核までもが消え去っていた。

 後に「大消失」と呼ばれる現象だ。


 核までもが消失してしまっていた以上ダンジョンの崩壊は必死、グラント達はなんとか脱出するものの、消えたスケルトンが死んだとはとても思えず、いつかまた現れる剣豪スケルトンに備えて腕を磨き続けたという。


 そして、その時は来た。


 突如ダンジョン跡地から一体のスケルトンが現れたのだ。

 色こそ黒く、肉は無いものの鎧を見に纏い、かつてとは比較にならないほど強力な力のこもった剣を手にそれは現れた。

 そして、それは相手の望みを叶えるが如く、ゆっくりとグラントのいる国へ向かっていた。


 始まる最終決戦、斥候部隊が命懸けで入手した情報と、異常事態と判断したギルド、同じ判断を下した国の協力によって立ち上げられた専門の調査団により、スケルトンはダンジョンの全てを奪い取った「ダンジョンそのもの」であると仮説がたてられた。

 未曾有の危機に対し、人間達は周辺国家が一致団結した大連合軍を立ち上げ、たった一体のスケルトンを相手に後方部隊まで含めて何十万という戦力を用意する。


 そうして始まったダンジョン対人間連合の戦い。

 ダンジョンそのものであるスケルトンは無限とも思えるほどのモンスターを生み出し、連合軍と相対した。

 しかし彼が真に求めていたのは、グラント達との決着であったのだろう。

 アリストの命をかけた魔法が血路を開いた時も、ケビンの魂を使った結界を展開した時も、スケルトンは決して自ら手出しをすることはなかった。


 そして、グラントとスケルトンは最後の対面を果たす。


 そこで何があったのかを知る術は無い。

 結界が消えた時に残っていたのは、満足気な笑みをした大剣豪グラントの亡骸だけであったから。

 赤いスケルトンは消え、大消失を再現したかのように全てのモンスターも消え去り、未曾有の危機は消えた。


 真相を知るグラントは死に、朝日が万の数を超えるほど姿を現した今でも赤いスケルトンは現れていない。


 英雄伝「真紅の血(クリムゾン・ブラッド)」として語られている話はこうして幕を閉じている。


 ちなみに私が殺した冒険者によれば、この話は伝説どころか100年前かそこらの時期に起こった実話らしい。

 今はグラントの子孫が勇者の一族とか言われて世界各地の似たような現象を探し、事前にしっかりと潰して回っているそうだ。

 ……怖いな。


 さて、この話が実話であるならば、私の今後について参考になるだろう……

 と、いうわけで色々推測してみよう。


【学習能力が発動しました、INTが少し上昇します】

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