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レベル17・スケルトン は 火魔法 を 覚えた!

 ダッシュ! えーん、ジャンプ!

 空中で前方宙返りを決めつつその勢いを利用しての〜、チェェェエエストゥッ!

 着地! えーん、ダッシュ!

 はいリズム良くー、はい足を止めないでー、はい諦めないでー、諦めたら死ぬよー、冗談じゃなく死ぬよー。


「シャギャァァァア!」


 まだ追っかけてくるとか、しつこいなあ。

 蜘蛛ってもっと受身な生き物ちゃうの。


 あ、どうもファイヤースケルトンです。

 現在私は逃げております、先程遭遇したばかりの気色悪い色合いをしていらっしゃる蜘蛛さんに熱烈なラブコールを送られております、彼女の声を翻訳するときっとこうなるでしょう。


「好きです! あなたを頭からボリボリ噛み砕きたい!」


 うむ、絶対に受け取りたくないラブコールですね。

 部屋から飛び出し通路を走り幾つもの部屋を通過したわけですが、今だに諦めてくれる気配がございません。

 しかもあっちこっちから同じようなのがどんどん増えてくるし、ちょいちょいニアミスするから倒さないと先に進めない場面も結構あるし、どっか安全地帯は無いものでしょうかね。


「シャー!」


 おっとぉ!? さすがは蜘蛛!

 天井に張り付いて待ち伏せとは恐れ入った、今までで一番蜘蛛っぽい動きだ。

 どぅぁが、貴様らの攻撃はもはや見切ったわ!

 関節の位置関係上、お主らは伸ばした脚と顔の前が作り出す三角形地帯が攻撃の届かない隙間となるのじゃ!

 後ろでも横でも上下でもなく、前こそが活路である! ということを五体目くらいの時に気づきました!

 そしてそこに入り込めば貴様の攻撃手段は―――――


「キシャー!」


 ―――――噛み付き攻撃しか無いんですよね!

 えいっ。

 よし、さすがに顔から身体の半分を両断されれば生きてはおるまい、生死の確認をするまでもな……あぶなっしゃー!?

 生死の確認なんかしてる暇ねーんだよボケェ!? 死んだか死んでないかなんて見てたら見てる間に後ろから串刺しにされるわ!


 ってかマジでしつこいなこいつら!

 どっか無いか、なんか無いか、逃げ道は、逃げる手段は。

 どっかに都合良く冒険者パーティーいないか!? いないか、いないな。

 せめて遠距離攻撃手段があればなんとかなるかもだけど、現状魔石を使った炎は飛ばせないしな、マジでどうしよ。

 おおっと糸が飛んできたぜファイヤー!


 そういや、あいつらってどんな原理で糸を飛ばしてんだろ? 真似して炎を飛ばせたりしないかな。

 う◯ことかお◯っこみたいなもんだったら、排出方向を限定して、内側から圧力をかける押し出し方式だったような。


 ……試してみよか。

 型枠の応用で魔石を魔力で覆いーの、一方向だけ穴を開けーの、ほんで魔石に魔力を込める……怖いから1%くらいで。

 ほいよっと。


 お、なんかピンポン玉みたいなんが出た、これはもしかして成功でわ!?

 よし、2%にしてみよう。

 握り拳くらいになった、1%との差が激しいなおい、壁に当たった瞬間爆発するあたりなかなかいい感じでないかい?

 よし、一瞬だけ振り向いてからの〜、3%ファイヤッ!


「ギャシャー!?」


 いよっし、周りのヤツらも燃えたヤツにビビってちょっと足が止まった、今のうちに逃げっ!

 おおっと切り替え早いね君たち、燃えた子を速攻で見捨てたよ、もうちょっと仲間意識ってもんを持った方がいいと思うよ? 仲間がいない俺に言われるのもどうかと思うけど。


 よし、じゃあ次は4%いってみよう。

 いい感じに長い直線の通路だし、ここでいい感じに爆発させられれば引きながら炎攻撃でいい感じに殲滅できるかもしれん。

 振り向きからの〜……ファイヤぶらぼあっしゃー!?


 あ、ありのままに今起こったことを話すぜ。

 俺は炎を蜘蛛に向かって放ったと思った次の瞬間、俺は後ろに「吹き飛んでいた」

 な、何を言っているのか(略)恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。


 ……うん、まあ要は爆発力が強すぎて吹き飛ばされただけなんですけどね、蜘蛛じゃなくて俺が。

 つ、使えねー! 自爆技じゃねーか、これ5%以上利用したらこっちの体が先にバラバラになるわ! 再生も一瞬で済むような便利なもんじゃないんだぞ!?

 ま、まあ、緊急回避手段くらいには使ってやれるけどなっ。


 とりあえず蜘蛛達との距離がちょっと開いたな、今のうちにファーヤボーッ! 現地人っぽくそれっぽい発音で言えば強くなる気がする、ファーヤボーッ!

 まあ俺は声なんて出ないけどねっ、とりあえずファーヤボーッ!


「カカカカッ!」


 いい感じにファイヤースパイダーウォールが出来上がってきた、もうちょっと大きくなればなんとか逃げられるくらいの時間は稼げそうですな!

 やっぱ魔法ですよ魔法、これを魔法と言っていいかはかなり際どい気がするけど魔法強いッス。

 とか言って油断してたら正面から来ていらっしゃる!? 気配感じないよ君ら! もうちょっと存在感ってものをだねぇ!?


 うおー、前に踏み込む余裕も無いほど素早い突きですな!

 やべぇこれ避けられない、何やっても多分微妙に当たる、そんな気がする、なんでわかるかは知らん。


 とりあえず、避けられないならせめてダメージを減らす方向でいこう。

 具体的には盾……のような役割をできるかどうか怪しいこの木板を使って!

 垂直に受け止めたらまず間違いなく貫通されます、多分、絶対。

 となれば逸らす方向で、出来るだけ水平に当てつつ体に当たらない方向に流す感じで、受けて右から左へ流すから受け流し!

 怖いから木板に思いっきり魔力を注いでおこう、もちろん身体能力に影響が無い範囲で、10%中のほんの10%くらいにしておこう、うん、全部使うとかどんだけチキンなんだって話ですね。


 準備はでぇきたぁっ!

 さあこの目の前の脚にっ、添えるようにして木板を……なんか黒く変色しちゃってる!? と、とりあえず木板を当ててっ、体の外側に逸らしてっ、そのまま滑らせながら近寄ってっ、蜘蛛さんの顔をチェィッストゥッ!


 ……あれ、なんか余計なことまでしてもーた。

 まあ危機は回避でき……てない! 右から、は盾と同じ要領で逸らす! 左から、は盾を使ってやっぱり逸らす! なんか盾どころか剣も黒くなってきてる気がしますけど気にしない、気にしてる暇がねーよ!


 避ける、飛ぶ、ファーヤボーッ、盾で逸らす、チィイェエィッスト、ファーヤボーッ、盾、チェスァ。

 あ、やべ、空中で身動きとれないのに五本くらい一斉に来そう。

 避けられる方向は多分俺の後ろだけっぽい、ここは緊急回避をやるしかっ。

 どうか体がバラバラになりませんように4%ファイヤー!

 ぐっほぁぁぁあ!


 さ、避けたー、なんとか避けたー。

 着地は華麗に決めた! と言いたかったけど無理でした、ええ無理でしたとも、爆発の勢いありすぎですよええありゃ無理です。

 ええ、ええ、でも生きてるからいいんですよ、何事も生きていなければ意味がないんですよ。

 あ、俺スケルトンだからもう死んでるか。


 しかしヤバいなー、後ろは足止めできてるけど時間の問題だしなー。

 10体くらいいる正面を突破するまでに足止めできるかな、無理かな、無理かも、うん無理だ。

 とはいえ活路は正面しかないわけで、つっこむしかないんだろうなぁ。


 ……なんか来る。


「撃て!」


 この位置はヤバイ!

 壁際に回避!


 ……っぶねー、超あぶねー。

 なんだあのやたら派手な炎の塊は、魔法か? まあ魔法だろうけど。

 すごいな魔法、あんなすごいの出せるんだ、やっぱり夢とロマンだね。


 っていうかあんなのが飛んできた上に声がしたってことは都合よく人間のパーティーがいらっしゃったってことじゃない?

 これは脱出のチャーンス、パーティーなら敵を倒しながら来たはず、つまり後方には敵がいない!

 魔法の余波で蜘蛛達が燃えてる今のうちに飛び出す今シカ、ウマシカ!


 とうっ!


「なっ、スケルトン!?」


 なっ、こいつはいつぞやのお爺ちゃんっ子!?

 騙されたことに気づいて痛めつけに来たとかそんな感じか!


 ……いやよく考えたらあの時と姿も色も違うしわかるわけねー、しかもお爺ちゃんいたし、別に騙してはいないし!

 関係なく偶然ここに来たって感じですか。

 いやしかしそれにしてもすごいわこの子、身体強化があの盗賊パワー君でさえあんな微妙な形でしかできてなかったのにほぼ全身を強化できてる。

 しかも魔力の密度?って言えばいいのかな、まあそれが俺ともパワー君とも全然違うし、これはまともに打ち合ったら負けんじゃね?

 やっぱ才能あったんだろうなー、最初に会った時からどんくらい時間が経ったんだかしらんけど長くはないハズだし、短期間で(多分)中層階に来れるようになってるんだもんなー、羨ましいわー。

 あとは顔と体つきさえもっとガリガリで骨みたいなスケルトン風の見た目であれば男の俺でも惚れてたかもしれん。


「何してる!

 スケルトンが相手だろうと気を抜くな、ここは中層階だぞ!」


 おっといいこと言うね(多分)リーダーさん。

 ……なんかどっかで見たことあんなー、あの豚みたいな顔つき。


「あ、す、すまない」


 いえいえどうぞお構いなく。

 できればそのまま気を抜いておいてください、私の後ろにいる蜘蛛達のためにとっておいてください。

 わー構えちゃったよ、超気合いれちゃったよ、やめてマジでそんなに強化された状態で攻撃されたら死んでしまいます。


 右、魔法使いっぽい女性がいる、さっきの魔法は多分この人かな。

 豚リーダーさんががっちりガード固めてますね、惚れてんのかな。

 とりあえず、こっちに逃げるのは無理だ諦めよう。


 左、聖職者っぽい感じ、嫌なオーラ出してる、あれは無理、嫌だ、近寄りたくない。

 同じ女性であきらかにこっちのほうが弱そうだけど嫌だ、大体そんなボンキュッボーンな女など好みではないのじゃ。

 女ならやはりガリッベコンッスコーンな細すぎる美人女性がベスト、細ければ細いほどいい!

 というわけで、こっちに逃げるのもやめよう、オーラ的にも女性の好み的にも。


 正面……ヤだなぁ、やっぱりお爺ちゃんっ子がでーんと構えてるよ、でーんと。

 どうやって避けよう、なんか迂闊な行動した瞬間に一刀両断されそうでおじちゃん怖いよ。

 おじちゃんっていうほど生きてないけど。


 構え、右後ろに剣を流して構えてる、切り払いとか切り上げがやりやすい構え、相手が向かってくることがわかってる場合には有効な構えですね。

 剣と剣をぶつけ合って態勢を崩したところを返しの一撃、または相手の攻撃を避けつつカウンター気味に攻撃を加える、っていうスタンス。

 逆に相手はカウンターより早く相手に攻撃を届かせるか、相手より早く態勢を立て直して逆に相手を攻撃するか、っていう対決する当事者同士の技量が直接影響する対決方法ですな。

 まあ力技でぶつけてきた剣ごと叩ききるっていうヤツもいるだろうけど、俺には無理だわ、っていうか下手すると俺がやられる側じゃん!?


 じゃあ俺はどうすんだ、っていうと……こうする!


「おりゃあぁっ!」

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