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レベル16・スケルトン は 混乱 している!

 ―――――つ撃なめんなー! ここはどこじゃー!? 扉はどこに行ったんじゃー!? 何が起こったんじゃ!?


 ……うん、マジで今何が起こったんだ?

 気がついたら目の前に壁が出現したんですけど、何これ、扉どこ行ったん。

 しかもなんかこの壁やたらと黒いんですけど、黒が濃いんですけど、さっきまでいた階層はどっちかっていうと青に近い色だったんですけど、扉にいたっては金色の装飾までされてたんですけど?

 黒い壁って中階層じゃなかったっけ? 少なくとも冒険者の記憶だと低階層にこんな壁があるフロアなんて無いぞ。


「ムフー」


 なんか生温い風が吹いてんなー、気持ち悪い、いやスケルトンに暑いも寒いも無いから高熱だろうが極寒だろうが大概は生温いって言えちゃうけどね。

 とりあえず目の前の壁が本当に黒いのか確認してみよう、もしかしたらダンジョンさんがまだ食べてないだけで冒険者の血がべっとり付いてるのかもしれないしね。


「スー……ブフー」


 ぶわ、もろに風が当たった、なんか獣臭いよこの風、匂いとか場合によっては環境問題まで発展しちゃうよ、営業停止命令でちゃうよ、まったく管理がなってないフロアだな。


 そんなことより壁だよ壁、ペタペタ〜っと。

 うーむ、何かが付着して黒くなってるとかでは無いな、壁自体が元からこういう色だったって感じだ。

 右を見ても左を見ても同じ壁が続いてる、あ、なんか通路っぽいの発見。

 あれ、ボス部屋に通路なんて無いと冒険者の記憶が言っとるぞ。

 もしかしてここボス部屋じゃないん?


「……フッ」


 ぶわ、なんか飛んできた!?

 あーあー、なんか濡れちゃってるよ、何この微妙にベタつく謎の液体は、まるで鼻水みてーな……

 なんかこんな感じのシチュエーション前にも無かったか?

 あん時はなんだっけ、確か俺が意識を手に入れた直後で、冒険者が近くに倒れてて、そんでなんかを呼ぼうとして……あ、フェンリル様だ。


 え、フェンリル様?


 ぬおっ!?

 ビックリした!? 超ビックリした! 勢い良く振り返ったら目の前に黒い穴が!?

 これは以前お会いした時と同じ状況じゃないか、何これ今度こそ俺は鼻から食われるんですかね、できれば口からがいいです、まる。


「スンスン」


 ぬおー、吸われるー、結構吸引力つえー、さすがフェンリル様、息を吸うだけでも凶器です、でもできれば鼻から食うのは勘弁してください。

 ってか何、なんでフェンリル様がいるの、もしかしてここ高階層?

 あ、そうか、さっきの光は爆発の光じゃなくて転移の光か、転移魔法なんてとっくの昔に失伝しちゃってるから俺も冒険者も知らなかったよ、そうかー、あれが転移魔法かー。

 ……意外と余裕だな俺。


 なんかフェンリル様がジーッとこちらを見つめてくれやがっておりますが、ワタクシ何かいたしましたかね?

 御身に傷を付けるようなことはいたしておりませんが……あ、もしかして不法侵入に怒ってらっしゃる? でしたらそれは不可抗力というものでありましてですね。


「……フッ」


 おふっ、鼻息が中々強烈でございますフェンリル様、鼻息だけで体がちょっと押されちゃったよ。

 あ、鼻水全部とれた。


 あら、もう行っちゃうん?

 ってかここフェンリルさんの住処違うん?

 相変わらず移動早いッスね、前に見たときはほどじゃないけど、まあここが中階層だとしたら色々大変なんだろうな、きっと疲れてるんだ、だからちょっと遅いんだ。


 とか言ってるうちにいなくなっちゃった。

 低階層より曲がり角多いなー、通路の先の様子なんてさっぱりわからん、まだその辺にいるのかもしれないけど。


 しかし、中階層か、ただの予想でしか無いけどなんとなくそうなんだろうなっていう感覚はあるんだよなぁ、壁とかフェンリルとか関係なく、これがモンスターの直感かしら?

 あれかな、ダンジョンさんに都合の悪いことをしようとしたからお仕置きくらったんかな、それとも獅子は我が子を奈落の底へ突き落とすとかいうアレかな、奈落の底で得た暗黒の力を持って帰還した子供と決闘して自分を殺せたヤツだけが次世代の長になれるという獅子の恐ろしい掟を真似してるんかな。


 つまり引きこもってる暇があったら修行してこいと、そういうことですね。

 そのためにわざわざ転移魔法なんて持ち出しますか、ダンジョンさんマジパネェっす。




 ……ところで。


 さっきからなんか視界の端っこにチラチラ映り込んでるヤツらがいるんですが、あれはなんぞ?


 なんか細長い針みたいな脚が8本あって、ひょうたんみたいに分かれた胴体があって、頭どっちだあれ、毒持ってまーすイェーイみたいな毒々しい紫色をしてて……まあ蜘蛛だな、うん、間違いなく蜘蛛だわ。

 っつかでけぇ、なんだあのサイズ、俺の身長軽く超えとる、比例して顎っていうか口っていうかなんていうかともかくあの牙みたいなんもでけぇ、俺の頭がピッタリハマりそうだよ。

 こりゃ確定っぽいなぁ、人間サイズよりでかいモンスターは中階層以降じゃないと出てこないし、高階層に単体の虫だけで構成されてるモンスターなんていないらしいし、あ、蜘蛛って虫の分類に入んないんだっけか。


 あ、やべ、なんか数増えてる。

 ひー、ふー、みー、よー……あれ、いっぱいいる。

 ぬおぉっ!? 気がついたら背中になんか付着した!? これはあれや、蜘蛛の糸や、しかも粘着力のある横糸のほうや!

 ヤバイ強い、この糸思ったより全然強い、引っ張って千切れるレベルじゃない、下手したら剣でも切れないんじゃないかこれ。


 ぬあー!? なんか糸がいっぱい飛んできた!? 避けないと! あ、背中に糸がくっついてる、移動ができない、避けられない、詰んだ。

 ぎゃー、糸がー、ベタベタする気持ち悪いー。


 ここは必殺、我が胸に宿りし地獄の業火よ! なんちゃって!

 ブレスト……


「カカカッ」


 ファイヤー!

 気合い入りすぎて声出ちゃったけどまあいいよね!

 必殺とか言っといて何だけど爆発して体がバラバラになったら怖いから使った魔力は2%だけです、誰だヘタレとか言ったヤツ。

 結果は成こ……まあ成功っちゃ成功かな、って感じだな。

 体の周囲が燃えてるわけだけど、爆発じゃなくて燃焼だから糸は燃やしたし現在進行形で燃えてるけど、燃え残りっちゅーか燃えカスがその辺に散らばりまくり、しかもあの蜘蛛さんこの程度の火は怖くないらしいっす。

 個人的にはもっとこう、バーンでドーンなズガーンっていう効果を期待していただけにガッカリ感が拭えないわー。

 まあその辺は練習しとこう。


 おっと、糸が効かんと見て直接攻撃に切り替えたな? その体に対して細すぎる脚で串刺しにしようって魂胆ですな? 甘い、甘いのだよ、突くという攻撃は点の攻撃なのだよ、身体のでかいモンスターならともかくこちとら人間サイズ、しかも俺はスケルトンで骨ばっかり、おまけに関節強化のおかげで人間並みの速さは持っているのだよ!

 貴様の攻撃を避けるなど簡単なことなのさ!


 ……相手が一体だけならな!


 ぎゃー! 数が多いって!

 一体あたりが前足二本使ってくるのに複数体にそれやられちゃうとマジで避けられる気がしないんですけど!? なんかもう目の前が針の壁みたいになってんですけど!?

 下がる方向が後ろしかない! あ、後ろは壁でした、あれ詰んでないか?

 こうなれば死中に活を見出すのみ! 要練習とか言ってられん、効率運用もできる限りで手札全部使ってでもなんとかせねば、手札なんてそもそも隠してるようなもん無いけど!


 よく見れば俺に直接当たりそうなのは目の前にいる一体から伸びてる二本の脚だけだ、この二本が無ければ前進して蜘蛛の懐に潜り込む、回避と攻撃チャンスが同時にできる。

 姿勢を低く、脚の下から潜り込むように、それだけじゃ避けられない、剣を盾に、表面を滑らせるように、受け流すように!

 やったるわー!


「カカカッ」


 よしっ、やったった!

 とりあえず脚は避けた、でもここで油断すると……


「シャギャー」


 顎で噛み付きが来るんですよね!

 わかってるよ、自分から頭に近づいてきたんだもの、目の前に噛めるもんがあったら噛むよね!

 残念ながら頭は食われてやるわけにはいかんのじゃ! 代わりに愛剣の一撃を食らわせてやるよ!

 よく考えたら今までまともに振ったことのない愛剣を! 誘拐犯のスピード君の腕を斬った以外で誰かを傷つけたことの無い愛剣を! なんか言ってて悲しくなってくる我が愛剣をっ!


 てりゃっ。


 わーおグロテスク。

 頭の上まで貫通したのにまだ生きてる、気を抜いたらアカン、それでなくても囲まれてんだし。

 このままだと筋肉が収縮して剣が抜けなくなる、蜘蛛の顔に筋肉があるかどうかは知らんけど。

 それを防ぐために必殺ファイヤー!


 き、気持ち悪っ!

 ガチガチいいながら悶える虫とか気持ち悪っ! 精神衛生上よろしくないわー、これはしんどいわー。

 とりあえず俺の魔石から噴出したファイヤーが蜘蛛の顔面をファイヤーしてくれたし、今のうちに剣を引き抜かないと次が来ちゃう。

 よっこらせっと。


 おおっと、言ってるそばから次の蜘蛛が!?

 だがしかぁし、そんな上からの突きおろしなどという点の攻撃なぞ見え見えじゃ!

 蜘蛛の側面に一旦背中を向けて、片足を軸にぐるっと一回転すると……はい、なんと攻撃を避けつつ胴体の繋ぎ目の真横あたりに到着いたしました。

 チェェェエエストゥッ!


 うおっふ、倒しても倒してもまた次が……

 以外と倒せる相手だったけど、この数はさすがに辛いなぁ。


 ……よし、逃げよ。

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