レベル14・スケルトン は ボス を 倒した!
ツンツンしてみよう、ツンツン。
動かない、これはもしかしてもしかする?
勝った! フロアガーディアンに勝った!
待て、落ち着け、やられたフリかもしれん、よーく見て不用意に触らないようにしよう。
どうせ外はまだどんちゃん騒ぎだし、誘拐犯が倒したら扉が開くみたいなことを言ってたはず、ということは扉が開いてない=倒してない、ということになるはず、多分。
ジーっと……
(※スケルトンがジーっと見ています、しばらくお待ちください)
動かない、な。
死んでたらそろそろダンジョンが食べるころだと思うんだけどな、これはやっぱりまだ生きてると思った方がいいよね。
何かあってもすぐに対応できるように剣は構えておこう、足先でそーっと蹴って見たりして少しずつ反応を確かめよう。
……ん? 逆に動かない今のうちにぶった切ったほうが早くないか? よし、善は急げだ、ぶった切ろう。
覚悟しろやフロアガーディアン!
動いたー!?
やっぱり動いたー!? ごめんなさい調子乗りました! こっち来んな!?
ギャー顔面目掛けて飛んできた! なんだこのゴキ◯リみたいな意外な速さと異常な気持ち悪さは!? こっち来んなー!?
あっ。
……
…………
………………
撃ち落としちゃった。
やっべー、あまりの気持ち悪さに思わず手が先に出ちゃった。
た、倒しちゃったかな? 倒しちゃうと実はまずいんだよね、扉が開いちゃうじゃないか、そしたら誘拐犯とか騎士団とか入ってきちゃうじゃないか、ブラッドスライムさんと共闘するとかならともかく俺一人で勝てる人数じゃないよ。
だ、大丈夫かな、ブラッドスライムさん復活とかしてくれませんかねー?
うん、なんか思いっきりヒビが入ってる、真ん丸の核がビッシリヒビで覆われちゃった。
これはさすがに、ねぇ?
なんか内側から光が漏れてるし、これあれじゃね、爆発するんじゃね、いるよね死ぬと派手に爆発するタイプのモンスター。
あれこれヤバイんじゃね?
回避っ! 全力で回避ー!
さらに光ったー、めっちゃ光ったー、だが関節強化の効率的運用を発見した俺に隙は無い!
部屋の隅っこに移動してガクガクブルブルするなんて一瞬で出来るさ、情けないとか言ったヤツ誰だ。
ピカーってなったピカーって!
ただのしかばねごっこもやっておこう、地面スレスレまで姿勢を小ちゃくするんだ、爆発は急激な空気の膨張であってそこには熱エネルギーが密接に関係している、ような気がする。
ということは熱いものは上に、冷たいものは下にという物理法則に従って上方向に向かうエネルギーが多いハズ、従って可能な限り遠い場所で地面スレスレで待機するのは悪い選択じゃないはずだ!
要はあれだ、爆弾とか発見した時に兵士が叫ぶ「伏せろ!」っていうあれだ!
……ところで、まだ爆発しないんですかね?
むしろ光収まってきてますけど、爆発じゃなかったんですかね?
いや、俺は騙されないぞ、誘拐犯とは違うんです(キリッ)
そうやって大丈夫だと思わせておいて近づいた瞬間に爆発させるんですね、大丈夫わかってる。
とりあえず遠目から観察できるだけ観察しておこう。
なんかヒビが結局割れちゃって中身が出てきたみたいな感じになってるなぁ、宝石? 光っててよくわからんけどでかい宝石みたいな感じ、子供が粘土で作ったボールみたいなボコボコの出来の悪い球体みたいな。
あれサイズは握り拳くらいだった核が一回り小ちゃくなっただけだけど、宝石だったら相当な値段がつきそうだなー、まあスケルトンに金とか豚に真珠、馬の耳に念仏、暖簾に腕押し、まあアレだ、要するに意味が無いってことだ。
そんでその宝石が光ってるわけですけども、爆発すると予想したのはその光が赤いからですよ、赤い光ってことは恐らく火属性の光ってわけで、そら爆発するなんて予想するのは膝を曲げて腰を下ろすと座れる! くらい当たり前というわけです。
まあその光も段々収まってきちゃったけど。
……なんか、爆発しなさそうだな。
爆発しなければあれはただの火属性の宝石ってわけで、それって要するに火の魔石ってわけで、もしかしてこれってチャンス?
いやそう思わせておいて爆発させるという巧妙な罠かもしれん、欲に目が眩むとロクなことにならんのは人間もスケルトンも一緒だ。
光が完全に収まってからにしよう、魔石は欲しい気がするけどそれで死んでたら意味が無いし。
……とかなんとか言ってるうちにほとんど完全に収まっちゃった、なんかもう中心あたりに子供の指の爪みたいな光が灯ってるだけじゃん、魔力があるのかさえ疑わしいよ。
とりあえず拾ってみるか、今なら死にはしないだろう、多分、恐らく、そうだろう、そうだといいな。
えいっ、えいっえいっ、剣先でツンツンしてみても反応無し! 第一段階クリアだ!
次は指先でツンツンだ、いつでも逃げられるように四つん這いになって出来るだけ手と体を離してツンツンだ、えいっ、えいっえいっ、よし第二段階クリア。
つ、次はとうとう拾っちゃうよ? 拾っちゃうからね? 爆発するならこのタイミングでやってくれないと俺死んじゃうからね? 拾った瞬間ならきっと腕だけでなんとかなる、かも!
よーし触るぞ、触るぞー、よーし、えいっ。
よし、触っても問題なし、触り続けていても影響無し、ふー。
一気にいこう一気に、男は度胸! スケルトンも度胸! おりゃー!
ガシッとね。
……うん、まだ何ともない。
大丈夫、かな?
大丈夫っぽい、大丈夫みたい、大丈夫だと思う、うん大丈夫だ。
よし、火の魔石ゲットだぜー!
これでスーパースケルトンへの道を一歩進んだ、ような気がする!
――――――――――
うーむ、参った。
何が参ったって魔力と一緒、これを保管しとく場所が無い。
とりあえずこれはフロアガーディアンを倒したって判断されてないのか、入り口が開く気配は無い、こっち側からは簡単に開けられそうっていう謎な感覚はあるけど、多分間違ってないハズ。
だもんで、ゆっくり考えてみるべ。
うーん、手に持って歩き回るのもなぁ、盾か剣を持たないっていうならともかく、どっちも外せないからなぁ、体の構造的に。
置きっぱに出来ないんだよね、魔力の型枠のどっかに一時的に置いておくことは出来るんだけど、脇に抱えるとかその程度でしか無いんだよね、捨てるとかまず無理。
せめて袋でもあれば良かったんだけどなぁ、小ちゃくてもいいから袋がどっかに付いてればその中に保管できたのに、袋の口さえしっかり縛っておけば型枠の中にある限りどっかいっちゃうこともないし、なんで初期装備に袋がついてないかなぁ、最初の冒険者さんから奪っておけば良かった。
型枠がなぁ……型枠?
あ、なんか閃いたっぽい、なんだろ、なんか今キュピーンってなった気がする。
なんだろ、なんだ、思い出せー、この場合は思いつけが正しい気がする〜、思いつけー、思いつけー。
型枠がある、そこに骨がある、装備品もそこにはまってる。
あ、わかった。
型枠に魔石用の部分を作ればいいんだ。
そうすれば装備品と一緒で見た目は浮いてるのに離れないっていう不思議現象で持ち運びが出来る!
ヤバイ、これ革新的だ、大発見じゃないっすかね?
よし、早速実験だ。
型枠に魔石用の丸い窪みを作って……意外と簡単にできたな。
ここに魔石をぽーいと。
【「進化する骸骨」が進化の条件を満たしました、「進化する紅骸骨」に進化します】
【パッシブスキル:炎属性耐性を獲得】
【パッシブスキル:炎魔法適性を獲得】
……
…………
………………
はっ!?
なんか意識が飛んでた!?
なんだ、何が起こった!?
なんで体がバラバラになっとんねん、ってかなんか赤いし、これ俺か?
とりあえず戻れ、戻れー、はよ復活せな。
なんかアカン、全然復活できん、何かに復活するのに使う魔力が全部持っていかれてるみたいな感じがする。
具体的に言うと魔石に。
き さ ま か