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レベル13・スケルトン は ボス に 遭遇した!

 ホップ、ステップ、ジャーンプ!


 そして華麗な着地、を決めつつ前転、颯爽と立ち上がり両手を上げて決めポーズ、ハイ! ビシッ!

 よし、満点だ。


 ……採点してる場合じゃねぇー!

 回避、回避ー!


 あぶ、あぶぶ、危にゃー!

 なんすかこの人、マジ容赦無いんすけどなんなんすか、溶解液飛ばし過ぎだから、全然近づけないから、いや近づくつもりも無いんだけどさ。

 部屋はさっきの騎士団が10人くらい入っても余裕で走り回ったり周りを気にせず行動できるくらいには広いんだけどさ、その部屋の全部が溶解液の射程範囲ってどうなのよ!?

 しかもただの大部屋で障害物も無いから盾が無いよ盾が、避けるしか無いよ。

 幸いなことにスーパースケルトンの片鱗になればいいなぁと思ってる関節強化のおかげで何とか避けられてるけど、こんなんいつかは当たっちゃうよ、当たったら即お陀仏だよ、精神的にキツイよ。

 またキターーー!


 とうっ!


 マジでどうしようとうっ、この状況を打開するにはていっ、冒険者さんの記憶の出番かなそいやっ。

 ではよろしくお願いしますえいやっ。


 まずフロアガーディアンの部屋について、内側からは簡単に開けられますがそれは入口の話。 出口、つまり奥のフロアに進むためにはガーディアンを倒さなければいけません、なるほど。

 俺の場合は進む=ブラッドスライムと戦う=勝てない=死亡、と、うん完璧な公式だ。

 逆に逃げるとなると、逃げる=表で誘拐犯と騎士団が戦闘中=手が空いてる騎士と戦う=死亡、と、うんこれも完璧な公式だ。

 ……あれ、手詰まりじゃね?


 いやいやブラッドスライムの能力によっては勝てるとは言わずともなんとかなるかもしれない、冒険者さんの記憶様よろしくお願いします。


 ブラッドスライムの特徴、溶解液を飛ばしてきます、以上。


 ……おいいぃーーー!?

 情報量少なすぎるわ役立たずが!

 そんなん見たらわかるわ! 現在進行形で理解しとるがな! それをどうすりゃええねんってのを聞きたいんや!


 あ、大盾で溶解液を防いでる間に魔法で殲滅するのがセオリーなんですね、こいつに前衛だけで挑むヤツらとかいないんですかそうですか。


 詰 ん だ 。


 よりによってパーティーバトル推奨とか、当たり前だよフロアガーディアンだもん!

 ボスキャラですよ、そんなんタイマンで挑めるようなヤツらはとっとと高層階行ってるよ、そんな人らがこいつにタイマン張る理由なんて一欠片も無いもん、フロアガーディアン倒せば次のフロアからスタートできるショートカット機能あるもん、何気に便利だなこのダンジョン。

 と、に、か、く、こいつにタイマンで挑むようなヤツらはいない、よって情報がパーティー戦のものしかない、あったとしてもこの冒険者の記憶には無い、使えない!


 おおっとぉ!?

 なんかでかいの溜めてるよあの人、大人気ねぇなおい!

 これはさっきの意味不明なくらいに思考が加速したあの状態にならんと避けられん、何か一つ間違えば即終了だ、集中、集中ーーー!


 キタ、これはキタ。

 わかる、見える、相手の攻撃範囲も、自分の限界移動距離もわかる。

 相手の前方? 前半分くらいが肥大化してくびれが出来ている、多分あのくびれのところで千切って飛ばしてくるんだろう。

 ブラッドスライム自身のデカさがさっきの騎士10人分くらいはあるけど、あの溜めてるヤツは軽く3人分くらいはある、さっきまでの溶解液と同じ速度で飛んできた場合、俺が同じ速度で動いていたら避けられない!


 切り離したっ!

 思いのほか速度は出ていない、いやこれは質量が増えたからそう感じるだけだ、錯覚しているんだ。

 瞬発力がいる、このままじゃ下半身が避け切れない、関節強化を全て足に集中させるか? いや関節全てを強化しているからこそ今このスピードが出せているんだ、足だけ強化をしても今更大した差にはならない。

 だが今の出力では足りない、もっと強く、もっと早く、もっと効率良く……効率良く?


 出来るか? いや、出来なければ多分死ぬ、下半身が無くなればもう避けることは出来ない。

 今はほんの少しだけでいい、関節強化に使っている7%の魔力のうち、半分を回すだけでもきっとできる、全てを同じように扱えるようになるのはもっと後でいい、練習を重ねてからでいい、今は、この状況を避けられればいい。

 関節全てをやるほどの細かいことはまだいらない、部分的に、大雑把な区切りでいい。

 やるしか、ない。


 関節強化を半分の魔力で維持、最初は足に、次は腰に、腰から体に、体が動いたら腕に、後はその繰り返し!

 体全体に散っていた3%の魔力を一瞬だけ局所に集中させる、範囲が小さければ小さいほどその効果は高まる、足に、腰に、体に、腕に、以前ならこんなこと出来る気もしなかったけど、この集中状態なら少しくらいはなんとかなる!

 今だけでいい、この一瞬だけでいい、常に出来るようになるのは後でいい、生き残ってからでいい!


 あと少しだけ、ほんの少しだけ早く!


【学習能力が発動しました、AGIが少し上昇します】

【学習能力が発動しました、DEXが少し上昇します】


 もっと、もっと強く!


【学習能力が発動しました、STRが少し上昇します】


 もっと、少しでも速く!


【学習能力が発動しました、AGIが少し上昇します】


 もっと、より正確に!


【学習能力が発動しました、DEXが少し上昇します】


 あとちょっとだけ! 全力込めてジャーンプ!

 どぅおりゃーーー!!!


 避け、られ……


 ………………


 たー!

 ギリギリで避けられたぁっ!

 バカ、俺のバカ、ここで止まっちゃダメだ、飛んだ勢いを殺さないように肩から前転、勢いのままにスタンダァップ、フロントステェップ、そしてダァッシュ!

 どうだ、避けてやったぜこの野郎……ぬおぁー!? なんかいっぱい飛んできとるー!?

 質より量に切り替えやがったな!? 下手な鉄砲数打ちゃ当たるってか! 鉄砲ってなんだ!?


 集中だ集中、よく見ればどうにか避けられるはず、今の状態なら出来る、ってか出来ないと死ぬ!

 飛んできてる数は七個、同時じゃなくて連続で発射されただけだ、全体を見つつ一個ずつ避ければ大丈夫、きっとイケる!


 最初の一個、真正面から真っ直ぐ飛んでくる、これ単体なら避ける方向はいっぱいあるけど、後ろに二個飛んできてる、左右どっちに避けても次に当たる。

 ならば避ける方向は上か下、上に避けると空中で身動きが取れない、よって思いっきり姿勢を低く、犬みたいに地面スレスレまで低く四つん這いになって避ける。

 後ろの二個は俺の真横あたりに着弾する軌道っぽい、飛沫で余計なダメージは負いたくない、前に出るしかない。

 四個目はそれを狙っていたみたいに真っ直ぐ俺に向かってくる、飛んで避けたくなるけど恐らくそれが狙いだ、五個目がかなり高い位置に打ち出されている、あれは恐らく俺が飛んで避けたら着地点にちょうど落ちてくるような軌道を描いている。

 ならば左右に、と思わせることがきっと本命だ、確認した数は七個、今見えているのは避けたのを含めて五個、目の前に迫っている四個目に隠すようにして死角に六個目と七個目が迫っているはず、左右に避けた瞬間に終了だ。

 前に、さらに前に出る、四個目の上を飛び越える、五個目の落下地点より前に、もっと先に、高くではなく鋭く、上にではなく前に!


 どっせーーーい!


 血のように赤い球体、ゴボリと泡をたてるのが見えた、あれは多分何かが溶かされているんだ、一歩間違えれば溶けて消えそうになっていたのは俺だったんだろう。


 だけど、俺は、そこにはいない。


 球体スレスレを飛び越えつつ、それでも俺の体は溶解液に触れることはなかった、無事に五体満足で飛び越えられた。


 五個目が落下する前にさらに前に出る!

 後ろでバッシャーンいう音が聞こえた! 避けた、避けたったぞこの野郎!

 見たかこの肥満体スライム!


 ……あれ? ブラッドスライムさんどこに行かれたんですか?

 なんか足下の影が俺のより明らかにでかいんですけど、なんぞこれ。


 ……あ、ブラッドスライムさんが俺の真上にいるんですね。

 回避! 緊急回避ーーー! おりゃー!


 危ない、さすがブラッドスライム危ない。

 まさかの体当たりとは恐れ入った、そりゃそうですよね、体が溶解液ですもんね、体当たりでも溶解液と同じ効果ありますよね。


 気のせいか縮んだような気がするけどきっと気のせいだろう、さっき巨大な溶解液の塊を見たから小さいような気がするだけだ、これもきっと錯覚なんだ、そうに違いない。


 ……


 …………


 ………………


 いや明らかに縮んどるがなー、さっきまでの半分も無いがなー、めっさ小さいがなー。

 しかも半円形の高さが半分になるには実際の面積は相当無くなってるはず、最初の四分の一も無いはず、多分。

 あれ、これ勝てるんじゃね?


 とか調子乗ってすいませんでしたー!?

 速い!? ブラッドスライムさん体当たりすげー速い!?

 当たり前だよ、よく考えたら当たり前だよ、面積減ってるんだから体重も当然減ってるよ! 質量も無くなってるから体当たりそのものの威力は低いんだろうけど、軽ければそんだけ速度も出るよ!?

 体当たりの威力が低かろうが溶解液の塊なんだから威力とかどうでもいいしね。


 あー、なるほど、ちっちゃい溶解液を切り離して自分を射出してるんだ、さっきのでかい溶解液を飛ばしたのと同じ理屈だ。

 違いは溶解液の中に核があるかないかでしか無いわけですね。


 さすがはフロアガーディアン、さっきの溶解液の絶妙な飛ばし方といいこの体当たりの方法といい頭いいなー、スライムとは違うのだよスライムとは! って感じですかねー、マジですげぇな、見習おう。


 しかし思ったよりマズイぞ、ちょっとずつとはいえ溶解液を切り離してるってことはその分ちょっとずつ質量が減ってるってことで、つまりはちょつとずつ速くなるってことだーうわっしゃーんならー!?

 そ、それにしてもブラッドスライムさん大きくなる気配が無いっすね、切り離した分はすくに蒸発しちゃってるから再利用もできなさそうだし、スライム系統お得意の再生能力無いんかな?

 まあスライムなんて能力発動させる前に死んじゃいますけどねー! プフー!


 ぎゃーすいませんでしたー! スライム系統バカにしてすいませんでしたー! ちょ、ヤバイってその速さは無理だって当たっちゃうってー!?


 ヤバイ、これはヤバイ、もう明らかに小ちゃくなってる。

 握り拳くらいの核に成人男性の頭くらいの溶解液が纏わり付いてるだけじゃないか、あんなんどんだけ速いんだよ、もう次の一撃は知覚できるかどうかさえ怪しいくらいに速いのが来るんじゃないの!? ヤバイんじゃないの!?


 ぬおー、なんかプルプルいい始めた、向こうも最後の一撃的な、必殺技的なものを繰り出してくるに違いない!

 かくなる上は玉砕覚悟で行くしかっ! 剣を真っ正面に構えて運良くブラッドスライムさんがぶつかってくれるのを祈るしかない!

 剣はダメになるかもしれないけど命あっての物種、そのうちどっかで拾えるさ! これ以外の剣を持てるんだかわからんけど!


 さあ来い、さー来い、さあさあ、来いやおらー、来てもいいんだぞコラー、出来れば来ないでほしいけど見逃してほしいけど来るならしょうがないんだぞこらぁ、まだ来ないのかうらー、とっとと来いやもらー、どうして来ないんですかうらー、えーっとずっとプルプルしてますけど大丈夫ですか?

 あ、止まった。


 ……なんか溶けてますけど大丈夫ですか?

 スライムっていうよりも水溜りみたいになってますよブラッドスライムさん、溶解液の蒸発が始まってますよ、核しか残らないですよ。

 え、マジでどうなってんのこれ。


 ……


 …………


 ………………


 もしかして、勝った?

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