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レベル12・スケルトン は 進化 した!

【スケルトンの自我が一部固定されました、『骸骨スケルトン』から『進化する骸骨スケルトン・エヴォルヴ』に進化します】

【封印されていた一部のステータスが解放されます】

【ステータスの限界値が一部解放されます】


 見える、わかる、思考が纏まっている、頭の中がクリアになった、体がどう動かせるのかがわかる、相手がどう動こうとしているのかわかる、これなら受け流せる、やり方を知っているわけじゃないけど、どうすればいいかを予想できる。


 左足を曲げて右足をパワー君のほうに真っ直ぐ伸ばす、剣と右手はまだ動かさない、体を腰から動かして振り向くように、腰が上半身を引っ張り、上半身が腕を引っ張る、引っ張られた力を利用して腕を振り上げる、相手の剣に当てるというよりも、同じ方向に向けてこちらの剣を添える、そして別方向に向かう力を加えてやる、そのために必要なのは力じゃない、勢いだ、無駄な力も動作もいらない、淀みなく、迷いなく、ただ真っ直ぐに早く剣を振るだけだ、今の俺の感覚ならできる!


「なっ!?」


 できた、大した音もしない地味な行動ではあるが、今の俺にできる最高の一振りだ。

 ……だが逆に、今はこれ以上のことをすることはできない、思考が纏まった今だからこそ理解できる、俺はこの誘拐犯には勝てない。

 理由は色々あるが、やはりこの男のパワーが俺と比較にならないほど高いことが一番の理由だろう、今の一撃でさえ逸らす以上のことが出来そうにはない。

 連続で剣をぶつけ合えばいつかはこっちにボロが出る、そうなればただの一撃で俺は負けてしまうだろう。


 ……となれば、ここはやはり逃げの一手だな。とっとと逃げよう。

 お嬢さんは邪魔だから騎士さんのほうへ投げておこう、むんずと掴んで……


「え?」


 無駄に気合いれとこう、私のパワーで女性とはいえ人間を持ち上げるのは結構ギリギリだし、どっせーーーいっ!


「カカカッ」


「きゃあああぁぁっ!?」


「姫様っ!」


「しまった!」


 よし、騎士さんナイスキャッチ!

 誘拐犯が呆然としているうちに俺はとっとと逃げよう、お嬢さんがいなくなれば誰もいない通路まで一直線だ、関節強化も気合いれてみよう、ふぉあしゃーーー!!!


「カカカッ」


 バックステップから半分だけ振り向いてサイドステップしつつ最後に完全に振り返ってフロントステップ!

 後はダッシュして内側に入ったら扉を閉める! 完璧だ、我ながら自画自賛してしまうほどの完璧な移動だ、このまま扉をくぐって! 後は閉めるだけ……あれ、なんか勝手に閉まっていくなぁ。


 ガチョーンてなっちゃった、ってガチョーンって音はどうなんだ、せめてガシャーンとかドスーンとかバーンとかじゃないんかい、ガチョーンて。

 俺の感性の問題か?


 こっちからは開けられそうな感じだけど、いや理由はよくわかんないけどなんとなく開けられる気がするけど、外側からも簡単に開けられるんじゃ意味ないよな、とりあえず内側から抑えておこう。

 あ、なんか外の声が聞こえる。


「か、確保ーーー!」


 これはイケメン騎士さんの声かな?


「あ、あの骨野郎ーーー!」


 これはさっきのパワー君かな、スピード君とパワー君って見た目も話し方も声の感じも似てるからどっちがどっちかわかんないんだよね、まあスケルトン基準で言えばみんな似たようなもんだけど、人間がスケルトンを見分けらんないのと一緒だよ、うん。

 俺も冒険者の記憶が無かったらわかんない。


 あーなんかどんちゃんやり始めた、もう何もわからん、まあ人質は返しちゃったし逃げ道も俺が塞いでるし、あの誘拐犯二人は大人しく捕まる他無いね、連れ帰るのも面倒そうだから殺されちゃうのかな?

 ……死体放置とかしてくんないかな、そしたら運良くパワー君の装備を拾える、なんてことも……無いかな?

 魔石付きだとなぁ、ダンジョンさん速攻で食べちゃうだろうなぁ、魔力量の多いモノは装備人間問わず速攻だからなぁ、無理かなぁ。


 まあ後で考えよう。

 それよりさっきからなんか背中がゾクゾクするんだよね、いや神経とか無いんだけどね、なんていうか魔力がゾワゾワしてるっていう感じ。

 後ろかな、後ろだよね、後ろしかないな。


 あー、よく見ればこの部屋結構でかいんだね、向こうからだと真っ暗で何も見えなかったからてっきり通路だと思ってたよ。

 まさかの部屋だった、それもかなり広い部屋だった、なんていうかこう、ボスの部屋です! みたいな感じの広い部屋で……す……あれ、もしかして……


 はっはっは、いやーまさかそんな、ねえ?

 あの誘拐犯達が言ってたフロアガーディアンの部屋ってもしかしてここの事ですか、いやーうっかり、通路だと思い込んでたから全然気づかなかったわー、ここですな、ここなんですね、そうですか。


 ……


 …………


 ………………


 ピーンチ!!!


 これはマズイ! 冒険者どころか誘拐犯にも勝てないようなただのスケルトンにフロアガーディアンなんて勝てるわけ無いじゃないか! いっそ部屋の外に逃げ……ダメだ、まだどんちゃんやってる、今出たらフロアガーディアンが騎士団に変わるだけで結局死ぬ!

 あああ、しかもなんだっけ誘拐犯の話によればここのガーディアンはブラッドスライム! 溶解液を飛ばしてくるヤツだ、相性最悪じゃないっすか、溶解液を飛ばしてくるってことは体も溶解液で出来てるわけで、ただの剣しか持ってない俺が切りつけたら逆に剣が溶かされるわ! ぬおー打つ手無しか、戦う前から負けている!


 よし、ここは適当に相手をして外が収まったら逃げよう。


「くっ、こいつら出来るっ!」


「こちとら元とはいえ冒険者だぜ、お飾り騎士団なんぞに負けるかよ!」


 ダメだー!

 あいつら以外と奮闘しちゃってるよ! っていうか騎士団弱いなおい! なんだよお飾り騎士団って! お飾りかよ! 装備だけかよ! 宝の持ち腐れだよ、もったいないよ!

 お前らも装備に使われてるクチかよ!


「ふん、片手が無くとも貴様らなんかに負けるかよ!」


 バカなー!

 スピード君片手ぶった切ったのに奮闘しちゃってるよ!?

 どんだけタフいんだよ、びっくりだよ、すぐに捕まると思ってたよ!


 マズイ、これは本格的にマズイ。

 この奮闘ぶりだとすぐに終了っていう可能性は無さそうだ、捕まえたら捕まえたで拘束・尋問に護衛しつつ連行、さらには現場調査とか言ってしばらく留まる可能性も出てきた、下手したら数日単位でここから出れない、っていうか俺も多少とはいえ関わっちゃった以上は、俺が出てくるのを待ってるかもしれない。

 まあさすがに誘拐犯の仲間だとは思われないだろうけど、所詮スケルトン……っていうかモンスターだし、友好的な対応をしてくれるわけが無いよねぇ。


 あ、でも誘拐犯が溶解液なんて余裕ですしおすし、とか言ってた気がするし、きっと大したことのないフロアガーディアンなんじゃないかな!?

 ……ダメだよ、俺がそれ以上に大したことのないただのスケルトンだよ、フロアガーディアンいうたらあれよ、ゴブリン先輩をデコピンで軽く倒しちゃうようなヤツが最低ラインよ?

 今でさえゴブリン先輩より格下のゾンビさんに勝てるかどうかもわからんのに、そんな俺が勝てる可能性とかあるわけ無い。


 とかなんとか考えてる間にゾワゾワが背中どころか全身で感じ始めちゃったよ、これはもしかして大分近寄られてるんちゃうの。

 あ、そういえば誘拐犯が内側からしか開けられないみたいなこと言ってたよね、そしたら内側から抑えておく必要無いやんか、さっさと逃げな。

 後ろを振り返って……なんか飛んできとるー!?


 とうっ!


 あ、危ねー、あれが噂の妖怪駅、違った溶解液か、なんか当たったところがジュワジュワいってる。

 あれは無理だ(確信)

 絶対溶ける、骨とか鉄とか関係なく絶対溶ける、触らぬなんちゃら祟り無し。

 で、あんなんを放り投げてきたご本人様は……ぬおー!?


 ていっ、とうっ、そりゃっ!


 何しやがるこのドデカ赤色核付きスライム野郎! ちょっと魔石を核にしてて魔力量がでかいからって調子に乗ってんじゃねぇぞコラァッ! 人間を食い過ぎて体色に血の色混ざってるからって強い証拠にはなんねぇんだぞ、わかってんのかオラッ!?

 あ、強いですね、凄く強いです、ごめんなさい調子にのってたのはワタクシでございました。

 あ、やめて溶解液飛ばさないでください、溶けてしまいます。


 ……ヤバイ、ピンチだ。

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